瞬時に緊張感を与える「緊急地震速報」、臭さで危険を伝える「都市ガス」、苦さで誤飲を防ぐ玩具――。「不快」を効果的にデザインすることで世の中の役に立っているコトやモノを紹介する企画展「世の中を良くする不快のデザイン展」が2023年3月24日にスタート。同年4月23日まで、日本デザイン振興会が運営するデザインのコミュニケーションスペース「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)で開催されている。1週間で2300人超、20代から70代まで幅広い世代が来場しているという。
「一般的に良いデザインは『使いやすく、分かりやすいこと』『見た目が美しく、洗練されているもの』『誰もが幸せになるもの』といった“快”が求められ、“不快”は不要なものとして捉えられがち。しかし、世の中のあらゆる不快を取り除いた先に、本当に快い社会があるのか。例えば、公園はさまざまな人たちが自由に使える憩いの場だったが、さまざまなことを禁止してきた結果、皆にとって使いづらいものになっている状況もある。不快の必要性や重要性を問いかけてみたかった」と、同展を企画・制作した電通クリエーティブXクリエーティブディレクターの中沢俊氏は語る。
同展のユニークな点は、心理効果などから不快とデザインの関係を解き明かしていること。例えば、緊急地震速報は人間の聴覚が注意を向けやすいように上昇する音で構成されていたり、本来無臭の天然ガスに臭いを付けた都市ガスは不快な刺激ほど動物が敏感になる習性を利用していたり、誤飲を防ぐ玩具は子どもの味覚が敏感なことを活用していたり、踏切の黄色と黒は動物が本能的に警戒する警告色、といった具合だ。
不快が新たな価値を生み出す
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