著: 岡田 育 四ツ谷駅前。左奥が上智大学の建物と、同じ敷地内にある聖イグナチオ教会の尖塔 アメリカに転居する直前、2013年から2015年まで、私は四谷に住んでいた。そう言うと、土地勘のない人たちからは「えっ、あんなとこ、住めるの!?」と驚かれる。住める住める。めっちゃ推せる。東京生活が長い人たちからは時々、「……やるねぇ」とニヤリと笑われるので、こちらもニヤリと笑い返す。やってやったぜ。 階段と怪談の多い街 麹町側や新宿通り沿いはいかにもビジネス街という雰囲気だし、電車や地下鉄で通過するだけでは、「住む」場所としてまるでピンとこないのかもしれない。しかし四谷という街は、赤坂御用地に隣接し、庭園に滝が流れる武家屋敷の敷地から東京屈指の花街となったユニークな歴史を持つ。一本奥の路地へ入るとまるで趣が変わり、無数に細かく区切られた昔ながらの町名の上、電線が低空をびょんびょん這い回る、古き佳き
