ジャーナリストとして幅広い分野で執筆し、『田中角栄研究 全記録』『宇宙からの帰還』『臨死体験』など、数々の名著を世に送り出した立花隆氏が亡くなって2年が過ぎた。科学技術やメディア論など立花氏と重なる領域でジャーナリスト・評論家として仕事をしてきた武田徹氏が、同じ道を追走する者ならではの視点で、彼の人生を掘り下げる。立花は「何を書き」「何を書かなかった」のか。両氏が共通して強い影響を受けた言語哲学者・ウィトゲンシュタインを導きの糸として立花氏の思考をたどる――。 立花を遠ざけてきた 生前の立花隆と会ったことは二回しかない。そう書くと意外に感じる人もいるかもしれない。 おまえは先端科学技術関係の紹介ものやジャーナリズム論など、立花と執筆領域が近かったではないか。だから、直接、教えを請うたこともあったのではないか。少なくとも会う機会は様々にあったのではないか、そう思う人もいるだろうか。 現実はそ