男性俳優シーンの一線を走る神木隆之介が、2024年10月20日からTBS系にて放送される日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」で主演を務める。現在31歳にして、来年には芸歴30周年を迎える “若きベテラン”である神木。ヒット作を多数生み出してきた実績がある中、どのような姿勢で演技に向き合っているのか。
※日経トレンディ2024年11月号より。写真の全カットを含め、詳しくは本誌に掲載しています
2023年は、NHK連続テレビ小説「らんまん」や映画『ゴジラ−1・0』と主演作が相次いでヒット。男性俳優シーンの一線を走る神木隆之介が、10月20日からTBS系にて放送される日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」で主演を務める。日曜劇場といえば、「半沢直樹」「VIVANT」など高視聴率作品を生み続けるヒット枠。さらに、本作は、「アンナチュラル」や「MIU404」を放った、脚本・野木亜紀子、演出・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子の強力チームが制作を担当しており、ヒットが期待されている。
神木は現在31歳にして、来年には芸歴30周年を迎える “若きベテラン”であり、ヒット作を多数生み出してきた実績も伴う。だが、本作の制作発表時には「お話を頂いたときは、自分では実力不足なんじゃないかと思いました」と語った。
──新井順子プロデューサーが、「主人公は神木さんがいいと満場一致だった」とコメントしていましたね。
神木隆之介(以下、神木) お話を頂き、すごくうれしい気持ちとプレッシャーもありました。今回はオリジナルの脚本ということで、話がどのように進むか分からないという状況でしたし、やはり日曜劇場というイメージですよね。日曜劇場は「集団左遷!!」(19年)、さらに昔は「あいくるしい」(05年)にも出させていただいていますが、「集団左遷!!」では大先輩の福山雅治さんが真ん中に立って、みんなを引っ張っていく姿を見ています。(日曜劇場の主役は)役者として、アーティストとして、表現者として培ったものがある方が背負うぐらい、重いものだって思っていました。まさかこの31という年で、お話が来ると思ってなかったので、正直不安というか、ちょっと弱気なところもあったんです。
「失敗できない」と思うときも
──プレッシャーを感じたとき、神木さんは、乗り越えるためにどのようにしていますか?
神木 乗り越え方って色々な方法があると思うんですよ、例えば、一つの手としては、自分が不安に思っていることを一つずつできるだけ潰していく。それが「これだったら勝算があるかもしれない」という、自分が1歩前に進むための後押しの材料になるし、そうした努力をすることが大事なのかなって。
今回もお話を頂いた後、野木さん、塚原さん、新井さんにお会いして、その時点のプロットでの疑問点だったり、自分が思っていることだったりを伝えさせていただいたところ、すごく親身にすべて答えていただけたんです。そして、話をしているときのお三方の目が自信に満ちあふれていたのが印象的だったんですよ。「僕はこの方たちについていけばいいんだな」って思えたので、「では、参加させていただきます」というお返事になりました。
ただ、今のご時世、失敗を許してくれないじゃないですか、結構。会社に勤めてらっしゃる方も「大きなプロジェクトを任された。失敗できない」と押しつぶされそうになってしまうこともあると思うんですよ。僕もそうで。「らんまん」のときも、『ゴジラ−1・0』のときも「失敗できない」と思っていたんですよね。
でも、過去の発明家や偉人たちの言葉にも、「失敗がなければ成功もない」「失敗が大事」というものが多いじゃないですか。本来そうだと思うので、今のこういう環境はあまり良くないのかなっていうのはすごく思いますね。
──神木さんは打ち勝って、結果を残してきた印象があります。
神木 どうせなら、もうぶちかましてやろうっていうか(笑)。僕のパターンで言うと、大人になってそういう責任みたいなものを感じて、それがプレッシャーになって身動きができないっていうふうになってきているんですけど、学生の頃を思い出してみると、自分は無敵状態だったんですよね。何も怖くない、何でもできるっていう。勢いそのままの流れで突っ走って、やってみて失敗したら「ごめんなさい。できなかったです」っていう感じだったんですね。もちろん責任が問われてないっていうのが大きいと思うんですけど。そのマインドは、僕の中で今もすごく大事にしているんです。
今回も「日曜劇場」という大きな看板、諸先輩方が作ってきた看板で、ある意味、失敗ができないっていう部分もある。でも、そんなことはもう言っていられない。怖がっていちゃいけない。どうせやるなら思い切り、やりたいことを後悔なくやって、それでダメならもう仕方ないっていう、腹のくくり方をしないとダメかな。そうじゃないと楽しめないかなって思いますね。
──キャリアを積むと、プライドが生まれて、人に相談できないという人もいると思います。でも、神木さんは実力のある方に頼っていくという感じなんですね。
神木 そうですね。それこそ、この現場に限らず、後輩にも相談することもありますし、相談した方がいい。何年勤めているからとか、何年やっているからというプライドって多分一番なくていいものだと思っているんです。
今は激動というか、色々なことがとんでもなく激しく進んでいってしまう時代です。その中では、やっぱりいろんな人の意見や思い、話を聞いて、いろんな情報を取り入れていかないと多分通用していかなくなっちゃうので。もちろん、どの業界でも、そして会社でも先輩・後輩という関係はあると思います。でも、後輩には弱音を吐けないとか、上司だから気を使ってしまうじゃなくて、1つのチームとして、仲間として、相談をすることにプライドは要らないんじゃないかなと。それは一番ネックだし、邪魔になる。もちろん仕事に対してのプライドは持っていいし、僕も持っています。だけど見えですね、見えのプライドは要らないと思います。
本格的な一人二役に初挑戦
「海に眠るダイヤモンド」は、戦後復興期から石炭産業で躍進した、“軍艦島”の名称でも知られる長崎県・端島と、現代の東京という2つの時代を舞台に物語が進む。神木は、生まれ育った端島のために働きたいとの思いを持つ明るく真っすぐな性格の鉄平、そして現代パートではホストの玲央という二役を演じる。
──2つの時代を描く本作は、どのような作品になりそうですか?
端島をここまで本格的にドラマで描くのは初めて。今は“軍艦島”と認識されていますけど、僕も今回の件で、端島という名前を初めて知りました。このドラマを通して、当時の生き生きとした端島でどんな人間ドラマが生まれていたか、そして時代とともにどんなふうに駆け抜けていったかを見ていただけたらなと思います。また、パートが変わり、現代の方でも見どころもいっぱいあります。同時並行で楽しんでいただけたらうれしいです。
──これまで一人二役を務める作品はありましたか?
神木 今まで一人二役はないと思います。あっても、ちょっと別の役をワンシーンで演じたくらいで、ここまで同時並行してっていうのはなかったかなと。
特に、端島パートは難しいなと思います。端島は人口が最盛期で5000人ぐらいの島。高度経済成長期、そして限定された空間の中での人間関係って、すごく特殊なものもいっぱいあったと思うんです。その島ならではの悩み、はたまた喜び、安心みたいなものを理解するのはやっぱり最初はすごく難しかったです。
ただ、野木さんや塚原さんたちからは、僕が演じる鉄平はいかに端島を良くしていきたいかを軸に動く人間なので、複雑に悩むというよりは、基本的には前向きに元気なキャラでいてほしいと。(「ONE PIECE」の)ルフィみたいな人がイメージって言われましたね。
玲央の方は、無気力、無感動、無関心の男。自分の将来のことも考えてないし、「このままでいいのかな」っていう葛藤はもちろんあるけれども、それも考えるのすらめんどくさい人間だと言われまして。
──ご自身はどちら寄りですか?
神木 テンションが上がるとルフィっぽいですけどね。ただ、家で引きこもっていると、本当に堕落した生活になりますからね。しばらく休みが続くと朝6時とかに寝るようになっちゃうんで(笑)。基本、鉄平ですけど、チラチラ玲央が見える感じです。どちらも分かるので、両面を持っていたのはよかったですね。
スタイリスト/吉本知嗣 ヘアメイク/MIZUHO(Vitamins)
(写真/中村 嘉昭)
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