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メモリスタとは? わかりやすく解説

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メモリスタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/23 06:46 UTC 版)

メモリスタ
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校アメリカ合衆国エネルギー省傘下アメリカ国立エネルギー技術研究所英語版によって開発されたメモリスタ
発明 蔡少棠 (Leon O. Chua, 1971)
電気用図記号
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メモリスタ (またはメモリスター。英語: memristor, [ˈmɛmrɪstər]; メモリ抵抗器かばん語) は、電荷磁束鎖交英語版に関係する非線形2端子英語版電気部品である。通過した電荷を記憶し、それに伴って抵抗が変化する受動素子である。過去に流れた電流記憶する抵抗器であることからメモリスタ (memristor) と名づけられた。

1971年に蔡少棠英語版によって言及と命名がなされ、これにより、抵抗器コンデンサインダクタも含む基本的な電気部品の理論上のカルテットが完成した[1]抵抗器キャパシタインダクタに次ぐ新たな受動素子であるので、“第4の回路素子” と呼ばれる。

英語版英語版朝鮮語版は後にこの概念をメモリスティブ体系に一般化した[2]。理想的なメモリスタ部品の主要な特性を複数の在来型の部品からなる回路で模倣するようなシステムも、一般にメモリスタと呼ばれる。 このようなメモリスタ・システム技術はいくつか開発されており、特にReRAMがその1例である。

電子デバイスのメモリスティブ特性の特定は論争を呼んでいる。実験的には、理想的なメモリスタはまだ実証されていない[3][4]

基本的な電気部品として

蔡は1971年の論文で、非線形抵抗器 (電圧対電流)、非線形コンデンサ (電圧対電荷)、および非線形インダクタ (磁束鎖交対電流) の間に理論上の対称性を特定した。この対称性から、彼は磁束と電荷を結び付ける第四の基礎的非線形回路要素の特性を推測し、これをメモリスタと呼んだ。線形 (または非線形) 抵抗器とは対照的に、メモリスタは過去の電圧または電流の記憶を含め、電流と電圧の間にダイナミックな関係を持っている。他の科学者は、バーナード・ウィドロー英語版メミスター英語版のようなダイナミックメモリ抵抗器を提案していたが、蔡は数理的普遍性を導入した。

抵抗器、キャパシタ、インダクタ&メモリスタの概念の対称図

由来と特性

メモリスタは、通過した電荷 HP研にて専用に製作され、原子間力顕微鏡によって撮像された17列酸素欠乏二酸化チタンメモリスタ。配線幅は約50nm、つまり原子150個分[33]。メモリスタを流れる電流は酸素空孔をシフトさせ、抵抗の段階的かつ持続的な変化を引き起こす[34]

1971年の当初の定義によれば、メモリスタは4番目の基本回路要素であり、電荷と磁束鎖交の間に非線形関係を形成する。2011年に蔡は、より広い、抵抗スイッチングに基づく全ての2端子不揮発性メモリデバイスを含む定義を主張した[17]。WilliamsはMRAM相変化メモリそしてReRAMはメモリスタ技術であると主張した[35]。一部の研究者は、血液[36]や皮膚[37][38]などの生物学的構造が定義に適合すると主張した。他の人はHP研英語版が開発中のメモリデバイスや他の形式のReRAMはメモリスタではなく、むしろ可変抵抗システムのより広範なクラスの一部であり[39]、そしてメモリスタの広義の定義はHPのメモリスタ特許を有利にする科学的に不当な土地収奪英語版である[40]と主張した。

2011年に、MeuffelsとSchroederは初期のメモリスタ論文の1つにイオン伝導に関する誤った仮定が含まれていることを指摘した[41]。2012年に、MeuffelsとSoniは、メモリスタの実現におけるいくつかの基本的な課題と難問について議論した[42]。彼らはNature の論文「行方不明のメモリスタが見つかった(The missing memristor found)」[18]で提示された電気化学モデリングにおいて、電圧または電流ストレス下での「金属 — TiO2−x — 金属」構造の挙動に対する濃度分極英語版効果の影響が考慮されていなかったため、不備を指摘した。この批判は2013年にValovら(et al.)[26]によって参照された。

ある種の思考実験において、MeuffelsとSoniは[42]、さらに次のような深刻な矛盾を明らかにした: いわゆる不揮発性特性[17]を持つ電流制御メモリスタが物理的現実に存在する場合、その挙動はシステムの「情報」状態を変更するために必要な最小エネルギー量に制限を設けるランダウアーの原理に違反することになる。この批判は最終的にDi Ventra英語版とPershinによって採用された[43]

この文脈の中において、MeuffelsとSoniは[42]、基本的な熱力学的原理を次のように指摘した: 不揮発性情報ストレージにはシステムの異なる内部メモリ状態を相互に分離する自由エネルギー障壁の存在が必要であり; さもないと、一方が「中性の」状況に直面することになり、そしてシステムがちょうど熱ゆらぎの影響下にある場合、ある記憶状態から別の記憶状態へ勝手気ままに変動してしまうだろう。熱ゆらぎに対して保護されていない場合、内部メモリ状態は、状態の劣化を引き起こすいくつかの拡散ダイナミクスを示す[43]。自由エネルギー障壁は(したがって)ビット操作の低ビットエラー確率を保証するのに十分高くなければならない[44]。その結果として、とあるメモリデバイスにおけるビット値の意図的な変更について  — 必要なビットエラー確率に応じ  — エネルギー必要量には常に下限が存在する[44][45]

メモリスティブ体系の一般概念において、定義方程式は次のとおり (#理論を参照):

V対I、ピンチ化ヒステリシス曲線の例

メモリスタとメモリスティブ体系の結果生じる特性のうち1つが、ピンチ化ヒステリシス効果の存在である[52]。電流制御メモリスティブ体系の場合、入力

脚注

  1. ^ Chua, L. (1971). “Memristor-The missing circuit element”. IEEE Transactions on Circuit Theory 18 (5): 507–519. doi:10.1109/TCT.1971.1083337. 
  2. ^ a b c d e Chua, L. O.; Kang, S. M. (1 January 1976), “Memristive devices and systems”, Proceedings of the IEEE 64 (2): 209–223, doi:10.1109/PROC.1976.10092 
  3. ^ a b Pershin, Y. V.; Di Ventra, M. (2019). “A simple test for ideal memristors”. Journal of Physics D: Applied Physics 52 (1): 01LT01. arXiv:1806.07360. Bibcode2019JPhD...52aLT01P. doi:10.1088/1361-6463/aae680. 
  4. ^ Kim, J.; Pershin, Y. V.; Yin, M.; Datta, T.; Di Ventra, M. (2019). “An experimental proof that resistance-switching memories are not memristors”. Advanced Electronic Materials. arXiv:1909.07238. doi:10.1002/aelm.202000010. 
  5. ^ a b c d Chua, L. (1971). “Memristor-The missing circuit element”. IEEE Transactions on Circuit Theory 18 (5): 507–519. doi:10.1109/TCT.1971.1083337. 
  6. ^ Knoepfel, H. (1970), Pulsed high magnetic fields, New York: North-Holland, p. 37, Eq. (2.80) 
  7. ^ a b Muthuswamy, Bharathwaj; Banerjee, Santo (2019). Introduction to Nonlinear Circuits and Networks. Springer International. ISBN 978-3-319-67325-7 
  8. ^ Penfield Jr, Paul L; Freund, Robert W; Kyhl, Robert L; Brodsky, Wesley G; Staelin, David H (15 April 1974). [httpc://hdl.handle.net/1721.1/56460 Microwave and Millimeter Wave Techniques] (Report). Massachusetts Institute of Technology. Research Laboratory of Electronics. Quarterly Progress Report, no.113. pp. 31–32. hdl:1721.1/56460
  9. ^ Langenberg, D. N. (1974), “Physical Interpretation of the

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