私たちの知る日本の経済社会はいつ頃に形成され,経済成長はいつ頃に加速し始めたのだろうか.あるいは,長期雇用慣行はいつ生まれ,定着し,衰退に転じたのか.平安時代の分権的な荘園制経済は,中世を通じて変質し,やがて,武士が率いる幕藩制国家が財産権を守り,財産権を手にした農民が豊かさを追求する近世日本が立ち上がる.そして近代日本の産業化がこれに続く.激動の果てにつかんだ成長の果実は,戦後の長期雇用慣行を通じて,つかの間,広く共有された. この講座は,平安時代から現在までを貫く超長期GDP推計によって成長を見渡しつつ,労働,金融,農業,鉱工業,商業・サービス業の各部門における制度変化を丁寧に振り返る.現代日本経済の強さと弱さを,その起源から語る大人のために,信頼に足る道しるべを. 編集 深尾京司 1956年生まれ. 一橋大学経済研究所教授 (現代1・現代2担当) 中村尚史 1966年生まれ. 東京大