もし、重さや長さの単位が地域でバラバラのままだったら、どんな世界になっていただろう。その昔、国によって寸法に差があった時代、隣国の船大工が協力して造った木造船を海に浮かべたらバラバラになってしまったという笑えない話もある。 フランスで生まれたメートル法を世界に普及させようと、1875年に世界17ヵ国で締結された「メートル条約」は、そんな悲劇を繰り返さないための先人たちの知恵だった。国の利益ではなく、世界の理解を得るため、基準となる「ものさし」は、すべての人にとって受け入れられる自然のものからとることにした。長さは、赤道から北極点までの子午線の距離を測量し、その1000万分の1を1メートルと決め、ものさしを作った。質量は、水1リットルを1キログラムとする。そしてその1キログラムを、実用的な白金の分銅に置き換えた。 1889年、質量のより変化しにくいものを造るために、当時最高の冶金技術で造った