子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫) 作者: チェーホフ,松下裕出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/09/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (11件) を見る チェーホフは、社会問題に深い関心のあった作家だと言われており、実際その通りだろうと思うが、中篇『曠野』を読んでいて分かることは、彼にとっての「自然」と「社会」とが、ある意味で分離できないものだったということだ。 この作品では、ロシア南部の広大な「曠野」の光景が、これから未知の世界に投げ出されて生きることになる少年のまなざしを借りて描かれるのだが、この「曠野」とはまさしく少年の眼前に広がるであろう世界そのもの、生そのものであり、したがってある深い意味での「社会」そのものだとも言える。 実際、この「曠野」は、そのような過酷な力の場としても描かれている。 また、そこは人間と動物とか、現実