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カーボンナノチューブとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学物質 > ナノチューブ > カーボンナノチューブの意味・解説 

カーボン‐ナノチューブ【carbon nanotube】

読み方:かーぼんなのちゅーぶ

炭素原子六角形並んだ表面構造をもつ、管状物質フラーレン一種繊維状に細長い形状を得ることが可能で、軽量ながら、高い引っ張り強度をもつ新素材として注目されるCNT


カーボンナノチューブ

【英】Carbon Nanotube

カーボンナノチューブとは、1991年飯島澄男博士によって発見された、ダイヤモンド非晶質・グラファイト・フラーレンに次ぐ炭素材料の名称である。原子5個分から10個分ほどの太さをもつチューブ状炭素原子集合体であり、構造によって金属にも半導体にもなるという特性持っている

1996年フラーレン発見者スモーリーらによって大量合成法レーザー蒸発法)が発見された。さらに最近では化学的気相成長法CVD法)による大量合成研究されている。ナノテクノロジー材料として最も注目されている物質であるといえる


カーボンナノチューブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/06 01:37 UTC 版)

走査型トンネル顕微鏡によって得られたカーボンナノチューブの画像

カーボンナノチューブ: carbon nanotube、略称CNTは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質。炭素同素体で、フラーレンの一種に分類されることもある。

単層のものをシングルウォールナノチューブ (SWNT)[注 1]、多層のものをマルチウォールナノチューブ (MWNT)[注 2] という。特に二層のものはダブルウォールナノチューブ (DWNT)[注 3] とも呼ばれる。

概略

カーボンナノチューブはその細さ、軽さ、柔軟性から、次世代の炭素素材、ナノマテリアルといわれ、様々な用途開発が行われている。カーボンナノチューブ (CNT) の直径は、0.4~50ナノメートルである。非常に高い導電性熱伝導性耐熱性を持つことを特性としている。 樹脂ゴムインク塗料など、通常は熱や電気を伝導しない素材への応用が見込まれる。 長尺になると少量でも導電性や熱伝導性を発揮し、強度も高くなる[1]

構造

カーボンナノチューブの幾何学構造図。アームチェアチューブ、ジグザグチューブ、カイラルチューブの3種類に分けられる。

カーボンナノチューブは、基本的には一様な平面のグラファイトグラフェンシート)を丸めて円筒状にしたような構造をしており、閉口状態の場合、両端はフラーレンの半球のような構造で閉じられており5員環を必ず6個ずつ持つ。5員環の数が少ないため有機溶媒等には溶けにくい。7員環が含まれる場合には内径が大きくなり得るため太さの違うCNTが形成され、8員環では枝分かれ状の構造も作り出せると考えられている。チューブは筒のような構造のためキャップを焼き切るなどにより中に様々な物質を取りこむ事ができる[2]。ナノチューブとフラーレンが結合したカーボンナノバッド[注 4]という形も理論的には予測されている[3]

最も基本的な単層カーボンナノチューブの表面はグラフェンシートの表面図のようになっており、そのグラフェンシートの幾何学的構造の違いによって3種類のカーボンナノチューブが成立するとされる。グラフェンの六角形の向きはチューブの軸に対して任意の方向にとれるため、このような任意の螺旋構造の対称性を軸性カイラルといい、グラフェン上のある6員環の基準点からの2次元格子ベクトルの事をカイラルベクトルと呼ぶ。カイラルベクトルは以下のように表される。

直径別に分離されたCNT

エレクトロニクス

半導体

  • 構造によってバンド構造が変化し電気伝導率バンドギャップなどが変わるため、シリコン以後の半導体の素材としても期待されている。
    • 銅の1,000倍以上の高電流密度耐性、銅の10倍の高熱伝導特性、高機械強度、細長い、などの特性がCNTの電子材料としての特長であり[6]集積回路などへの応用が期待されている[7]
    • 半導体としてのCNTをトランジスタのチャンネルとして用いることで、高速スイッチング素子として用いられることが期待される。CNTはP型半導体的な極性を示す。
    • 金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法は過酸化水素水を使用する方法[8]や、アガロースゲルを用いて分離する方法[9]などが発見されている。アガロースゲル(寒天)を用いた方法ではSWNTさえあれば家庭レベルで安価・簡単に分離する事ができる。その基本的方法はCNTをゲルの中に含ませて凍結、解凍後に絞りだすだけである。これにより95%の半導体型SWNTと70%の金属型SWNTに分離できる。さらに、化成品や医薬品の産業生産工程に広く用いられているカラムクロマトグラフィーとアガロースゲルを用いた方法では、半導体型95%、金属型90%に分離できる。分離された薄液は様々な色を呈する[10][11]
    • IBMでは導電性CNTを焼き切る方法を用いて、半導体CNTを分離しプロセッサへの応用を考えていた[12]

燃料電池

  • 導電性の高さと表面積の大きさ(閉口状態で1,000m2/g、開口状態で2,000m2/gに達する[13])から燃料電池としての応用も進められている。内部に筒状の中空空間を有しているため、様々な分子を内包させることができる。また、CNTの持つ薄さによりペーパーバッテリーという形も考えられている。
  • 単層カーボンナノチューブは著しい比表面積を持ち、表面に極微量のガスが吸着するだけで物性が大きく変化する。これにより高感度のガスセンサー等への応用が期待される[14]

光学機器

  • 電場をかけると5員環から電子が放出されるためFED[15]平面蛍光管冷陰極管カソード(陰極)デバイスへの応用も研究されている。また、X線の発生源としての研究も進められている。
    • スーパーグロースCVD法を用いて二層カーボンナノチューブをディスプレイ用の電極基板上に直接成長させることによって均一な電子放出特性を示す。これによりFEDの一種であるカーボンナノチューブディスプレイへの応用が期待される[16]
  • ナノチューブ繊維をスーパーグロースCVD法を用いてブラシ状に構造化する事で反射率0.045%という世界で最も優れた灰色体(黒い物質)を作り出す事ができる。この物質はカーボンナノチューブ黒体と呼ばれている[17]
  • ナノオーダーの1次元的物質故、原子間力顕微鏡探針やナノピンセットなどにも応用が期待される。CNT探針を用いた光ディスクのナノピット形状の測定など将来の100GB以上のナノ光ディスクへの応用も考えられている[18]

構造材料

  • アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度(特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕する)と非常にしなやかな弾性力を持つため、将来軌道エレベータ(宇宙エレベータ)を建造するときにロープの素材に使うことができるのではないかと期待されている。
    • 多層カーボンナノチューブは、導電性、弾性、強度に優れ、ヤング率は0.9TPa、比強度は最大150GPa。一方、単層カーボンナノチューブは半導体となり、極めて高弾性で破断しづらく、優れた熱伝導性などMWNTとは異なる特性を持つ。ヤング率は1TPa以上、比強度は構造によって異なり13~126GPa。
    • 現時点ではバッキーペーパーと呼ばれるシートが研究段階で開発されている。スーパーグロースCVD法によって製作されたSWNTによる薄膜の密度は0.037g/cm3[13]。触媒操作によりSWNTとMWNTの比率も変えられる[19]
  • ダイヤモンド・アンビルセルを用いてSWNTを24GPa以上に常温加圧する事により、電気伝導性を有する超硬度材料超硬度ナノチューブ (SP-SWCNT))を合成できる。ナノインデンター硬度測定法による硬度は62~150GPaでダイヤモンド150GPaに匹敵し、体積弾性率は462~546GPaでダイヤモンド420GPaを超える。ラマン効果を用いたスペクトル計測では、不可逆変化を起こしている事が分かった。なおダイヤモンドは絶縁体である[20][21]フラーレンを用いて同様の方法で製作された物質にハイパーダイヤモンドがある。ダイヤモンドの2倍程度の硬度とされる。
  • 複合材として用いる事で、ハイパービルディングや大型の橋梁用ケーブル、自動車航空機戦闘機宇宙船などの従来物質では不可能な構造物への応用が考えられる。また、スポーツ製品や自転車などの一般製品にも利用され始めている。
  • シリコンゴムのような性質で、極環境下でも粘弾性を持つCNTが発見されている。この物体は、-196 ℃から1000 ℃の温度範囲で粘弾性を示し、-140~600 ℃で、0.1~100ヘルツの振動数範囲では、周波数に依存しない安定した粘弾性を示す。さらに100ヘルツで1%のねじり歪みを100万回加えた後も、劣化や破断がない[22][23]

その他

  • 各種フラーレンを内包したピーポッドやTCNQ、カロテノイド、種々のポルフィリンなどの有機分子を内包したものが作製されている[24]
    • 最近になって単層カーボンナノチューブ内部では水の融点が高くなり、常温常圧下でも氷を作ることが発見された[25]
  • 微細繊維の形をとる場合があるため、防刃チョッキや防弾チョッキ用のケブラーに変わる高強度繊維としての利用も考えられているが、同時にアスベスト状の毒性を示す可能性があると指摘されている(後述)。
  • 終端処理したMWNTは極低温において超電導を示す。転移温度

外部リンク


カーボンナノチューブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

日本の発明・発見の一覧」の記事における「カーボンナノチューブ」の解説

1991年飯島澄男多様ならせん構造をもつカーボンナノチューブを発見し電子顕微鏡構造決定した

※この「カーボンナノチューブ」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「カーボンナノチューブ」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。

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