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- 2016/05/10 掲載
オキュラスリフトはVR市場で勝てるか?ビジネスモデルとソニー、MSら競合との戦略比較
ビジネスモデル解説:VRヘッドセット
そもそもVRはどうやって儲けるのか?
オキュラスリフトを開発したオキュラス社は、2014年にフェイスブックに買収されましたが、本格展開前にもかかわらず20億ドルもの評価額がつき、大きな話題になりました。フェイスブックCEO マーク・ザッカーバーグ氏はVR市場に情熱を傾けており、人々が自分の体験をシェアする「次世代のプラットフォーム」にすると意気込んでいます。テキストから写真、写真から動画とメディアが変わっている中で、同氏は360度のCG映像をVRで再生する世界を実現させようとしています。
そんなオキュラスリフトは、どのような仕組みで利益をもたらすのでしょうか。オキュラスリフトのビジネスモデルは「プラットフォームモデル」です。一方で、ゲーム開発などを行うパートナー企業がオキュラスリフト上で動作するゲームやアプリをユーザーへ提供した際に、その収益の一部を徴収するという仕組みです。ハードウェアのVRヘッドセット単体は599ドルと決して安くはありませんが、これは製造コストが高いため。ヘッドセット自体は原価に限りなく近い価格で販売されるので、利益はほとんど期待できないとオキュラス社 共同創業者のパルマー・ラッキー氏は語っています。
プラットフォーム戦略は、プレイステーションなどのゲーム機や、iPhoneアプリなどと同じビジネスモデルであり、高い利益率を達成できるのが特徴です。パートナー企業がコンテンツを作成しやすい開発環境を用意するのがプラットフォーム戦略を成功させる鍵と言われています。優れたコンテンツが多くのユーザーを呼び、多くのユーザーがさらなるコンテンツ開発を促すという好循環が作れるからです。
競合他社のソニー、MS、HTCのVR戦略を比較
米ゴールドマンサックス社の調査レポートによれば、2025年のVR及びAR(拡張現実)の分野別市場規模は、ゲーム(116億ドル)、医療(51億ドル)、製造(47億ドル)、ライブ・イベント(41億ドル)、動画エンターテインメント(32億ドル)と予想しています。
オキュラスリフトの他にもソニーの「Playstation VR」、マイクロソフトの「Hololens」、HTCの「HTC Vive」、などがハイエンド向けVR製品として登場しています。いずれの企業も、パートナー企業と消費者をつなぐプラットフォームとしての戦略をとっていますが、それぞれが持つ既存事業の強みによって戦略の方向性が若干異なっています。
ソニーには世界3600万台を出荷したPlaystation 4があり、他社には真似できない多くのゲーム・ユーザーを抱えています。よりよいゲーム環境としてVRを求める強い動機があるため、ソニーの主要顧客は「ゲームのユーザー」となるでしょう。さらに、Playstation 4とパソコン向けの開発環境は親和性が高いため、ゲーム開発会社はPlaystation 4と「Playstation VR」で同じゲームタイトルの出荷が可能です。ゲームを中心に据えたVRプラットフォームの構築がソニーの戦略であると考えられます。
ゲーム用途を強く意識したソニーに比べ、消費者向けの発売予定を未だ発表していないマイクロソフトはビジネス用途に強く傾いています。具体的には、製造業の開発現場、都市計画、教育用の3D人体模型、宇宙探査といった専門的な使用方法が提案されてきました。機能面でも相違点があり、「Hololens」はメガネの中に仮想空間を映すのではなく、現実世界の中に3D映像が浮き上がる手法を採用しています。Office製品やサーバー向けソフトウェアなど、ビジネスユーザーの多いマイクロソフトならではの戦略といえるでしょう。
HTCはスマートフォンなどのモバイル端末メーカーとして知られています。ゲームやアプリなどのプラットフォームを築いた経験のないHTCにとっては、端末の売り上げを増やす起爆剤として、VRに期待をかけていると考えられます。「Vive」はパソコンと接続する製品ですが、将来的にはスマートフォンからVRが見られる環境を整える可能性が示唆されています。2016年3月には、日本国内のVR事業においてソーシャルゲーム会社のグリーと業務提携したことを発表しましたが、今後もパートナーとの提携が重要になってくるでしょう。
【次ページ】VR普及へ、オキュラスとフェイスブック最大の強みとは
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