ピトー‐かん〔‐クワン〕【ピトー管】
【ピトー管】(ぴとーかん)
航空機の対気速度を計測する装置。
現代では、一部の軽航空機を除くほぼ全ての航空機に装備されている。
機体によって乱された気流を避けるため、通常は機首の先端か側面に取り付けられるが、場合によっては主翼や垂直尾翼の前縁に付けられる場合もある。
フランスの水理学者、ヘンリー・ピトーが水流の速度を測定するために考案したことからこの名がついている。
構造は二重構造の管で、先端と側面に穴が開けられている。
この二つの穴に流体が通ることで、それぞれに加わる圧力の差を計測し、そこから速度を割り出すことができる。
前述の通り、元来は水流の速度を測定するために造られたが、気流の速度を測定する事も可能であるため、航空機に用いられている。
穴が塞がると機能不全に陥るため、地上ではカバーを取り付けて穴詰まりを防ぐ。
また、氷点下では着氷で氷が詰まってしまう事があるため、高空ではヒーターなどの防氷装置も必須となる。
実際、穴に泥がつまったり、離陸時にカバーを外し忘れた事が原因で計器故障により墜落した事故も存在する。
関連:指示対気速度 較正対気速度 リムーブビフォアフライト
ピトー管
先端が開口した管を、気流の上流に向け、全圧を測定する器具をいう。フランス人ピトーによって考案された単管式のものである。ピトー管で測定される全圧と、壁面などに平行に開いた孔で測定される静圧の差(動圧)から、流体の流速を求めることができ、風洞などの、気流の流速を測定するために使われる。全圧と静圧の差(動圧)をΔp、流速をV、空気の密度をρとすると、Δp=ρv{2}÷2の関係があり、これから流速を求めることができる。現在は、全圧孔と静圧孔を1本の管に設けたL字形のピトー静圧管が汎用性も高く、多く用いられている。ピトー静圧管を慣用的にピトー管ということもある。
ピトーかん ピトー管 pito tube
ピトー管
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 05:04 UTC 版)
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ピトー管(ピトーかん、英語: Pitot tube)は流体の流れの速さを測定する計測器である。発明者であるアンリ・ピトーにちなんで命名され、その後ヘンリー・ダルシーやルードヴィッヒ・プラントルにより改良された。航空機の速度計や風洞などに使用される。
アンリ・ピトーは1732年11月12日にパリ科学アカデミーでこの流速を直接計測できる発明を発表した。当時ベルヌーイの定理はまだ発表されていなかったため、彼はまったく直感的な根拠によってこの装置を利用した。ピトー管の動作とその使用における合理的な理論をベルヌーイの定理に基づいて調査したのはジョン・エアレイで、1913年のことであった[1]。
原理

基本的な構造は二重になった管からなり、内側の管は先端部分に、外側の管は側面にそれぞれ穴が空いている。二つの管は奥で圧力計を挟んで繋がっており、その圧力差を計ることができるようになっている。
ピトー管は、先端を流れに正対させて使用する。側面の穴(外側の管)は流れの影響を受けないため、ここには静圧 Ps がかかる。一方、先端にある穴(内側の管)はよどみ点であり、ここには全圧(総圧とも)Pt がかかる。この全圧から静圧を引いた差圧(動圧 Pd )を測定し、ベルヌーイの式を適用することで流体の速度V を計算することができる[2]。
機首先端にピトー管を備える F-16。保護カバーから垂れ下がる赤いタグ(ストリーマー)には "REMOVE BEFORE FLIGHT(飛行前に外せ)" と書いてある F/A-18のピトー管 ある程度以上高速の航空機において、ピトー管は最も一般的な速度計測手段である(飛行船程度の低速が計測下限)。他の航空機に比べ相対的に揚力の少ないジェット機では、特に着陸時の対気速度が分からないのは致命的となるので、離陸前にピトー管カバー取り外しの確認作業が重要である。実際に1996年には、アエロペルーのボーイング757が機体洗浄の際にピトー管に取り付けられたマスキングを外さないまま離陸してしまったために正しい高度・速度が検出できなくなって墜落してしまうという事故(アエロペルー603便墜落事故)が起きている。
ピトー静圧管若しくは純粋なピトー管と胴体側面などに設けられた静圧孔とからなる。こうした、速度や高度(静圧は高度指示にも利用される)といった非常に重要なシステムでは、複数のピトー管と複数の計器を互いに独立して設け、冗長性が高められていることが多い。
また、当然のことながら正確な速度を計測できないので全圧をピトー管からセンサや計器へと導くチューブやホースにはリーク(漏れ)があってはならない。
設置位置
正確な測定のために、ピトー管は境界層の外側で、かつ流れの乱れが小さな場所に設置される:
- 機首先端 - 現代の戦闘機や F1 に多い。また、試験飛行を行うプロトタイプの航空機では、さらに正確な計測が要求されるため[注 1]長いブーム(棒)の先端に設けられることがある(これを標準ピトーもしくは計測ピトーと呼ぶことがある)
- 機首側面 - 旅客機やヘリコプターに多い。横風の影響も考慮してそれを補正するため、ふつう機首の両側面に1対設けられる。最新の大型化した戦闘機では、機首側面に取り付けるものも増えてきている。
- 翼下 - 単発の小型プロペラ機などで機首に設置できない場合、胴体からやや離れた翼の下面に置かれることがある。片翼下のみのことが多い(おそらくコストの点から)
機首側面と翼下の場合、流速の遅い境界層から距離をとるために、ふつうL字型に曲げられている。ピトー静圧管ではなく、静圧孔を別に持つようなシステムの場合、横風による誤差を軽減するため、多くの場合、静圧孔は胴体両側面に設けられる。
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V-22 オスプレイの試験機。赤いブームの先端
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ボーイング307。機首下側面
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フォッカー F50。機首側面
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ユーロコプター ティーガー。機首側面
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カモフ Ka-52。機首上側面
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セスナ 182。左翼下
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F-104J。機首先端
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ボーイング777。機首側面(黄色い矢印で示した管)
防氷
気温が氷点下に達する上空では、水分が凍結し、ピトー管や静圧孔を閉塞してしまう可能性がある。速度や高度システムの指示が異常となり、事故に繋がる危険性がある。これを防ぐために、電熱線などによる防氷システムが備えられていることが多い。
ピトー管が関連する事故・故障
- 実例
脚注
注釈
- ^ これによって得られる正確な対気速度が位置誤差較正に必要であるため
出典
- ^ ジョン・D・アンダーソンJr. 著、織田剛 訳『空気力学の歴史』京都大学学術出版会、2009年、68-71頁。ISBN 978-4-87698-921-8。
- ^ 巽友正『流体力学』培風館、1982年、70頁。ISBN 4-563-02421-X。
- ^ E. クラウゼ『流体力学』シュプリンガー・ジャパン、2008年、13頁。ISBN 978-4-431-10020-1。
- ^ 松尾一泰『圧縮性流体力学』理工学社、1994年、109頁。ISBN 4-8445-2145-4。
関連項目
「ピトー管」の例文・使い方・用例・文例
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