MT-LB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/23 22:25 UTC 版)
基礎データ | |
---|---|
全長 | 6.45m |
全幅 | 2.86m |
全高 | 1.86m |
重量 | 11.9t |
装甲・武装 | |
装甲 | 最大14mm |
主武装 | PKT 7.62mm機関銃×1 |
機動力 | |
速度 |
61km/h(路上) 31km/h(不整地) 6km/h(水上) |
エンジン |
YaMZ-238 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル 240馬力/2,100rpm |
行動距離 | 500km(路上) |
MT-LB(Mnogotselevoy Tyagach -Lekhko Bronirovannyi、ロシア語: МТ-ЛБ(Многоцелевой Тягач -Легкий Бронированный:「汎用軽装甲牽引車」の意)は、ソビエト連邦(ソ連)で開発された汎用装軌式の装甲車両である。
概要
放射能兵器や化学兵器、生物兵器などで汚染された環境下(CBRNE)での火砲の牽引と砲員および弾薬の輸送を目的として設計された。
開発にあたり、PT-76水陸両用軽戦車およびその派生型であるBTR-50水陸両用装軌装甲兵員輸送車のコンポーネントを流用しているが、共通するのは走行装置などだけであり、車体は別個の新設計である。PT-76系列が車体後部にエンジンを置いて後輪駆動だったのに対し、本車は車体前部にエンジンを置いて前輪駆動となっている。またエンジンも別系統の新型エンジンである。固有の兵装として、砲塔にPKT 7.62mm機関銃を1丁装備する。
6,500kgまでの火砲または車両を牽引できる他、車内後部区画には11名の兵士もしくは2,000kgまでの貨物を積載可能で、火砲牽引車としての他に装甲兵員輸送車としても用いられ、車体を流用した各種の派生型が多数開発されている。
本車が牽引対象としていた火砲の例として、BS-3 100mm野砲・T-12 100mm対戦車砲・D-30 122mm榴弾砲・120mm迫撃砲PM-43等が存在する[1]。
実戦
2022年ロシアのウクライナ侵攻の前線には、当初から多数のMT-LBが投入された。オランダの調査会社によれば、2023年10月の段階で400台以上が喪失している。ウクライナの前線で戦うロシア軍兵士は、兵器枯渇の解消の為に盛んにMT-LBの改装を行っており[2]、艦載砲である25mm2M-3艦載機関砲を上部に載せた改造例[注釈 1]も見られる[3]。
採用国
- バングラデシュ – 134[7]
- ボコ・ハラム
- ブルガリア – 100 [8]
- ベラルーシ – 70[9]
- フィンランド – 40 MT-LBV, 102 MT-LBU[10]
- ジョージア – 66 in Service[11]
- イラク – About 400 in Service.[12]
- カザフスタン - 2023年時点で、カザフスタン陸軍が50両のMT-LB装甲兵員輸送車と、数量不明のMT-LB装甲工兵車を保有している[14]。
- モルドバ – 2023年時点で、モルドバ陸軍が52両のMT-LB(派生型を含む)を保有している[15]。
- ナイジェリア – 67[16]
- 朝鮮民主主義人民共和国 – unknown number of HT-16PGJ based on Strela-10
- 北マケドニア – 10[17]
- クルド人民防衛隊(YPG) - 7[18]
- ロシア – 3,300両が現役。一部はエンジンをKAMAZ-740.50(360馬力)に強化し、履帯や武装などを換装した海軍歩兵向けバージョンMLBShに近代化改装された。また、エンジンにYAMZ-238BL(310馬力)を搭載した地上軍向けバージョン VM1K にもアップグレードされた。 一部はZU-23-2対空機関砲のプラットフォームとして装備されている。
- 退役国
登場作品
映画
- 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』
- 物語後半の、主人公バーニー・ロス率いる傭兵部隊「エクスペンダブルズ」と交戦する、アズメニスタン(架空の国家)の軍の増援部隊を構成する装甲戦闘車両として登場。車体上部の機銃手用のハッチを開放した状態で、機銃手2名が身を乗り出しているが、同じく装甲戦闘車両として登場するT-72戦車とは異なり、発砲シーンは無く、戦闘で撃破される事も無い。
脚注
出典
- ^ #ソ連地上軍 P.174、P.199、P.201
- ^ “ロシア軍が戦場に乗り捨てた軍用車の「異形」...後ろ半分は「まるで日曜大工」のお粗末さで、地雷原に沈む”. ニューズウィーク日本語版 (2023年10月13日). 2025年1月24日閲覧。
- ^ David Axe (2023年9月8日). “牽引車に艦載砲つけたロシア軍改造兵器、弾を撃つとぶるぶる震える”. フォーブス ジャパン 2025年1月24日閲覧。
- ^ The Military Balance 2017, p. 199.
- ^ The Military Balance 2017, p. 201.
- ^ International Institute for Strategic Studies (2021). The Military Balance. Taylor & Francis. p. 448. ISBN 9781032012278
- ^ The Military Balance 2017, p. 274.
- ^ The Military Balance 2017, p. 97.
- ^ The Military Balance 2017, p. 203.
- ^ IISS 2022, pp. 77
- ^ The Military Balance 2017, p. 205.
- ^ The Military Balance 2017, p. 380.
- ^ “shex ja3far puk”. YouTube. 17 November 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。9 December 2014閲覧。
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 182. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The Military Balance 2017, p. 528.
- ^ The Military Balance 2017, p. 136.
- ^ “Kurdish Armour: Inventorising YPG Equipment In Northern Syria”. Oryx Blog (2021年10月29日). 2025年10月6日閲覧。
- ^ The Military Balance 2017, p. 472.
参考文献
- 『グランドパワー10月号別冊 世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車両:1918~2000』 デルタ出版 2000年
- 田中義夫:編『戦車名鑑1946-2002現用編』(ISBN- 978-4877199272)光栄 2002年
- デービッド・C・イスビー著、林憲三訳『ソ連地上軍 兵器と戦術のすべて (元題:WEAPONS AND TACTICS OF THE SOVIET ARMY)』原書房、1987年。ISBN 4-562-01841-0。
関連項目
- 装甲兵員輸送車
- 砲兵トラクター
- 装軌装甲車一覧
- PT-76
- BTR-50
- MT-LBu - 本車の車体を拡大、強力なエンジンを採用した発展型
- 本車をベースにした派生車両
- 9K35 ストレラ-10 (SA-13 ゴファー) - 近距離防空ミサイルシステムの発射機車両
- 2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲
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