不条理こそが世界のあらまし 今回の選定では、人間とその人が置かれている状況について考えられる作品を集めました。 自分が置かれている状況とは何か。家族、友人、職場など様々ですけど、さらに広げれば、政治、社会一般ですよね。大きな環境の中で自分を捉えるための、足掛かりとなる作品を紹介したかったんです。 私にとって一番大きい作品は、『象を撃つ』ですね。ジョージ・オーウェルはディストピア小説の頂点である『1984年』などで知られていますが、『象を撃つ』は彼の出発点と言っていい作品です。 第二次世界大戦以前、イギリスが統治していたビルマ(現ミャンマー)で警察官をしていた、彼自身の当時の経験が書かれています。 ある日、警察署に象が暴れているという報告があって、その現場へ行く。辿り着くと、もう象は暴れていなかった。だから象を撃つ必要はないんですが、集まったビルマ人の群衆が、撃つのを期待している。それに抗す