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  • 2017/05/08 掲載

ブックオフのビジネスモデルはなぜ「破綻寸前」なのか

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中古本販売大手のブックオフが業績低迷に苦しんでいる。社長交代の人事を発表し経営体制を一新したが、業績を回復させるための見通しは立っていない。同社は、規制によって硬直化していた日本の書籍流通システムを逆手に取った究極のニッチ・ビジネスとして成功した。しかし、今となっては書籍そのものの市場縮小という危機に直面しており、新社長がどこまで斬新な戦略を提示できるのか注目を集めている。
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ブックオフのビジネスモデルは曲がり角を迎えている

仕入れ、販売ともに振るわず

 ブックオフは4月10日、同社の松下展千社長が代表権のない取締役に退き、後任に堀内康隆取締役執行役員が昇格する人事を発表した。同社はこのところ業績の伸び悩みに直面しており、2016年3月期の決算では上場以来、初の赤字決算に転落。2017年3月についても13億円の赤字を見込んでいる。

 同社の業績が低迷しているのは、主力商品である書籍の販売が低迷しているからだ。2016年3月期における同社の販売実績(直営店)は、前年比4.2%のプラスだったが、店舗の人件費や新規事業である中古家電のプロモーション費用などコスト増加分を吸収できなかった。

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ブックオフ直営店における主要商品の販売動向

 商品別では、活字の書籍が前年比6.4%とプラスだったが、コミックはほぼ横ばい、その他書籍は14.4%の大幅なマイナスとなった。今年に入っても状況はあまり改善しておらず、2017年3月時点における書籍の販売実績は前年同月比マイナス3.6%、ソフトメディアはマイナス8%、アパレルはマイナス6.8%だった。

 同社は店舗で中古品を引き取り、それを再販売するという業態なので、販売動向に加えて仕入動向も同社の業績を左右する。たくさんの商品が持ち込まれないと、売り場に魅力的な商品を陳列することができず、最終的には販売力の低下につながってしまう。

 2016年3月期における商品別の買取実績は、アパレルこそ4.4%とプラスだったが、書籍が前年比3.5%減、ソフトメディアが2.2%減とこちらも振るわなかった。特に書籍は買取り、販売ともに伸び悩みが目立っている。書籍は売上高の4分の1を占める主力商品だけに厳しい展開を強いられている。

日本の書籍流通は極めて特殊

 ブックオフのビジネス・モデルは極めて特殊だ。同社は中古の書籍を販売しているので古書店ということになるが、創業者の坂本考氏が1号店をオープンした1990年当時は、古書店といえば神田神保町にあるような昔ながらの「古本屋さん」というイメージだった。

 坂本氏は、従来の古書店のイメージを一新し、コンビニのような明るい店舗で中古本を大量販売するという新しい業態を開発した。目新しかったのは店舗だけではない。同社は出たばかりの新刊書も中古本として積極的に販売し、これによって「新古書」という新しいジャンルを開拓した。これが同社を急成長させる原動力になったが、一方で、このやり方が出版業界との激しい摩擦を引き起こした。

 同社の特殊な立ち位置を理解するためには、日本独特の書籍流通システムについて知る必要がある。日本では書店に並ぶ書籍の多くが「取次」と呼ばれる事業者を介して流通している。取次は、本を作る出版社と読者に本を直接販売する書店の間に入る事業者のことで、他の業種における卸に相当する。

 一般的な卸業者はメーカーから製品を買い切り、それを販売店に売るという形態がほとんどである。もし見込みが違って売れ残った場合には、卸がその在庫を処分しなければならず、販売店に売った後であれば、在所の処分は販売店の責任となる。

 しかし出版業界における流通は主に委託販売という形になっている。売れ残った分について書店は取次に返品することが可能であり、取次は出版社に返品することができる(一部の老舗出版社の中には返品を受け付けないところもあるがこれは極めて例外である)。

 このような特殊なルールになっているのは、書籍という商品が典型的な多品種少量生産であり、しかも、本を必要とする人が、全国津々浦々に点在しているからである。たとえば標準的なコンビニには2500~3000点ほどの商品があるが、同じ売り場面積の書店には2万冊を超える書籍が陳列されている。とにかく商品の種類がケタ外れに多い。

 こうした商品在庫を人口の少ない地域の書店が抱えてしまえば、とても経営が立ち行かない。このため出版業界では在庫リスクをすべて出版社が負うという独特のシステムができあがった。

【次ページ】書籍市場の縮小から中古家電を模索したが…
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