Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

BAe_146とは? わかりやすく解説

BAe 146

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/27 15:18 UTC 版)

BAe 146

BAe 146とは、ブリティッシュ・エアロスペース(現BAEシステムズ)が開発、製造していた乗客数82人から112人乗りの4発ジェット旅客機である。小型機にもかかわらず、ジェットエンジンを4発搭載しているという希少な機材でもある。

概要

イギリス製の中短距離向けジェット旅客機であるBAC 1-11の後継として、中短距離の路線を運航するリージョナルジェットを目標に開発された。

小型機としては世界で唯一の4発機であるが、それは同規格の旅客機とは違い、低騒音と高離着陸性能 (STOL) を狙っているためである。

また、ジェット旅客機では珍しい高翼構造やテールコーンを左右に開くエアブレーキを採用している。

BAe 146はこれらの理由から、短い滑走路や騒音規制の厳しい空港を発着する近距離路線を中心に就航しており、都心に近いため騒音制限が厳しく、かつ滑走路が短いロンドンシティ空港ではこの機体を多く見ることが出来る。

開発

1960年代初期、デ・ハビランド・エアクラフトはターボプロップエンジンを搭載する小型双発機の設計を始め、支線向け高翼旅客機DH.123と名づけられた[1]。その後、デ・ハビランドはホーカー・シドレー吸収合併され、ターボファンエンジン搭載の双発低翼機HS.144へと受け継がれた。しかし、適当な出力を発揮できるエンジンが見当たらず、開発は停滞した。

1971年にホーカー・シドレーの開発陣は、アメリカ製のアブコ・ライカミング ALF 502を4基搭載した高翼配置の4発機設計を採用した。これをHS.146と指定され、1973年8月29日にイギリス政府の支援をとりつけ、開発計画が承認された[1]。直後に起きたオイルショックにともなう世界的景気の失速のため、計画の進行は後回しにされた。その間にホーカー・シドレーは、ブリティッシュ・エアロスペースの傘下に入り、1978年7月10日に政府の支援が回復され、HS.146の設計は、いくつかの近代化がなされ、BAe 146として開発は再開された。

ブリティッシュ・エアロスペースの保有するBAe 146-100

試作機の初飛行は、BAe 146 シリーズ 100が1981年9月3日、シリーズ 100の胴体延長型のシリーズ 200が1982年8月1日である。1983年に欧州航空規則 (Joint Aviation Requirements) による型式証明を取得、イギリス-スイス間で初就航した。

設計

BAe 146の基本的な特徴は、15度の後退角をもった高翼配置の主翼とT字尾翼である。シリーズ 100は、各々31 kN (3,162 kgf/6,970 lbf) の出力をもつ4基のアブコ・ライカミング ALF 502R-5 ターボファンエンジンを搭載したが、初期生産型はALF 502R-3エンジンを搭載した[1]降着装置は前輪式で、すべて引き込み式の2輪ボギーである。後方の主脚は胴体に引き込まれ、前輪は機首側へ引き込まれる。

運航

中国西北航空 BAe 146-300(1995年、松山空港)

イギリスのみならずヨーロッパ諸国の航空会社で多く導入された他、アジアアメリカアフリカの航空会社にも多く導入され、2001年まで生産された。BAe 146の派生型としては、シリーズ 100、シリーズ 200、シリーズ 300がある。

後期にはグループ内の組織改編によりアブロライナーと呼んでいた。そのためアブロ 146と呼ばれたり、4発機であることからジャンボリノの愛称もある。現在もヨーロッパの航空会社を中心に運行されており、貨物機として運航されているケースもある。

日本の航空会社がBAe 146を運航したことはなかったが[注 1]イギリス王室専用機として飛来した他、中華人民共和国の航空会社が日中間の定期航空路線に使用したことがあった。

中国民航博物館ロシア語版に展示されているBAe 146-100

1990年代前半に中国東方航空上海長崎間で使用していたほか、1996年に開設された中国西北航空(現在は中国東方航空に吸収合併)が開設した広島上海経由西安の路線(現在では上海までしか運航されていない)では当初この航空機が使われていた。

アブロRJ

1993年に、エンジンを換装した上に操縦系統を近代化し、名称を変更し、アブロ RJ (Avro RJ) となった。各型は、RJ70、RJ85、RJ100としているが、それぞれ定員を示したものであり、さらに定員を増加したRJ115もある。2001年には生産を終了した。

事故

BAe 146/Avro RJシリーズでは14件の全損事故・事件が発生しており、計294人が死亡している[2][3]

カスタマーの一覧

航空会社

BAシティフライヤーのアブロ RJ100
シティジェットのBAe 146
ブリュッセル航空のアブロ RJ100
コブハム・アビエーションのアブロRJ100

(過去のものも含む)

政府および軍

派生型

  • BAe 146 シリーズ 100 (Avro RJ70):標準型。
  • BAe 146 シリーズ 200 (Avro RJ85):2.4 mストレッチ型。
  • BAe 146 シリーズ 300 (Avro RJ100):200型の2.44 mストレッチ型。
    • 146-QT:貨物機型
    • 146-QC:貨客転換型
    • 146-STA:軍用型、計画のみ
  • Airbus E-Fan X英語版 - エンジン1基を電動ダクテッドファンで置き換えたハイブリッド航空機の実証実験機。

要目

真下から見たBAe146
  • 全長:26.19 m(-100)、28.55 m(-200)、30.1 m(-300)
  • 翼幅:26.21 m
  • 全高:8.6 m
  • 翼面積:77.3 m2
  • 乗員:2 名
  • 乗客:70-82(-100)、85-100(-200)、100-112(-300)
  • エンジン:ライカミング(ハネウェル) LF 507 4基
    • 推力 7,000 lbf(31.1 kN)
  • 巡航速度:760 km/h
  • 離陸滑走距離[19]:1,195 m (-100)、1,390 m (-200)、1,535 m (-300)
  • 着陸滑走距離[19]:1,180 m (-100)、1,190 m (-200)、1,270 m (-300)
  • 航続距離[19]:3,870 km (-100)、3,650 km (-200)、3,340 km (-300)

脚注

注釈

  1. ^ かつて日本エアシステムYS-11の後継機として導入を検討したことがあったが実現せずに終わった例はある。

出典

  1. ^ a b c Air Vectors - The BAE 146
  2. ^ Aviation Safety Network Aviation Safety Database: BAe-146 Statistics”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  3. ^ Have taken 216 human lives (Norwegian language)”. Bergens Tidende (11 October 2006). 3 May 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。16 July 2007閲覧。
  4. ^ ASN Aircraft accident British Aerospace BAe-146-200 N350PS Paso Robles, CA”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  5. ^ Witkin, Richard. "Experts Seek to Determine If Shots Played Role in Crash." New York Times, 9 December 1987.
  6. ^ ASN Aircraft accident British Aerospace BAe-146-200A CC-CET Puerto Williams Airport (WPU)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  7. ^ 19 U.S. Tourists Killed in Beagle Channel Crash; Chilean Plane Was on Leg of Antarctica Tour”. The Washington Post (21 February 1991). 31 October 2018閲覧。
  8. ^ ASN Aircraft accident British Aerospace BAe-146-300 B-2716 Yinchuan Airport (INC)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  9. ^ ASN Aircraft accident British Aerospace BAe-146-100 EC-GEO Melilla Airport (MLN)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  10. ^ ASN Aircraft accident Avro RJ.100 HB-IXM Zürich-Kloten Airport (ZRH)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  11. ^ ASN Aircraft accident Avro RJ.100 TC-THG Diyarbakir Airport (DIY)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  12. ^ "Norway runway blaze kills three." BBC News, 10 October 2006.
  13. ^ ASN Aircraft accident British Aerospace BAe-146-200A OY-CRG Stord-Sørstokken Airport (SRP)”. Aviation Safety Network. Flight Safety Foundation. 2016年12月31日閲覧。
  14. ^ "Six Dead After Cargo Plane Crashes in Papua's Mountains." Jakarta Globe, Retrieved 4 September 2009.
  15. ^ https://www.flightradar24.com/data/aircraft/cp-2933#bbef1b9
  16. ^ http://www.bbc.com/news/world-latin-america-38140981
  17. ^ http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/292803
  18. ^ http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161129/k10010788331000.html
  19. ^ a b c “World Airliners”. Flight International. (28 August 2001). https://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/2001/2001%20-%202962.html 

関連項目

外部リンク


「BAe 146」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「BAe_146」の関連用語

BAe_146のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



BAe_146のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
原色大辞典原色大辞典
Copyright © 1997-2025 colordic.org All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのBAe 146 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS