もう3時間にもなる。 その間、彼はずっと歩きまわっていた。 正しくは徘徊と言ったほうがいいのかもしれないが、彼には彼なりの目的があるらしかった。何故なら、先刻から同じところばかりをぐるぐるまわっているのだから。そして私は、あとをつけていることを悟られないように、彼を追いながら歩いていた。 その日、私は友人と秋葉原で待ち合わせをしていた。友人の住まいと私の住まいのちょうど中間が秋葉原だからだ。 少し早めに着いて友人を待っていると、友人から急な取材が入ったために来られないという連絡があった。私のような仕事をしている人間にはしょっちゅうあることだ。そこで私は、秋葉原を探訪することにした。 理由はふたつある。ひとつは、何年か前に秋葉原の街の変貌をルポ形式で記事にしたことだ。私の認識では、秋葉原は世界にも知られた電気街だったが、フィギュアやコスプレ、アダルトゲーム、成人コミックに浸食されつつある街は