負けました。柏はいいサッカーしたと思います。
ちょっと評価が行き過ぎてるとは思う
今日は、この試合の評価があまりにも一部の志向に偏っている感じがするので、それもどうなん、というポジショントークをしていきたいと思います。ちなみに僕は、リカルドのやってるサッカーは好きでも嫌いでもないですが、いい取り組みだと思います。
まず最初に言及しておきたいのは、良し悪しと好き嫌いの話です。昔同じテーマについて書いたことがありますが、平たくいうと以下の3点です。
- 良し悪しの評価と自分の好みかどうかを混同すべきではない。
- 良(正し)くても嫌い(好きじゃない)ことはそう言ってよい。逆に悪(正しくな)くても好きなこともあってしかるべき。
- 自分の好き嫌いについて自覚的でいることは大事。それが個性を形作る。
なんでこの話をするかというと、いわゆるポジショナルと言われるような、サッカーの原理に基づいて盤面を整えてビルドアップから論理的に相手を崩して行くことを志向するチーム(今回でいう柏)が、今節で言う浦和のような『なってない』チームと対戦して勝つと、「万物の法則に照らしてこちらが素晴らしい」みたいな感じで評価が行き過ぎる傾向にあるなと思うからです。
念の為もう一度言っときますけど、柏はめっちゃいいサッカーをしてると思います。柏のやってること、今節のパフォーマンス、結果として順位表の一番上にいること、全て素晴らしいと思います。柏サポの皆さん、おめでとうございます。今季はきっといいシーズンですよ。リカルドもいいクラブで仕事があって良かったよね、これからも頑張って。
話を戻すと、論理的な取り組みをしてるチームの評価が行き過ぎる、という話でした。冒頭の好き嫌いの話がここに絡んでくると思います。相手の配置やプレスの仕組みを見ながら的確にボールを運んで、相手の構造をハックする、ロジックのあるサッカーって面白いと思います。僕も好きです。上手く行くと全能感が凄いんですよ。相手が必死こいて食いついてくるだけ使えるスペースが生まれるし、そのゲームの盤面や選手の能力的対応限界が変わらず、噛み合わせの構造と仕組みが変わらない限り同じような攻略法が機能し続けます。仕組みの機能美です。加えて、展開の予見性が高いので観てる方も楽しいんですよ。こうなったらこう、こうしてきたらこう、残念それは対策がありまーすみたいな。オープンをうまく作れば個人技がいきるし、選手が迷いなくプレーしてくれれば一人一人が上手くみえますし。だから好きな人が多いのもわかるし、実際面白い。ただ、ポジショナルなサッカーを好む人が感じるポジショナルなサッカーが上手く行った時の全能感が、正しさの評価を行き過ぎさせてしまう面もあると思うんです。 上の話で言えば、『良いし好き』で勢いがつきすぎるみたいなことです。そして正しさの評価が行き過ぎてしまうが故に、同時に、『なってない』チームの正しくなさの評価も行き過ぎてしまっているのではないかと思うのです。
逆側の視点でも同じくで、今節負けた浦和レッズファンはもう悔しいというか、絶望するわけです。相手が論理的に自分達を攻略していくところを見せられて、自分達のクラブがそれに対応できないまま壊れて行くのを観るのはつらいです。だから「もう監督を変えるべきだ(意訳)」とか「論理性を捨てたクラブの無能スタッフはサッカーを知らない、某解説員に監督をやらせよう(意訳)」みたいな意見もあるのだと思います。いやまあたしかに今季ここまでの流れは現実的に監督交代が囁かれ始めてもおかしくないくらい悪いですし、浦和レッズさんがポジショナルプレー仙人になるくらい取り組めた景色も見てみたかったかもしれませんし、コーチ陣なにしとんねんとは普通に思いますけどね。
でも、『なってない』チームは本当に何もできていなかったのか?勝ち筋が全くなかったのか?万物の法則に照らしてダメチームだったのか?というと、それもまあ違うわけですよ。ここでxGくらいしか僕をサポートしてくれる指標がないのが心許ないところですが、今節のスタッツは、このゲームに浦和がなんとかなる可能性があったことを示しています。要は浦和にとっては「こういうゲームをやるならそのシュートは無理矢理にでもねじ込めよ」というゲームだったわけです。
【更新情報】
— SPORTERIA (@SPORTERIA_JP) 2025年3月2日
J1 第4節 #浦和 0 - 2 #柏
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今節のレッズのサッカーはたしかになってなかったです。仕組みの機能美なんて感じませんでした。だけども、柏もまた仕組みの機能美を維持しきれず、論理が破綻しかけた部分があったんです。前半の印象と、結果がその事実にモヤをかけています。何が言いたいかというと、全能感や無力感に引っ張られずにもう少し状況を詳しく観てみると、当たり前だけど良いところと悪いところはグラデーションじゃないかと言いたいのです。そして、浦和レッズさんの(というかすこの)やり方にも勝ち目はフェアなくらいはあったし、そのためにそのシュートは決めろやと言いたいのです。
ポジショナルプレーのコストと限界
おそらく全部誰かがすでに言っていることですし、素人考えではありますけど、いい機会なので、僕がリカルドのサッカーやその他のポジショナルと言われるようなサッカーを観てきて自分なりに感じたことを書いておきます。
いわゆるポジショナルプレーと言われるような、サッカーの原理を起点として論理的に攻略方法を積み上げて行くサッカーというのは、基本的には安全志向な発想で生まれていると思います。すなわち、悪い結果を引く確率を下げようというものです。リスクの排除です。『安全と確認できたこの道を何度も通ろう』みたいな考え方だと思います。もっと攻撃的な(リスクオン)志向のサッカーもあると思いますけど、そうなるとここで話しているポジショナルプレーとは表現されるものがだいぶ変わるはずです’(それを何と呼びどう分類するべきなのかは僕はよくわかりません)。ここでいう安全というのはボール保持になります。自分がボールをキープできていれば基本的に相手は自軍のゴールを脅かせません。
その上で、勝利のために、着実にボールを相手ゴールまで運んで行こうというわけです。そのために相手の出方をハックして、相手が襲ってこない場所、すなわち出てこれない場所を探し、使います。GKに相手フォワードをマークさせる戦術は今のところ流行っていないので、ボール保持側がGKを使えるならば11on10の盤面ができます。うまく一つ剥がせばあとはドミノ倒しが狙えます。
自分達が間違わなければ。
ポジショナルプレーと呼ばれるサッカーが盤面の優位を論理的に活かしたいなら、選手はその論理を次の局面に届けなければいけません。それが仕事です。オンザボール、オフザボールに限らず、論理の正しさを体現し続けなければいけません。一般的に、論理の運び屋といえば言葉の出番でしょう。言葉は、定義さえしっかりしていればかなり安定したパフォーマンスをみせてくれます。三段論法を使うとき、とある言葉の調子が悪くて今日は思ったように成り立たないということはまずありません。でもサッカーでは、選手が論理の運び屋です。論理の正しさを支えるのがルール上手が使えない人間というのは結構心許ない話だと思います。どれだけ盤面に優位があり、それを活かす論理が共有されていても、その瞬間にその論理を預かった選手が、技術または認知や判断においてその役割を果たせるかどうかということです。チームとしてなってようがなってなかろうが、プレーするのは選手です。
これを突き詰めると、論理を運べない選手や、よく間違う選手は論理的なサッカーに不要です。リスクを排除したくてみんなで大事に運ぼうとしてる論理を簡単に落っことすやつはいりません。そいつが他の面で多少優れていてもです。だから論理的なサッカーは残酷にも人を選びます。論理を運べない選手の出番は限られます。
一方で、論理的なサッカーには典型的な悩みがあります。それは『安全な道』を何度も使うので、いつも同じ場所にたどり着くということです。『いつも』は言い過ぎか、『よく』くらいにしときます。この場所は噛み合わせの均衡点です。ボールを保持する自分達の排除したリスクと、ゴールを守る相手チームの許容するリスクがバランスする場所です。ここを突破しないと次にはいけません。勝負どころです。 見せ所であり、苦しいところです。今節で言えば、先制点の小屋松vs関根の1on1の瞬間がまさにこれでした。ここを突破するには、みんなで運ぶ論理を勝手に落とさない能力とは別の個性が必要です。平たく言えば個人の質ですね。 ドリブル突破、キラーパス、えげつない加速力、その種類は色々でしょう。例えば相手がブロックを組んでいて対面にディフェンスがいる、自分は静止している、これを突破できるか?というような局面で、論理的なサッカーには、運んだ論理を落とさないだけでなくこの場所を突破してくれる存在が必要です。でないと、行き着く先は無限の安全になってしまいます。
ここにポジショナルなサッカーのコストと限界が見えます。11人の論理を運べる選手を用意し、そのうち何人かは勝負を制する質も必要です。これを用意できるのか。さらには、ボール非保持のことを考えなければいけません。ハイボールの競り合いは?セットプレーは?考慮すべきことは多いです。特に高いレベルで論理的に優位なチームを目指すなら、その論理を体現できる優位な選手がたくさん必要です。悪いことにJリーグのレベルは上がり続けており、優位な選手の獲得コストが上昇する一方、クラブの収入と予算はそのスピードには追いついていないように思います。
ご安心ください、僕は論理的なポジショナルサッカーを信奉するあなたを攻撃してはいません。柏はいいサッカーをしていました。浦和の出来は悪かった。ただどんなやり方であれ、人間がやるのだから、限界があるのだという普通のことを言いたいのです。組織で論理を運んでいくサッカーに対する取り組みがポンコツレベルの浦和レッズさんも同じく人間の限界を抱えているし、なんなら何度かこの限界にぶち当たって砕けています。ただ、論理的であれば全能で、そうでないなら無能というわけでもないという話がしたいのです。 全能感に引っ張られるのはちょっと違うと思うのです。あなたが信頼するその意見、好みでちょっと勢いがつきすぎてませんか?今節の柏レイソルが浦和に『なにもさせなかった』とは言い切れないのではないでしょうか?
浦和レッズなんとかなれ
なんか話が長くなってきました。いいかげん今節を振り返ると、まず浦和がプレスを仕掛けたもののやり方が不味くて、大きな盤面優位を柏に与えました。柏イレブンはその優位を論理でくるんできちんと運びました。浦和は自ら作り出した盤面の劣位を修正できないまま、その流れから2点が入りました。盤面優位を得た佳穂が躍動してました。コメントでちゃんと論理を運んでくれたビルドアップ隊に感謝した佳穂はまさにポジショナルサッカーの体現者でした。 この前半の内容は、リカルドのチームの典型的な勝ちパターンだったと思います。すなわち『なってないチーム』の成敗。レッズとしては、先制点の場面と追加点の起点になった原川のターンの場面、どんなに仕組みで負けていてもこの二つは勝ちきらないといけなかったですね。
とはいえ、浦和にもチャンスはありました。柏のミスから、もしくはボール保持時とは打って変わって好戦的にリスクをかける柏のプレスを剥がせたところから。当然柏の選手も論理を運ぶ仕事率が100%ではないし、なんらかのリスクを負えばコインの裏を見ることもあります。いかに浦和がなっていなくても、こういうチャンスはあるわけです。これを決められなかったのが良くなかったと思います。マジで普通のことを言ってますが、真剣にそう思います。論理を運ぶ仕事は繊細なので、失敗があると怖くなるんですよ。0と1の恐怖の差を考えれば、これは重要なことだったと思います。
後半、選手交代もあって浦和が押し込む展開となりました。プレスのやり方も少し変えて、柏の選手が享受する盤面優位を少し小さくできたことも作用したと思います。時間がなければプレーするのは難しくなります。そうなれば、徐々に選手の能力的対応限界を晒せます。ミスが起きれば論理は運べませんから、論理を基にプレーするチームは苦しくなります。論理でゲームを制圧する全能感はもはやありません。しかし、ここでも浦和のシュートが決まりませんでした。決めろや。
いやわかりますよ、あんだけ走らされたらキツいよね。最初プレスの設計無理があったよね。柏も上手かったよね。でもさ、そこはなんとかしてほしいのよ。こういうサッカーなんだから。みんなで論理を運ぶサッカーやってないんだから、そういう仕事求められてないんだから、その分違う強みで存在価値出さないとさ、勝てないじゃん?一点決めてれば柏は焦ったと思うな〜〜論理のベースを破壊したら順当に壊れたと思うな〜〜相撲みたいな勝負なら勝てたと思うな〜〜。ホームなんだしさ、5万人応援来てるしさ、かっこいいとこ見せてくれよ。まあ仕方ない。次頑張ろう。
ところで、浦和のサッカーがこれでいいんですかという問いに関しては、今は現実この路線なんだしこれで頑張るしかないっしょと思ってます。浦和レッズさんのクラブとしての強化方針の迷走についてはすでにチラ裏に20万字以上書いてきたと思いますがまだ足りないようです。でも迷走も無意味ではなくて、論理的なサッカーにも取り組んでみたけど、なんらかの理由で無理ってなって今があるって感じです。だったら今はもう仕方がない。その理由のほんとのところは僕も良く分かってませんが、ポジショナルなサッカーのコストや限界に耐えきれなかったというのは一因だと思います。例えば明らかに論理を運ぶには適してないけどこの選手は外せないとか、一生懸命論理を運んでくれるけど浦和的にはもっとパンチに重さが欲しいとか、全部できるけど酒を飲みすぎるとか、すぐ怪我するとか、そもそもあいつはなんか好かんとか、なんかそんな感じの様々なつらみが背景にありそうです。
僕としては、それはもういいんです。別に浦和レッズがポジショナルマスタークラブじゃなくてもいいです。どうせ世界に出たら天界のポジショナルマスターがうじゃうじゃいるし、アジアの中ですら資金力勝負には勝てないし。最短距離で結果を求めるために勝負師的な監督に任せて尖った個人の力を使いこなそうとするならそれもまたやり方です。前時代的でも華麗でなくても勝てばいいならそうすればいい。ビルドアップもできる奴に全部やってもらって時々ボールがオープンに進めばそれでも良い。ロングボールを電柱にぶつける競技を見せられても構わない。ポジショナルだけが戦術じゃないし、安全第一でボールをこねくり回すサッカーが埼スタに合ってるとも思いません。リスク上等、バイブス⤴︎⤴︎大歓迎。でもこれをやるなら、少なくとも自発的に崩壊するなと言いたい。そこんとこ、分析と設計どうなってるんですか。公式戦で選手の挙動を観たいとすこが言ってましたけど、自分の選手に何を任せられて何は無理なのか、そろそろ把握できませんか。いろいろ悩ましいでしょうけど、せめて無理のある設計は回避できませんか?
いやわかる、渡邊絶対的凌磨がおらん。凌磨ありきで設計してたと思う。そして前回書いた通りその考えはわかる。すこは3年目、リカルドは2ヶ月とか言われてますけど、凌磨が怪我してまだ1週間ちょっとなんだから、1週間vs2ヶ月で完成度比べんなよと言い訳したくなったりもする。準備してきたものが不運にも満足に出せないうちにめっちゃ雰囲気悪くなってて焦りもある。でも初手で自壊してたら始まらないのですよ。ブロック組んでカチコチにしてもいいし、プレスにいくならわかりやすく相手陣地は全部マンツーみたいな感じでもいいし、 なんならミラーゲームにしてもいいと思うので、とりあえず中途半端な実装で自壊するのはやめてください。モードなやり方じゃなくても、それなりに守れればワンチャンは来るでしょ、それを質で仕留めようよ。前向きにプレーできれば神戸戦みたいなバイブスが出せるはずでしょ。
マジでなんとかなれ。特に凌磨と柴戸、早うなんとかなれ。次こそ勝とう。勝てば始まる、はず。
今日のチラ裏でした。