東日本大震災の津波で太平洋に流れた漂流物に付着し、289種の生物が生きたまま日本から北米西海岸やハワイにたどり着いていたと、米オレゴン州立大学などの研究チームが29日付の米科学誌サイエンスに発表した。自然に分解されないプラスチックなどの漂流物に付着することで、長距離移動が可能になったと分析している。 研究チームは2012~17年、北米大陸西海岸やハワイに漂着した船舶やブイなどの634品を調べ、貝類やヒトデ類、イソガニ、イシダイなど日本の生物289種を確認した。
今年のノーベル医学生理学賞に決まった大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)。ほかの研究者が見向きもしなかった細胞内の「ごみため」を追究し、根源的な生命現象を解き明かした。 「研究を始めた時に、がんや寿命の問題につながると確信していたわけではなかった」。大隅さんは受賞決定後の会見で振り返った。 1988年6月。東京大教養学部の助教授になって2カ月余り。できたばかりで学生がいない研究室で、ひとり顕微鏡越しに酵母を見ていた。たくさんの小さな粒が踊るように跳びはねていた。 「何かすごい現象が起きているに違いない」。細胞が不要なたんぱく質を分解して再利用する「オートファジー」にかかわる現象ではないか。大隅さんが気づいた瞬間だった。 その12年前の76年。免疫の研究でノーベル医学生理学賞を受賞した米ロックフェラー大のジェラルド・エーデルマン博士の下で学んでいた。そこで酵母の遺伝子研究と出会った。 翌年、
スウェーデンのカロリンスカ医科大は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)に贈ると発表した。業績は「オートファジー(自食作用)の仕組みの発見」。 オートファジーとは、細胞内の一部を分解してリサイクルする仕組みで、主に外部から十分な栄養をとれないときに起こる。細胞内をきれいにする浄化作用や、病原菌を分解する免疫などの役割も担っていることが分かってきた。酵母のような単細胞生物から哺乳類まですべての真核生物がオートファジーの機能を持っている。 オートファジーはまず細胞内に膜が現れることで始まる。その膜がたんぱく質やミトコンドリアなどの小器官を取り囲み、分解酵素を含んでいる別の小器官「リソソーム」と融合する。すると、取り囲まれたたんぱく質は分解されてアミノ酸となり、栄養素として再利用される。 ■いちからわかる「オートファジ…
大隅良典(おおすみ よしのり)/東京工業大学科学技術創成研究院栄誉教授。理学博士。1945年福岡県生まれ。東京大学農学部農芸化学科にて博士(理学)取得。東京大学理学部講師、同教養学部助教授を経て、1996年岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所教授、2009年東京工業大学統合研究員特任教授。14年同大学栄誉教授。2012年京都賞、2015年国際生物学賞など受賞多数。2016年ノーベル生理学・医学賞受賞(撮影:尾形文繁) 10月3日、2016年ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大学栄誉教授。受賞理由は、細胞内部の自食作用、オートファジーのメカニズムの解明だ。ノーベル賞予想で著名なトムソン・ロイターの引用栄誉賞も2013年に受賞するなど、大隅栄誉教授のノーベル賞受賞の呼び声は以前から高かった。 オートとは自分、ファジーは食べるという意味 オートファジーはここ数年、生命科学分
産業技術総合研究所(産総研)は、富山大学との共同により、昆虫の生存に必須の「細胞内共生細菌」が母虫の体内で初期胚へ伝達される瞬間を画像としてとらえることに成功し、宿主昆虫が細胞の分泌・物質取り込み機能を利用して必須共生細菌を選択的に次世代へ伝える仕組みを明らかにしたと発表した。 成果は、産総研 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループの古賀隆一主任研究員、深津武馬研究グループ長、富山大学 先端ライフサイエンス拠点の土田努特命助教らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、「米科学アカデミー紀要(The Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)」電子版に日本時間4月20日、雑誌版は5月15日号に掲載された。 昆虫類は高度な生物機能を持つ細菌と共生する
昔からネコは、幸運や商売繁盛を呼び込む「福ネコ」としてかわいがられ、魔除けや疫病払いの効果があるとされてきた。一方で、「妊婦がネコを触ると流産する」とする警告もある。ほとんどは、ペットの癒し効果とか、迷信として片付けられてきた。しかし、この2~3年、欧米の研究者からネコのもつ不思議な力の源泉が、病原体の原虫にあるのでは、とする説が提唱されるようになった。 行動を変えるドーパミン仮説 まずこの仮説のさわりを紹介しよう。動物に寄生する微生物の一種にトキソプラズマという原虫がいる。人をはじめさまざまな動物に寄生するが、最終的にはネコ科の動物が宿主になる。むろん、飼いネコも宿主になり得る。 健康なネズミはネコの尿の臭いには敏感で、ネコの出没する場所は避けて行動する。天敵のネコに食べられないような回避行動を身につけたのだ。ところが、ネコのフンを食べることなどでトキソプラズマに感染したネズミは、行動が
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方) 出典検索?: "芽胞" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL (2024年1月) 枯草菌の芽胞(芽胞染色法により染色されたもの。菌体緑色の部分が芽胞) 芽胞(がほう、spore)とは、一部の細菌が形づくる、極めて耐久性の高い細胞構造。胞子膜、皮層、芯部からなり、胞子膜の外側に外皮を持つものもある。芯部には、DNA、リボソーム、酵素、低分子化合物などが含まれており、半結晶状態になっている。以前は、(細菌の)胞子(ほうし、spore)、内生胞子(ないせいほうし、endospore)とも呼ばれていたが、真菌やシダ植物の胞子とは役割が異なるため、それら
プランクトンから高濃度セシウム 10月15日 4時54分 ことし7月に福島県いわき市の沿岸で採取したプランクトンから、放射性セシウムが高い濃度で検出され、調査を行った東京海洋大学の研究グループは、食物連鎖によって、今後、スズキなど大型の魚で影響が本格化するおそれがあると指摘しています。 東京海洋大学の研究グループは、東京電力福島第一原子力発電所から流れ出た放射性物質の影響を調べるため、ことし7月、いわき市の沿岸から沖合およそ60キロまでを調査船で航海し、プランクトンなどを採取しました。このうち、沿岸3キロ付近で採取した動物性プランクトンを分析した結果、放射性セシウムが1キログラム当たり669ベクレルの高い濃度で検出されました。半減期が2年のセシウム134が含まれることから、原発から流れ出た放射性物質がプランクトンに蓄積したものとみられています。動物性プランクトンは、さまざまな魚の餌になるこ
生物の細胞のように、増殖しながら遺伝子を複製する現象を部分的に再現した「人工細胞」を、化学物質を使って作ることに、東京大の菅原正名誉教授(物理有機化学)と栗原顕輔研究員らが成功した。単細胞生物の大腸菌の増殖と似ており、生物の起源を明らかにする手掛かりとなる成果という。英科学誌「ネイチャー・ケミストリー」(電子版)に5日、論文が掲載される。 菅原名誉教授らは、洗剤の成分である界面活性剤に似た分子と触媒を水に加えて2層の膜を作製。そこへ大腸菌由来のDNAを溶かした水を注いで、DNAを含む水を膜で囲んだ、細胞に見立てた「ベシクル」という球(直径1~10マイクロメートル、マイクロは100万分の1)を作った。 そこへ細胞の「餌」に相当する膜と同じ成分を持つ物質を投入した。すると膜に餌物質が取り込まれ、触媒によって反応し、細胞が大きくなり始めた。やがてくびれが生じ、約4分後にはくびれが餌物質の一部で切
印刷 自ら増殖する「人工細胞」1個の人工細胞=菅原正東大名誉教授提供分裂(5分後)=菅原正東大名誉教授提供さらに増えた(10分後)=菅原正東大名誉教授提供 「自ら増殖する人工細胞」の作製に、菅原正東京大名誉教授らのチームが成功した。使った原料は、簡単な有機化合物。地球に生命が誕生した謎に迫る手がかりになりそうだ。成果は5日の英科学誌ネイチャー・ケミストリー(電子版)に掲載される。 研究チームは、脂肪酸に似た有機化合物を使って、水溶液の中で自然に球状になる器を作製。ここに、DNAやDNA合成酵素などを入れ、液の温度を95度に上げ、65度に下げるという作業を繰り返した。 温度の上げ下げと合成酵素の働きで、DNAの複製ができ、20回繰り返すと約100万倍に増えた。 DNAが増えた段階で膜の材料の有機化合物を加えると、DNAの一部が内壁にくっつき、そこが活性化されて球状に膨れた。膨れた膜は
昨年の9月、非食用事故米が食用に転売されていた事件が大きく報道されました。その中で輸入米が非食用となった原因のひとつに「アフラトキシン」の検出がありました。カビが作るアフラトキシンとは、いったいどういうものでしょうか。 1.アフラトキシンの発見 1960年、イギリスのイングランド地方で春から夏にかけて10万羽以上の七面鳥雛が次々と斃死する事件が起こりました。当時、原因がわからなかったため、“七面鳥X病”と呼ばれましたが、その後の研究で、ブラジル産ピーナッツミールを飼料として与えたためとわかりました。ピーナッツに生えていたカビ(Aspergillusflavus)がカビ毒を作ったためで、その原因となったカビ毒は、A.flaとtoxin(毒)をあわせてアフラトキシンと名付けられました。 アフラトキシンには少なくとも16種類の化合物がありますが、毒性や毒力から重要なものは、アフラトキシンB1,
2010年12月12日 油の生産効率が従来の「10倍」の藻を発見 1リットル当たり800円→50円に 従来の10倍以上の生産効率で油を取り出すことができる藻の仲間を筑波大学の研究グループが新たに発見したと発表することになり、バイオ燃料としての実用化に弾みがつくと期待されています。 筑波大学の渡邉信教授の研究グループによりますと、「オーランチオキトリウム」という藻の仲間で、沖縄県で採取されたものの中に油を大量に生成する個体が見つかったということです。これは、研究グループがこれまで研究してきた藻に比べて油の生産効率が10倍以上に当たるということです。 藻を使ったバイオ燃料の開発を巡っては、ほかの植物などに比べ生産効率が高いものの、1リットル当たり800円程度かかるため、コスト削減が課題でした。しかし、今回発見された藻の仲間を使うことで、1リットル当たり50円程度で生成できる見込みだというこ
12月4 「ヒ素生物」の衝撃 昨日は、NASAから「宇宙生物学上の発見に関する会見」が行われるということで大いに盛り上がりました。筆者も「ついにどこかで宇宙生命がとっつかまったか」と期待したのですが、実際はカリフォルニアの塩湖で見つかった新種の細菌の話でした。なんだよ期待させやがってと一瞬思ったんですが、よく聞けばやはり凄い話で、この細菌はなんと毒性元素として知られるヒ素を体内に取り込み、DNAに組み込んで生活しているというのです。これはまあ宇宙人発見とはいわないものの、どう見ても世紀の大発見としか言いようがありません。さらにいろいろ聞くにつけ、この細菌は実に「ななななんじゃこりゃ」的な代物であるようです(論文はこちら)。 問題の細菌、GFAJ-1。 GFAJ-1と名付けられたこの細菌(こんなカメラの型番みたいなのではなく、もっと素敵な名前を考えてやってほしいですが)が見つかったのはカリフ
マグロを産むサバが、次世代の漁業を作る(1) 2010年4月23日 環境サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (0) フィード環境サイエンス・テクノロジー 1/4 (これまでの 山路達也の「エコ技術者に訊く」はこちら) 「ニジマスしか産まない代理ヤマメ」。2007年、米国科学雑誌「Science」に掲載された、東京海洋大学 吉崎悟朗准教授の研究は世界の生物学者、水産科学者を驚かせた。現在、吉崎准教授が進めているのは、サバにクロマグロを産ませる研究だ。この技術は、漁業を新しいステージに進める可能性を秘めている。 ニジマスの生殖細胞をヤマメに移植する ニジマスのオスから採取した精原細胞を、オスやメスのヤマメ稚魚に移植する。 ──サバにクロマグロを生ませる研究をされているそうですね。どういう目的でこの研究を始めたのでしょうか? 僕らの技術は、絶滅危惧種を守るためのセーフティネット
ヒトの皮膚や骨髄に、iPS細胞(新型万能細胞)のように色々な種類の細胞に変化できる能力を持つ細胞が微量に含まれていることを、東北大学の出澤真理教授らが突き止めた。 大量に増やすのは難しいが、この細胞はiPS細胞と異なりがん化しにくく、安全な再生医療に役立つ可能性があるという。20日の米科学アカデミー紀要に発表する。 出澤教授らは、誤って細胞を溶かす酵素を加えても生き残ったヒトの皮膚細胞の中に、iPS細胞とよく似た細胞を発見した。この細胞を拒絶反応の出にくいマウスに移植すると、皮膚や筋肉、肝臓など様々な細胞に変化した。細胞表面には、iPS細胞と同じ目印物質(糖鎖)が付着。これを目印にすると、骨髄の細胞(単核球)約5000個に1個の割合で含まれていることがわかった。ただ培養しても約2週間で増殖は止まってしまう。
寒天の原料のテングサやノリなどの海藻(紅藻類)は人間の消化酵素で分解できないため、ダイエット食品としても使われているが、日本人の一部は腸内細菌の力を借りて、紅藻類を分解して栄養分にしていることが仏パリ大学の研究で分かった。北米では、こうした腸内細菌を持っている人は見つからず、食習慣の違いが影響しているらしい。8日付の英科学誌ネイチャーに発表する。 研究チームは、紅藻類を分解する酵素を海洋の微生物から発見。公開されている遺伝子のデータベースを調べたところ、この酵素の遺伝子を持つ陸上の微生物はいなかったが、日本人の腸内細菌から見つかった。 日本人では13人中5人がこうした腸内細菌を持っていたが、北米の18人で持っている人はいなかった。日本人は古くからノリなどをよく食べており、腸内細菌は、ノリなどと一緒に口に入った微生物から紅藻類を分解する遺伝子を取り込んだらしい。 東京大学の服部正平教授(情報
京都で開かれた日本生態学会全国常任委員会に出て、福岡に戻る新幹線車中である。会議後の夕食の席で、これからは土壌生態系が面白いという話をしたら、賛同者が多くて、議論がはずんだ。そこで、今夜は土の話題を書いておこう。 土壌中には、膨大な量の炭素のストックがある。陸上生態系に蓄積されている炭素のうち、植物体に含まれるのは約4分の1であり、残る4分の3は土壌中にあると推定されている。この数字を知ったとき、なぜ炭素源が菌類やバクテリアの活動によってすみやかに分解されないのか、不思議に思った。大部分の炭素源は寒い地域の土壌にあり、湿潤熱帯では少ないのだろうと、最初は考えた。しかし、熱帯雨林の土壌には、全地球の土壌中炭素の約2割が蓄えられているそうだ。温度や水が不足しているために分解が進まないという考えでは、説明がつかない現象である。 ふと、宮崎県で見たキリノミタケ感染木を思い出した。キリノミタケが感染
2010年02月16日 06:25 カテゴリサイエンス最前線〜医薬 薬剤耐性獲得のメカニズム Posted by science_q No Comments No Trackbacks Tweet 薬剤耐性というの は、ご存知の方も多いと思いますが、一般的には、細菌の生育を抑制する抗生物質に対して、細菌が耐性を獲得し、その薬が効かなくなる現象のことです。実 際、抗生物質を多用する医療現場では、いくつもの抗生物質に対し、この薬剤耐性を獲得した多剤耐性菌が問題となっています。 薬剤耐性のメカニズムというのは、実はほとんどの場合で明らかになっています。というのも、抗生物質自体がピンポイントで、細菌の生育に必要な生合成経路のどこかを狙い撃ちするため、その攻撃対象が分かっている場合は、なぜそれが効かなくなったかを明らかにすることは、それほど難しいことではないからです。逆に攻撃対象が不明なときは、わざ
植物の光合成は吸収する光エネルギーの高低にかかわらず同じ効率であることを、京都大学大学院人間・環境学研究科の三室守教授(植物生理学)らの研究チームが突き止め、9日付(日本時間)の米科学誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載された。 研究チームは、目に見える太陽光線だけでなく、見えなくてエネルギーの低い赤外線でも同じ効率で光合成できることを証明。今後、低電力を使った食糧生産の研究にも役立ちそうだ。 研究チームは、光合成をつかさどる葉緑体の元といわれるバクテリアの一種「アカリオクロリス」が、赤外線で光合成を行い、一般の植物などに比べると吸収する光エネルギーが少ないことに着目。アカリオクロリスと他の植物を比較して、光合成の際に酸素を生み出す量を観察した。 その結果、植物内で水を分解して酸素を生み出す働きがある電位「酸化還元電位」の値が変わらないことを発見。エネルギーが低くても酸素を生み出
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