数学的基礎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 22:11 UTC 版)
数学的には、インパルスはディラックのデルタ関数でモデル化される。T を(離散)システムとし、入力として x[n] をとり、y[n] という出力を生成するものとする。 y [ n ] = T [ x [ n ] ] {\displaystyle y\left[n\right]=T\left[x\left[n\right]\right]} したがって、T は(整数の)並びに作用して、別の並びを生成する作用素である。T はシステムそのものではなく、システムを数学的に表したものであることに注意が必要である。次のような T は非線形である。 T [ x [ n ] ] = x 2 [ n ] {\displaystyle T\left[x\left[n\right]\right]=x^{2}\left[n\right]} また、次の場合は線形である。 T [ x [ n ] ] = x [ n − 1 ] {\displaystyle T\left[x\left[n\right]\right]=x\left[n-1\right]} T が線形であるとする。すると次が成り立つ。 T [ x [ n ] + y [ n ] ] = T [ x [ n ] ] + T [ y [ n ] ] {\displaystyle T\left[x\left[n\right]+y\left[n\right]\right]=T\left[x\left[n\right]\right]+T\left[y\left[n\right]\right]} また、次も成り立つ。 T [ λ x [ n ] ] = λ T [ x [ n ] ] {\displaystyle T\left[\lambda x\left[n\right]\right]=\lambda T\left[x\left[n\right]\right]} また、T が y [ n ] = T [ x [ n ] ] {\displaystyle y\left[n\right]=T\left[x\left[n\right]\right]} であるとき y [ n − k ] = T [ x [ n − k ] ] {\displaystyle y\left[n-k\right]=T\left[x\left[n-k\right]\right]} となるような変換について不変であるとする。このようなシステムでは、入力から得られる出力を計算で求めることができ、インパルス応答と呼ばれる特殊な並びでそのシステムの特性を完全に表すことができる。これは、次のように示すことができる。次の恒等式がある。 x [ n ] = ∑ k x [ k ] δ [ n − k ] {\displaystyle x\left[n\right]=\sum _{k}x\left[k\right]\delta \left[n-k\right]} この両辺に T を作用させる。 T [ x [ n ] ] = T [ ∑ k x [ k ] δ [ n − k ] ] {\displaystyle T\left[x\left[n\right]\right]=T\left[\sum _{k}x\left[k\right]\delta \left[n-k\right]\right]} もちろん、この式は以下の項が T の定義域にある場合のみ意味がある。 ∑ k x [ k ] δ [ n − k ] {\displaystyle \sum _{k}x\left[k\right]\delta \left[n-k\right]} ここで、T は線形で、かつ変換に対して不変であるから、次のように書き換えられる。 T [ x [ n ] ] = ∑ k x [ k ] T [ δ [ n − k ] ] {\displaystyle T\left[x\left[n\right]\right]=\sum _{k}x\left[k\right]T\left[\delta \left[n-k\right]\right]} 出力 y[k] は次のように与えられる。 y [ k ] = T [ x [ k ] ] {\displaystyle y\left[k\right]=T\left[x\left[k\right]\right]} したがって、次のように書くことができる。 y [ n ] = ∑ k x [ k ] T [ δ [ n − k ] ] {\displaystyle y\left[n\right]=\sum _{k}x\left[k\right]T\left[\delta \left[n-k\right]\right]} ここで h [ n − k ] = T [ δ [ n − k ] ] {\displaystyle h\left[n-k\right]=T\left[\delta \left[n-k\right]\right]} のように置くと、最終的に次の式が得られる。 y [ n ] = ∑ k x [ k ] h [ n − k ] {\displaystyle y\left[n\right]=\sum _{k}x\left[k\right]h\left[n-k\right]} h [ n ] {\displaystyle h\left[n\right]} は T で表されるシステムのインパルス応答である。上記からわかるように、h[n] は入力が離散的なディラックのデルタ関数であった時のシステム出力である。連続的な時間系でも、同様の結果が成り立つ。 概念的な例として、ある部屋の中に風船があり、その位置を p とする。風船が弾むと、「ぽん」という音がする。ここで、この部屋は「ぽん」という音を入力として多重反射させるシステム T である。入力 δ p [ n ] {\displaystyle \delta _{p}[n]} は「ぽん」であり、時間的幅が短いのでディラックのデルタ関数に似ている。出力 h[n,p] は残響の並びである。h[n,p] は風船の位置(p)に依存する。部屋の中のあらゆる位置 p について h[n,p] が判っていれば、我々はこの部屋のインパルス応答を把握していることになる。すると、その部屋が生成する音がどうなるかを常に予測することが可能となる。
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数学的基礎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/04/01 13:49 UTC 版)
声道を固定長で一定の直径を持つ音響管の並びとしてモデル化した時、線スペクトル対は声門を開いたときと閉じたときそれぞれでの共振周波数の組にあたるパラメータである。くちびる側は完全開放のため反射係数が-1と見なし、声門側は開いたときの反射係数を1、閉じたときの反射係数を-1とモデル化すると、両端でのエネルギー損失が無いため声道全体が無損失系となり、音響管の伝達関数は線スペクトル状になる。この線スペクトルの周波数のペアで線形予測係数を表現するため、線スペクトル対という名称で呼ばれる。 Z変換を使って表した線形予測多項式は次の式で表される。 ここで P(z) は声門が完全に閉じたとき(反射係数 -1)に対応し、Q(z) は声門が完全に開いたとき(反射係数 1)に対応する。この式が LSP 多項式である。 線スペクトル対の値はこの多項式の根で表される。 元の多項式 A(z) は以下の式から容易に復元できる。 多項式 A(z) の全ての根がz平面上の の単位円の内部にある時、P(z) = 0 の根と Q(z) = 0 の根はどちらもすべて単位円周上にあることが示せて、これを利用して根の実部cos ωと対応する線スペクトル対の各周波数 ωi を求める。 P(z) と Q(z) の根にそれぞれ対応するωは必ず交互に相手のものを間に挟むので,以下のように並べることができる。 また、この条件は線スペクトル対を使った合成フィルターが安定であるための必要十分条件でもあることが示されている。
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