先に出版されてヒットした『本当の経済の話をしよう』(栗原裕一郎氏との共著)が時論を中心とする応用編だとすれば、本書は経済学への入門と兼ねる原論的な位置づけにあるといえる。 経済学を4つの主要概念ーインセンティブ、トレード・オフ、トレード(貿易、交換)、マネーから、最新の経済学の成果を巧みに取り入れて、初心者に心地よい知的刺激を与えながら語っていく手法は、相変わらず見事である。 インセンティブは「やりたいという気持ちを引き出すもの」。人間は誰でもやりたいことをやる。これは当たり前です。けれどもそこに一定の「制約」がある、というのがトレード・オフの問題です。資源が「制約」されている、予算が「制約」されている、あるいは時間は「制約」されているといったことが、トレード・オフのもとになります。 経済学はインセンティブの学問であり、その延長でトレード・オフの問題も派生してくる。他方でトレードもまた重要