京都市の宿泊税、最高1万円に引き上げへ 税収2倍以上
京都市は14日、宿泊者に1泊当たり200〜1000円を課している宿泊税の最高額を1万円に引き上げる方針を発表した。実現すれば定額制では全国で最高額となる。宿泊税収は現行の倍以上の約126億円になる見通しで、交通インフラの整備といったオーバーツーリズム(観光公害)対策などを充実させる考えだ。
条例改正案を2月の市議会に提出する。可決されれば総務相の同意などを経て2026年3月1日の適用を目指す。
現在、京都市は宿泊料金によって税額を3段階に分け、1人当たり1泊2万円未満は200円、2万〜5万円未満は500円、5万円以上は1000円としている。
改正案では5区分とし、1泊6000円未満は200円、6000〜2万円未満は400円、2万〜5万円未満は1000円、5万〜10万円未満は4000円、10万円以上は1万円とする。
京都市の23年度の宿泊税収は52億円と、18年の導入以降で最高額だった。無電柱化や京町家保全などの景観美化、観光地のゴミの回収などに充てているが、日帰り客も含め年間5028万人が押し寄せ、バスの混雑や交通渋滞の改善などオーバーツーリズム対策の拡充が急務となっている。
税額を引き上げると税収は現行の2.4倍の約126億円となる見込みだ。松井孝治市長は14日の記者会見で「観光客を受け入れることで日々の市民生活が良くなっているということを実感してもらいたい」と強調。使途を観光振興に限らず、道路や橋といったインフラ整備や災害対策など市民にも便益の大きい事業に広げる考えを示した。
宿泊業界の一部からは「特に(価格に敏感な)日本人の旅行控えにつながらないか」などと懸念する声もあるが、客足への影響は限定的との見方が多い。京都府旅館ホテル生活衛生同業組合の北原茂樹相談役(旅館こうろ会長)は「業界をあげて反対するような大きなうねりにはなっていない」と話す。
観光専門のシンクタンクである日本交通公社の山田雄一理事は「海外をみても宿泊税の引き上げで観光客が減った事例はほぼない」と語る。宿泊料金自体が需要によって大きく変動するためだ。
京都市観光協会によると、京都市の24年11月の平均客室単価は2万8686円で前年同月より4000円ほど上昇した。物価高や外国人観光客の増加で上昇傾向が続いており、宿泊税引き上げによる影響が目立ちにくい状況にある。
10万円以上の宿泊料金を払う旅行者は、税額1万円を課されても「誤差の範囲で気にしないのでは」(山田氏)との見方もある。現在、京都には1泊10万円以上の部屋が2000〜3000室あるとみられる。
総務省によると1月時点で、東京都や福岡市など全国11自治体が導入している。北海道倶知安町が宿泊料金に対して2%の定率税を課しているほか、定額制では北海道ニセコ町の1泊2000円(1泊10万円以上)が最高額となっている。
全国では宿泊税の導入や引き上げが相次ぐ。今月6日から愛知県常滑市で徴収が始まり、4月から静岡県熱海市も導入する。大阪府は25年後半にも現行税額から最大200円を引き上げる。北海道や沖縄県は26年度の導入を目指して準備を進める。
(足立佑太)
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