すでに人類が滅亡しかけた近未来から物語を始め、七つの短編を通して人類衰退の由縁を探っていく「箱物語」的に卓抜な構成、全編にただよう人間と人類に対するアイロニカルな視点、いずれも山本弘らしさ全開だ。 しかし、このAmazonでも非常に評価が高い『アイの物語』、あまり指摘されないのだが、非常に問題含みの作品でもある。 面白く読めることは間違いないものの、内容的に、そしてまた思想的に、どうにも受け入れがたいものがあるのである。 特に山本弘作品を続けて読んでいると、そこにあまりにも赤裸々に作者の思想が開陳されていることがわかって辟易させられる一面がある。 そう思っていたのはぼくだけではないらしく、きのう読んだやはり山本さんへの追悼の記事が、その『アイの物語』を取り上げてかなり手きびしく批判していた。 ぼくはここまで辛辣にいい切ってしまうつもりはないが、この記事に書かれてあることにはほぼ全面的に賛成
