テクノロジーの進化は、「推し活」の多様化を後押ししている。XRに力を入れる企業も多く、個々人が「推し」を身近に感じられる生活を送れる未来が迫っている。モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を提供するINFORICHは、デジタルサイネージにファン個人が推しの応援広告を掲出できるサービス「CheerSPOT」を発表。推し活を支援するサービスが続々と生まれている。日経クロストレンドの特集「未来の市場をつくる100社【2025年版】」の特別編として、「推し」消費のトレンドを予想する。
「推し」を応援する行動を意味する「推し活」は、一般的に推しが出ている作品を鑑賞すること、推しのグッズを購入すること、推しへの思いをSNSで発信することなどを指す。
近年は推し活をテクノロジーが後押しし、推し活の幅が広がっている。2025年にも「推し活テック」の進化は止まらないだろう。
24年には、韓国の男性グループTOMORROW X TOGETHER(トゥモロー・バイ・トゥギャザー)が、日本の5都市を含む世界全11都市の映画館を巡る「VR(仮想現実)コンサートツアー」(興行はHYBE JAPAN、制作は米AmazeVR)を開催したことがK-POPファンの間で話題になった。
映画館の席に一人一人VRヘッドセットを装着して着席し、バーチャル空間上で、思い思いの角度から推しの姿を至近距離で堪能するファンの姿を想像すると、今はまだ違和感を覚える人もいるかもしれない。ただ、同時に、テクノロジーの進化が新たな推し活の形を生むことを実感できるだろう。
推しを視覚と聴覚で身近に感じる
日経クロストレンドの特集「未来の市場をつくる100社【2025年版】」では、推しを身近に感じられる未来を見据えたテクノロジーを開発するGATARI(ガタリ、東京・千代田)とGatebox(ゲートボックス、東京・千代田)を紹介。
推しの声優の音声で展開される物語にMR(複合現実)で没入したり、推しのキャラクターとAI(人工知能)を活用して対話したりして、現実世界にデジタルを溶け込ませるテクノロジーが進化している。
▼関連記事 「推し」が生活に溶け込む究極の体験 音声MRとAI対話で現実的にそのようなテクノロジーを開発している企業で、他にも注目したいのは、米ウォルト・ディズニー・カンパニーなどから出資を受け、AR(拡張現実)やVR、MRを総合したXR(クロスリアリティー)体験を開発・提供しているティフォン(東京・品川)だ。
24年9月からグラングリーン大阪(大阪市北区)内のうめきた公園で開始した空間エンターテインメントプロジェクト「MIRRORGE OSAKA(ミラージュ大阪)」のうち、第1弾の「Enchantry(エンチャントリー)」では、米Appleのゴーグル型の空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」を装着した体験者が、現実のうめきた公園の空間を魔法の世界に変化させる物語を体験できる。
これらのテクノロジーがさらに手軽に体験できるものになれば、個々人が「推し」を身近に感じる生活が実現し、推し活が新たな段階に突入するはずだ。
ChargeSPOTのサイネージに応援広告が登場
未来ではなく、今まさに芽吹き始めている注目の“推し活テック”がある。それが、デジタルサイネージを使った「応援広告」だ。
応援広告とは、ファン主体で掲出した「推し」の広告。例えば、視聴者投票型オーディション番組に出演する推しに対して投票を呼びかけるものや、推しの誕生日や記念日を祝うもの、推しが地方に訪れたのを歓迎するものなどがある。
これまでは、ジェイアール東日本企画(東京・渋谷)やJR東日本などがポスターの応援広告をけん引してきた。
▼関連記事 JR東日本が「応援広告」を強化 自社アセットと“推し活”に親和性その応援広告市場に24年12月からデジタルサイネージで参入する予定なのが、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT(チャージスポット)」の展開で知られるINFORICH(インフォリッチ)だ。
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