タグ

ブックマーク / magazine-k.jp (51)

  • アイヒマンであってはならない

    今月のエディターズノートを書くのはとても気が重かった。題材は早くから決めていた。永江朗さんが『私は屋が好きでした――あふれるヘイト、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)というを出したことを知り、すぐにこれを取り上げようと考え、すでに読了していた。 しかし読了後、うーむと考え込んでしまった。 このは、自身でも書店員の経験があり、専業ライターとなった後は長年にわたり全国の屋に足繁く通い続けている永江さん(私も書店の店頭で何度もお会いしたことがある)が、屋に対して「好きでした」と過去形で語らずにはいられない昨今の状況についての、渾身のルポルタージュである。 中心的な話題は「ヘイト」だ(もっとも、この言葉を使うにあたり永江さんはいくつか留保をつけている)。いわゆる「嫌韓・反中」、つまり近隣諸国に対する排外主義的な考えを明示的に、あるいは暗黙のうちに主張する出版物のことで

    アイヒマンであってはならない
    medihen
    medihen 2019/12/26
    団塊世代の後期高齢者入りによるトレンド変化はこれからが本番では。出版の隆盛を支えたあの年代の人たち、これから先は、ヘイト本すら読まなくなるだろう。
  • 小説はデータではない

    第16信(藤谷治から仲俣暁生へ) 仲俣暁生様 仲俣さんもご存知の通り、僕は今年から大学の教壇に立っています。講義の前半、春学期は7月17日に終わりました。成績をつける、という重責を除けば、やれひとまずお役御免かと思っていたところ、翌18日に京都アニメーションが放火されました。 僕は熱心なアニメファンではなく、「京アニ」の作品も殆ど観ていません。ただかつて僕の小説を映像化する企画があった時に知り合った映像作家があの会社の出身でした。その企画は立ち消えになり、その人とも会わなくなりましたが、動向はSNSなどでチェックしていました。彼は当然のことながら、今度の惨事に非常なショックを受けているようです。 もちろんそんな遠い知人がいなくても、あの悲劇は僕にも陰惨な衝撃を与えました。考えていると、頭がおかしくなってしまいそうです。 パクりやがって。小説を盗まれた。放火犯はそんなことをわめいていた、と報

    小説はデータではない
    medihen
    medihen 2019/08/20
    小説を読むことは個人的な体験なのだという点に共感。「小説はデータではない」ということを一歩進めて「小説は批評対象ではない」(批評によりデータ化されるから)というところまで行った方がいいのでは。
  • 献本の倫理

    元『ユリイカ』編集長の郡淳一郎氏が、4月22日、自身のTwitterにて「「御恵贈(投)頂き(賜り)ました」ツイートの胸糞わるさ」から始まる「はしたない」御礼ツイートを批判したことで、献という出版界の慣習に多くの関心が集まった。 郡氏によれば、この種の御礼ツイートには「わたしには、「皆の衆、俺(私)はコネがあるんだぞ、大事にされているんだぞ、偉いんだぞ」というメッセージ」しかない。つづけて、「商業出版されたは商品なのだから、それをタダでもらったと吹聴するのは、はしたないことだと、なぜわからないのか。黙ってを読むことが中抜きされていると感じる」と憤りを露わにする。 はじめに断っておけば、私は郡氏の献観、また書物観や編集観にまるで共感しない。詳しくが後述するが、私が著者として他者に献するさい、その人にもっとも期待しているのはのPRであり、賞讃でも批判でも話題になること、注目が集まる

    献本の倫理
    medihen
    medihen 2019/04/26
    "彼は献本の慣習自体は批判しておらず、それをわざわざ報告するなと書いているからだ。言い換えれば、ちゃんとステルス・マーケティングをしろ、と述べている"
  • ベストセラーから読者直販へ――ORブックスのジョン・オークス氏に聞く

    2019年1月31日、来日中のジョン・オークス氏(OR ブックス共同経営者)と、彼を長い時間をかけて取材し『ベストセラーはもういらない』というノンフィクション作品を執筆したジャーナリストの秦隆司氏を招いての講演会「生き残るための出版マネージメントとは?」が東京の日比谷図書文化館にて行われた(当日に会場で配布された「アイデアの錬金術 出版と文化」という小冊子も上記サイトから入手が可能)。 オークス氏は1961年ニューヨーク生まれ。ORブックスの創業以前にはAP通信や、サミュエル・ベケットやヘンリー・ミラーの小説の出版で知られるグローブ・プレスで働き、伝説的な文芸編集者バーニー・ロセットと出会った(当時のエピソードも『ベストセラーはもういらない』で語られている)。 1987年にはフォー・ウォールズ・エイト・ウィンドウズ(4W8W)という出版社を知人と立ち上げ、同社を売却後、2009年にコリン・

    ベストセラーから読者直販へ――ORブックスのジョン・オークス氏に聞く
    medihen
    medihen 2019/04/24
    "本の未来はたぶん、二分化していくだろう。モノとして綺麗な本と、純粋に電子版だけの本とに", "売上の源泉はいろいろなところにある。いろいろな利益の上げ方があるのが、いまの時代に出版をすることのよいところ"
  • ジャーナリスト・惠谷治さんの死と蔵書大頒布会

    引っ越したアパートの床が蔵書で埋まってしまった——というシーンから始まるエッセイ『で床は抜けるのか』をサイトに掲載したのが2012年。それ以来、蔵書をめぐるルポを書き続け、2015年には同名で書籍化、2018年には文庫化された。この連載や書籍の印象から、僕のことを“蔵書問題ライター”だと思っている方は多いかもしれない。 しかし、それは僕の一面でしかない。かつて「日」だった国や地域、日の国境の島々を回る、旅系・辺境系のライターとして僕のことを認識している読者もいるだろうし、僕自身、どちらかというと、そのように自負している。 今回の記事は、その双方の要素が入り交じっている。旅系・辺境系ライターとしての僕が最も憧れるジャーナリストの死とその蔵書の行方について記してみたい。 惠谷治さんはロシア革命を成し遂げたレーニンさながらの強面な風貌と、細かな分析による北朝鮮論評、アフリカやアフガニスタ

    ジャーナリスト・惠谷治さんの死と蔵書大頒布会
    medihen
    medihen 2018/09/04
    "蔵書って私、ネックレスみたいな気がするんです。生きてる人がネックレスの紐でその人が亡くなってその紐が取れたら真珠がバラバラと転がって散っていく。それでそのバラバラになったものは追えません"
  • 出版業界は沈みゆく泥舟なのか

    まるで沈みゆく泥舟のようではないか、と思う。日の出版業界のことだ。 このコラムは毎月、基的に月初に公開することにしている。毎月更新される小田光雄氏の「出版状況クロニクル」や、ジュンク堂書店の福嶋聡氏の「屋とコンピュータ」といったコラムを意識しつつ書いているのだが、これまではできるだけポジティブな話題を見つけるようにしてきた。でも今月はどうしても筆が進まず、公開が週をまたいでしまった。いまだに何を書いてよいやら、という諦めのような境地にさえなっている。 「文字もの」電子書籍は未だに紙の4% そうした思いを抱いた理由の一つは、先月に相次いで公開された出版市場統計である。 まず、インプレス総合研究所から2017年の日電子書籍と電子雑誌の市場規模が発表された。同研究所の調査によると、昨年の電子書籍市場規模は前年比13.4%増の2241億円、電子雑誌市場規模は前年比4.3%増の315億円。

    出版業界は沈みゆく泥舟なのか
    medihen
    medihen 2018/08/06
    分析を見たことが無いけど、市場規模(読者人口)に比べ、出版点数が多すぎるという問題もあるのでは。
  • マクルーハンというメッセージ

    マーシャル・マクルーハンという名前を聞いてハッとするのは、いまではもう中高年のメディア関係者だけかもしれない。1960年代には彼の唱えた「メディアはメッセージ」などの言葉が世界中に流布して一大ブームが起き、ニュートンやダーウィン、アインシュタインなどと並び称され、ジョン・レノンも面会に訪れ、ウディ・アレンの映画にも登場し、フランスでは「マクルーハニズム」(mcLuhanisme)という新語が創られるという事態にまでなり、日でも評論家の竹村健一氏が紹介して世間を大いに騒がせたものだが、どういうわけか数年で表舞台から消え、1980年の大晦日に亡くなった際にはほとんど報道されなかった。 ところが昨年の7月21日に突然、グーグルが記念日を祝うロゴ(ドゥードル)で、マクルーハンの106歳の誕生日を祝うという名目で、彼の顔や理論を説明するアイコンに変わった。するとネット上で「マクルーハンって誰?」と

    マクルーハンというメッセージ
    medihen
    medihen 2018/06/29
    "敢えて最近のネット状況も踏まえて、マクルーハンを再度論じてみようと、最近『マクルーハンはメッセージ』という本を上梓した"
  • ロジスティックス革命と1940年体制の終わり

    「マガジン航」のエディターズ・ノートは毎月1日に公開することにしているのだが、今月はどうしても考えがまとまらないまま最初の週末を越えてしまった。理由はほかでもない、出版物流の限界がはっきりと露呈してきたからであり、それを前提とした出版産業の未来をポジティブに考えることが難しいと思えたからである。 取次自身が認めたシステム崩壊 出版関係者の多くが読んでいると思われる二つのネット連載が、この問題に触れている。まず小田光雄氏の「出版状況クロニクル」は6月1日の記事(第121回)で「新文化」(4月26日付)や「文化通信」(5月21日付)などが伝えた大手取次のトーハン、日販の経営者の生々しい発言を紹介している。 「出版業界は未曽有の事態が起こりつつある」(トーハン・藤井武彦社長) 「取次業は崩壊の危機にある」(日販・平林彰社長) こうした大仰な発言の背景にあるのは、取次という出版流通ビジネスの屋台骨

    ロジスティックス革命と1940年体制の終わり
    medihen
    medihen 2018/06/04
    そろそろ、ポストアポカリプス後の読書について考えるべき頃なのかも。
  • 第7回 「紙vs電子」はWin, Lose or Draw

    イメージ通りではなかった電子コミック時代 第1回の「出揃った電子コミックのプレイヤーたち」から連載をスタートしてまもなく一年が経つ。第1回では、コンテンツホルダーでもある出版社が格的に電子コミックに舵を切ったことでいよいよ格的な電子コミック時代が来る、ということを書いた。 たしかに電子コミック市場は右肩上がりを続けている。逆に紙の出版物は部数、金額ともに縮小に歯止めがかかっていない。予想通りといえばその通りなのだが、現状は思い描いていた電子コミック時代とは少し違っている。 肝心の「電子コミック」の未来像がよく見えてこないのだ。原因は三つある。 一つ目は、配信の中心になっているのが無料コミックアプリだということだ。無料コミックアプリはコミックを売るのではなく、コミックでお客を集めて、コミック以外の広告やスタンプを売るビジネスと考えたほうがいい。コミックはおまけみたいなものだ。配信元は内容

    第7回 「紙vs電子」はWin, Lose or Draw
    medihen
    medihen 2018/02/23
    "学生のほぼ全員が「紙のマンガはなくならない」「紙のマンガのほうが好き」という反応を見せる。韓国からの留学生でさえも「ウェブトゥーンよりも日本の紙のマンガが好き」という答えだ"
  • 書誌情報の「脱アマゾン依存」を!

    去る8月25日、図書館蔵書検索サービス「カーリル」のブログに掲載された「サービスに関する重要なお知らせ」を読んで、驚いた人は多いと思う。この日のブログにこのような一節があったからだ。 カーリルでは、Amazon.com, Inc.が保有する豊富な書誌情報(のデータベース)をAmazonアソシエイト契約に基づき活用することにより、利便性の高い検索サービスを実現してきました。現在、Amazon.comよりカーリルとのAmazonアソシエイト契約が終了する可能性を示唆されているため対応を進めています。 Amazonアソシエイト契約の終了は現時点で決定事項ではございませんが、カーリルではこの機会に、Amazonのデータを主体としたサービスの提供を終了し、オープンな情報源に切り替える方針を決定しました。現在、新しい情報検索基盤の構築を進めておりますが、状況によっては一時的にサービスを中断する可能性

    書誌情報の「脱アマゾン依存」を!
    medihen
    medihen 2017/09/01
    "問題の本質は「ネットで買うか」それとも「店頭で買うか」ではなく、本に関する情報(書誌情報やレビュー)とEコマースが、特定のプラットフォームに完全に依存してしまうことの是非ではないか"
  • 第3回:小説家になろう〜「場」の提供に徹底する先駆者

    ネット投稿小説を語る時に絶対に外せないのが「小説家になろう」だ。2004年スタートと、ネット投稿小説サイトとして老舗であるのはもちろん、書籍化を前提とした商業作品の投稿を認めないなど、ストイックなまでにプラットフォームに徹しているのもその特徴だ。なかなか外からはその考え方の根底にあるものが見えにくいこのサイトを運営するヒナプロジェクトに直接じっくりと話を聞いた。 月間15億PVを擁する「シンプル」なサイト ——「小説家になろう」設立の経緯とビジネスモデルについて教えてください。 平井:「小説家になろう」(以下「なろう」)は代表の梅崎祐輔が2004年に開設した個人サイトから始まっています。規模が大きくなったため2010年に法人化しています。 ビジネスモデルはほぼ100%広告収入で賄っている状況です。サイト内で実施するコンテストの開催費用等はいただいていますが、比率としてはごく小さいものです。

    第3回:小説家になろう〜「場」の提供に徹底する先駆者
    medihen
    medihen 2017/08/01
    従業員が18人もいるのか。もっと小さいと思っていた。
  • 出版営業が『まっ直ぐに本を売る』を読む

    4年前の秋の夕暮れ。1時間に1のローカル線の駅から歩いて20分。バスも廃線となった北関東の幹線道路脇を私はテクテクと歩いていた。世間では涼しくなってきたとほざいているが、注文書を入れた重いかばんとともにいるので、汗だくである。 「せんせー、せんせー、せんせー、せんせー」 ロードサイドを中心に展開するとあるチェーン書店の自動ドアを開けるなり、就業時間を終え、すでに私服に着替えていた彼女が呼びかける。何度も呼ぶのは癖なのか何なのかよくわからない。 「せんせー、『割戻し』って歩戻しのこと?」 書店員なのだが、簿記の学習中のため、アポは「退勤後!」というご指定である。要するに、営業で訪問しているはずなのだが、やっていることは勉強の指導である。こっちは汗を引かせたいので一服したいところなのだが、お構いなしに話を続ける。 「ウチらだと『歩』じゃん。『割』の方が大きいよね」 「あー、似ているけど違うか

    出版営業が『まっ直ぐに本を売る』を読む
    medihen
    medihen 2016/06/14
    "書店「数」が減少していることは動かすことのできない事実である。だが、Amazonを加えれば、「書籍の購入金額」は必ずしも減少一方とは言い切れない"
  • 「出版不況論」をめぐる議論の混乱について

    毎月1日にリリースされる、小田光雄さんの「出版状況クロニクル」というウェブ記事を楽しみにしている出版関係者は多いと思う。私もその一人である。これを読まずにはひと月が始まらない。毎月かならず読んでいる。 小田さんが書かれた『出版社と書店はいかにして消えていくか〜近代出版流通システムの終焉』はのちに論創社から復刊されたが、私は1999年にぱる出版からでた版で読み、大きな衝撃を受けた。1999年といえばまだアマゾンが日に進出する前の時期である。日の出版業界が抱えた構造的な問題をロードサイドビジネスや郊外社会論とからめて分析し、彼が名付けた「近代出版流通システム」がもはや機能不全を起こしている事実を、この時期にいちはやく伝えた小田さんの功績はとても大きい。 小田さんはその後、論創社のサイトで「出版状況クロニクル」という定点観測コラムを始め、それは『出版状況クロニクル』という単行としてまとめら

    「出版不況論」をめぐる議論の混乱について
    medihen
    medihen 2016/05/02
    "逃げ切り可能なオールド世代が悲観論を流布し、それを無批判なまま消費する。その結果、現実認識を誤り、あたかも予言の自己成就のように、不幸な未来が到来する"
  • ウェブ小説家はなにを望むのか?

    最近、飯田一史『ウェブ小説の衝撃――ネット発ヒットコンテンツのしくみ』(筑摩書房、2016)を読んだ。知らぬあいだに日文芸の主力マーケットになっていたウェブ小説の出版経緯や内容分析を試みた関係者必読の一書だ。ウェブ小説とは、ネット上の小説投稿プラットフォーム「小説家になろう」や「E★エブリスタ」などで掲載されたネット発の小説が紙のになって出版されたものを指す。 ウェブ小説は文芸誌に載った小説を単行化する従来の出版形態とは大きく異なる。たとえば、ウェブの場合、紙面に制約されないので、短い章をコンスタントに発表していくのも一巻分の長編を構想して執筆していくのも、作者の思いのままだ。また、(しばしば実作者でもある)読者との即時的かつ直接的なインタラクションのおかげで、その時々の流行や人気傾向を作に反映させやすい。そしてなにより、ウェブ上では読者数や閲覧数を可視化できるので、出版社からみても

    ウェブ小説家はなにを望むのか?
    medihen
    medihen 2016/04/15
    さすがにWeb小説と古典を並べて論ずるのは、時期尚早では。しかし、文学研究者の目にも留まるようになった、ということではあるか。
  • 本から本へ直接つながる「読書空間」への一歩

    5月20日から22日まで東京ビッグサイトで行われていた「第6回 教育ITソリューションEXPO(EDIX)」の初日に取材へ行ってきました。全体をざっと見て回ったのですが、今年はあちこちのブースで「アクティブ・ラーニング」という言葉を見かけました。これは、下村文部科学大臣が昨年11月に行った中央教育審議会へ学習指導要領の全面改訂を求める諮問の中で、何度も出てくる言葉だからでしょう。 諮問によると、アクティブ・ラーニングとは「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」のことです。それをIT技術によって実現するという意味で、EDIXの出展企業がアピールポイントに使うのは当然のことだと思います。ただ正直なところ、どこかで見たような既存の仕組みを、アクティブ・ラーニングという言葉で飾っている感が否めませんでした。じっくり見たらもう少し印象は違うのかもしれませんが。 次世代ハイブリッド図書館

    medihen
    medihen 2015/05/26
    学者さんは、まず論文内で言及した参照先論文に自動でリンクが張られるようにするのが先では。
  • わが実家「蔵書放出祭」始末記

    「あのをどうしよう……」 奈良の実家の親から「実家を売ろうと思っている」と電話で言われた時に、私の脳裏に最初に浮かんだのは、実家に溜め込んだやCDのことだった。 小さい頃からの好きが高じて図書館に職を得ているが、そもそも、私は「床が抜ける」ほどのもCDも持っていない、その辺にいる「ちょっと音楽が好きな一社会人」である。読書量にすれば年間100冊も読むかどうか。職業柄、を大量に購入・所蔵する必要がある人々と比べれば、所詮は趣味、多寡が知れている。おまけに、結婚して子どもが産まれるに及び、やCDを買うお金も、置くためのスペースも極めて限定されるようになってしまった。結果として、蔵書点数の伸びはここ数年、鈍化する一方だ。 それでも、増えた。故・草森紳一氏は、 「はなぜ増えるのか。買うからである。処分しないからである。」(『随筆 が崩れる』、文藝春秋、2005年) と書いている

    medihen
    medihen 2015/02/20
    “最近は、中国関係の(ことに中国語で書かれた)書籍は値段に糸目をつけない中国人から依頼がよく来るので、比較的高額で買い取るそうだ”
  • アマゾンの出版エコシステムは完成に向かう

    今年もフランクフルトでのブックフェアが滞りなく終わったが、ヨーロッパでも書籍業界の人たちは出版社に対するアマゾンのやり方を支持するか、反対するかに二分されている印象だ。アメリカで起きているアシェットとのバトルに呼応するかのように、アマゾンがドイツでもボニエール社に対し、同じような措置を取ったことを受けて著者団体が結束して抗議声明を出すなど、攻防喧しい(詳細はこの記事あたりを参照)。 そしてブックフェア開幕当日に、アマゾンはドイツでも「キンドル・アンリミテッド(定額読み放題サービス)」を始めた(この記事も参照のこと)。書籍は定価販売で他国と比べても高く感じるドイツの書籍市場でどこまで加入者を確保できるかが注目される。 そして国ではアマゾンがスポンサーになる形で、似て非なる二つの新サービスが始まる。拙ブログでも言及したが、これはアマゾンが考える新しい出版エコシステムの一端と捉えていいだろう。

    medihen
    medihen 2014/10/17
    “既存の出版社が物書きのプロを育て、プロの仕事としての「本」を売るシステムだとしたら、アマゾンはアマチュアの物書きによるパラダイム構築を進めつつある”
  • 読書のためのスターター・キット

    お盆も過ぎ、そろそろ暑さも和らいでほしい今日このごろ、電子書籍をめぐる話題も、7月のブックフェアが終わって一段落なのか、あまり大きな動きがありません。そこで今回は、雑談めいた話題で書いてみようと思います。 毎年夏になると、書店ではさまざまな出版社による「文庫フェア」が行われます。比較的小さな書店でも、店内の一角にそのためのスペースをとり、「新潮文庫の100冊」や「カドフェス2014(角川文庫)」や「ナツイチ2014(集英社文庫)」などが展開されている光景は、夏の風物詩としてすっかり定着しました。むしろ、いまやルーチン化しているのではないか、とさえ感じるほどです。 こうした「文庫フェア」は、現在はネット上でも同時に展開されています。それぞれの特設サイトにはラインナップされたの紹介文があり、の一部が立ち読みでき、気に入ったはネット経由で購入できるのですが、残念なことに、フェアに選ばれる作

    medihen
    medihen 2014/08/25
    “分野やテーマ、ジャンルごとの「お薦め本」のサンプルが、10冊なり100冊なりプリインストールされた読書専用端末を、現実の書店の店頭にならべて売る、というアイデアは無謀でしょうか”
  • 東京国際ブックフェアを見て歩いた4日間

    2014年7月2日から5日まで、東京ビッグサイトで「第21回 東京国際ブックフェア」が行われました。私は、昨年は国際電子出版EXPOを中心に見ていたため3日間しか行かなかったのですが、今年は4日間とも足を運びました。既に寄稿している記事は以下の通り。セミナーレポートばかりです。 ・紙と電子の相互補完──三省堂書店が電子書籍を販売するわけ -INTERNET Watch(2014年7月7日) ・世界ナンバーワン電子図書館システム「OverDrive」の実力 -INTERNET Watch  (2014年7月8日) ・ネット時代におけるリアル書店の活路は「地域性」 -INTERNET Watch(2014年7月10日) 4日間で9回の記者発表とセミナー各1時間を見て、空いた時間にブックフェアと電子出版EXPOの展示内容をチェックして、自分自身も1度登壇し……と、会議棟と西ホールを見て歩いたとい

    medihen
    medihen 2014/08/04
    “ 「活字離れ」を嘆いている暇があったら、少しでも読者を増やす努力をすべきだと私は思います”
  • いま改めて考える、出版社のレゾンデートル

    ── いまこそもう一度、電子出版に真正面から立ち向かうときだと思っています。 7月1日に行われた記者発表会で、株式会社ボイジャー 代表取締役 鎌田純子氏は述懐を込め、このような挨拶をしました。この日、池澤夏樹氏の作品の電子化・販売をボイジャーが手がけることの発表と同時に、電子出版Webサービス「Romancer(ロマンサー)」が一般公開されました。2011年に導入した「BinB」ブラウザビューワが「いつでも誰でも簡単に電子のを読める仕組み」なら、Romancerは「簡単に作る」役割を担っています。池澤氏とのプロジェクトでも使用しているとのことです。 Romancerは、昨年の国際電子出版EXPOの時点でクローズドβ版が公開されていましたが、正式版の公開で何が変わったのか、他社のサービスとは何が違うのか、そしてどのようなビジネスモデルにするのかを私は注目していました。鎌田氏は、ボイジャーが

    medihen
    medihen 2014/07/23
    “出版社は本を出すのにあたり、編集・校正・デザイン・装丁・印刷・製本・物流など様々なコストを負担します。そういうリスクを負っているからこそ、「出版権」という独占排他の強い権利を与えられ”