わたしは知っている。わたしがこの高校でいちばん美しい、いちばん綺麗な女の子だということを――。筒井康隆×いとうのいぢ 文学界の巨人・筒井康隆の最新作は本気のライトノベル!文学史上の一大事件を読撃せよ。 見られている。 でも、気がつかないふりをしていよう。 気がつかないふりをしていると思われてもかまわない。 いつも見られているから平気なんだと思わせておけばいい。 実際、もう慣れっこになってしまっているし、慣れっこにされてしまっているのだ。男の子たちの視線に。みんながわたしを見る、その何かを恋い願うような視線、慕(した)い寄るような視線、粘(ねば)りつき、からみついてくるような視線に。 わたしは知っている。わたしがこの高校でいちばん美しい、いちばん綺麗(きれい)な女の子だということを。 わたしは校舎の一階の廊下(ろうか)を歩く。運動場に面した、放課後の廊下をわたしは歩く。運動場への出口には男子