異質倍数性と同質倍数性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 23:07 UTC 版)
倍数性は大きく分けて、1つの種のゲノムが2倍になる同質倍数性と、2つの種のゲノムが結合する異質倍数性がある。異質倍数体は近縁種同士の交配によって生じるのに対し、同質倍数体は同種の親同士の交配もしくは親の生殖組織における体細胞倍加によって、1つの種のゲノムが重複することによって生じる。自然界では異質倍数体の方が多く存在すると考えられているが、これは異なるゲノムを受け継いでヘテロ接合性が高くなり、より高い適応度が得られるためと考えられる。このような異なるゲノムは、有利に働くこともあるが有害になることもある大規模なゲノム再編成の可能性を高める。それに対し、一般に同質倍数性は中立的な過程だと考えられているが、異質倍数性の種では必要な時間とコストのかかるゲノム再編成を受けずに新しい生息地に素早く適応することができ、種分化をもたらす有用な機構として機能するという仮説が立てられている。自家受粉が可能な完全花では、減数分裂のエラーによる異数性とともに、同質倍数性の可能性が非常に高い環境を作り出すことができる。 倍数化イベントの後、重複した遺伝子には、両方の重複遺伝子が機能的な遺伝子として保持される可能性や、どちらかか両方の重複遺伝子で機能の変化が起こる可能性、遺伝子サイレンシングにより片方または両方の重複遺伝子に起こる可能性、そして完全な遺伝子欠失が起こる可能性が考え得る。ゲノム重複の後、時間が経つにつれて、重複遺伝子の機能が変化するか、同質倍数性においてゲノム重複によって引き起こされるゲノム再配置によって遺伝子発現に変化が生じるかによって多くの遺伝子の機能が変化する。ある遺伝子の重複遺伝子が両方とも保持され、コピー数が2倍になると、その遺伝子の発現が比例して増加し、2倍のmRNA転写物が生産される可能性がある。また、重複した遺伝子の転写が抑制され、その遺伝子の転写の増加が2倍以下になる可能性もあるし、重複によって転写が2倍以上に増加する可能性もある。例えば、ダイズ属のナガミツルマメ(スウェーデン語版) Glycine dolichocarpa では、約50万年前に起こったゲノム重複の後、転写が1.4倍増加したことが観察されており、遺伝子コピー数が倍になったのに対して転写が相対的に減少したことが示唆されている。
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