― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ― ◆個人を翻弄する戦争のリアルを語り続けるということ 『HAKUTO~白兎(しろうさぎ)~』というリーディング公演で中村メイコさんとご一緒しました。 メイコさんは、2歳半で芸能界にデビューして、子役として人気を博しました。 小学三年生の時、戦地に慰問に行ったのだそうです。九州の知覧基地から飛行機に乗せられて、離陸の時には、目隠しを求められました。上空では外せましたが、着陸の時にはまた目隠ししました。どこに慰問に来たのか、秘密にするためでしょう。 慰問の相手は、特攻隊員でした。後々、メイコさんは子供である自分が慰問に来た理由を知ります。特攻隊員は、死を目前にした時、美味しい食事や女を抱くことでは、自分を支えきれないと感じていた、というのです。 ただ、子供を見ると「この子供の未来を救うために、自分は死ぬのだ」と自分を納得させられ
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