神奈川県のとある寺院は昨年、税金の処理で大わらわだった。2011年暮れに先代の住職が急逝。長男のAさん(50)が急遽、住職を務めることになったのだ。Aさんはすでに僧籍を取得しており、いつでも寺を継げる状態ではあったが、寺の経理には一切、ノータッチだった。 父親の葬儀から3ヵ月経ったある日。ブルーのスーツを着た2人組が寺の門をくぐった。地元の税務署員だった。「寺院帳簿を見せてほしい」。そう告げられ、3日間、相続税を中心とする税務調査が行わることになった。 寺の収入を管理している帳簿や、預金通帳、賽銭箱、掛け軸や骨董、車などが細かく、調べられた。税務署が特に注目したのは、「住職の私的な財産」だ。 宗教法人である寺の財産のうち、例えば仏像や仏画、儀式に使う道具などは信仰の対象として公益性を帯びており非課税と認められている。また、宗教法人名義の預貯金などの金融資産にも税金はかからない。これらは、僧