萩原朔太郎『品川沖観艦式』東京湾奥にかすむ幻影の艦隊
萩原朔太郎『品川沖観艦式』東京湾奥にかすむ幻影の艦隊
低き灰色の空の下に軍艦の列は横はれり。
「品川沖観艦式」は萩原朔太郎晩年の詩集である「氷島」に掲載された。暗く陰鬱な空の下、灰色の軍艦の群れが錨(いかり)を下ろしている。式はすでに終わったのだろうか、観衆の姿もまばらである――。
観艦式とは軍艦を並べて海軍の精強さをアピールする、いわば海の上の軍事パレードだ。戦勝など国家的慶事を記念して開かれることもあり、戦前の帝国海軍においては最高司令官である…