静かな日常の中で記憶を愛おしみ、景色を眺め、愛すべき人々との会話を楽しむ。そして生きる仲間としてネコを慈しむ小説家・保坂和志。 いつも「ご機嫌」な保坂氏に、ご機嫌な日々はどこから生まれるのか、そもそもご機嫌の正体とは何なのか、じっくり話を聞いた。(取材・文/大谷道子) ――最新刊の『地鳴き、小鳥みたいな』は、創作とエッセイの垣根を越えた、広々と豊かな短篇小説集。読んでいてしみじみと幸福を感じるのは、やはり書いているご本人が楽しんでいるからではないか、と思ったのですが……。 えっとね、楽しいんですよ。でも、楽しいというよりも「何かしている」という、一種の充実感かな。 年を取ると、気がつくと何もしていない時間が多くて……。以前はだいたい午前1時頃に寝ていたんだけど、今は家の猫の病気のこととかいろいろあって、4時くらいになる。2時を過ぎると翌朝早起きできなくなるから、それまでには寝ようと