クマムシは体長が0.1~1.0ミリ程度の、4対の肢をもつ小さな無脊椎動物である。クマムシは、肉眼でかろうじて小さな粒として認識される程度の大きさだ。この「クマムシ」という名は、歩く様子がクマのように見えところに由来する。もともと英語では水の中の熊という意味でwater bearとよばれていたので、その和訳がクマムシになったわけだ。クマムシはその名に「ムシ」という語を含むが、昆虫ではなく、緩歩(かんぽ)動物とよばれる分類グループに入る。日本人は小さくもぞもぞした動物を虫とよぶ習性があるので、クマムシと名付けたのだろう。 私が実物のクマムシをはじめて見たのは、大学学部4年生のときだ。当時所属していた研究室のOBが、つかまえてきたクマムシを顕微鏡で見せてくれたのだ。スライドガラスの上に乗せられた、ぶよぶよとまるっこい体によちよちと肢をばたつかせた姿に、愛着がわいた。クマムシは基本的に水生生物であ