東海地震の発生が迫っているとの学説は昭和51年、石橋克彦神戸大名誉教授が提唱した。東海地方は昭和東南海・南海地震の際に断層が割れ残り、安政東海地震(1854年)以来地震がなく、ひずみが蓄積していると警鐘を鳴らした。 明確な前兆現象は見つかっていなかったが、学界や国は観測強化の必要性を訴えた。調査部会は「地震予知への大きな期待感があった」と分析する。 高まる期待は「確信」に変容した。当時の気象庁幹部は「地震の発生する数時間前から数日前の時点で、相当顕著な前兆現象をつかまえることができる」と国会で答弁している。科学的な根拠があいまいなまま、学説からわずか2年で大震法が施行され、予知体制が動き出した。 ある地震学者は「予知は研究費がつくメリットもあった。社会全体が良いニュースを受け入れたかったのではないか」と振り返る。 風向きが変わったのは平成7年の阪神大震災。国民に過大な期待を抱かせた反省から
地震調査研究関係予算の推移2013年度の主な科学技術予算案 東日本大震災後、地震研究関連の予算は、地震や津波の観測網の設置などで急増した。「大震災のたびに増えている」「できもしない地震予知に巨費を使っている」とも批判されるが、地震予算は、破格なのか、予知のためなのか。 ■予測のため観測網強化 阪神大震災を受けて1995年に発足した地震調査研究推進本部(地震本部)は毎年、各省庁にまたがる「地震調査研究関係予算」をまとめている。 続きを読むこの記事の続きをお読みいただくには、会員登録が必要です。登録申し込みログインする(会員の方)無料会員登録はこちら朝日新聞デジタルのサービスご紹介はこちら関連記事地震研究、お金かけすぎ? 大震災のたび予算急増、疑問の声も(5/2)緊急地震速報…「揺れ来ると思った」半分以下 淡路地震(4/27)南海トラフ(3/21)三重の避難者最大69万人 南海トラフ地震の
深層崩壊の危険度が高い地形 【川田俊男】山の斜面に三日月のような地形があると、斜面が岩盤ごと崩れる「深層崩壊」が起きやすいことが、京都大防災研究所の千木良(ちぎら)雅弘教授らの研究でわかった。地形の特徴から内部の地層構造を推測でき、危険度をあらかじめ知るのに役立つという。 千木良さんらは、2011年の台風12号で深層崩壊が起きた奈良県や和歌山県のほか、静岡県や鹿児島県などの山の斜面計18カ所を調べた。崩れる前に観測された航空レーザー測量のデータで、地形を詳しく分析。地面を掘るボーリングの結果も活用して、地形と地層構造との関係をみた。 その結果、斜面に三日月形の小さな崖がある場合、内部は地層の重なりが斜面と平行になっていて滑りやすいうえ、崖より下側の地層が重力によって変形し、落ちかけた状態になっていることがわかった。深層崩壊につながりやすいという。台風12号で深層崩壊した斜面は、調べた
地震発生の概念図 【瀬川茂子】プレート境界がゆっくりすべる場所では大地震が起きないとされていたが、近くで大地震が発生すると、つられて地震が起きる可能性があることを海洋研究開発機構の野田博之研究員らが解明した。英科学誌ネイチャー電子版に10日発表する。 プレート同士がくっついている(固着)領域にひずみがたまり、その領域が大きくすべることで地震が起きると考えられてきた。ゆっくりすべる領域では、ひずみはたまりにくいとみられていた。 野田さんは米カリフォルニア工科大と共同で、地震が数千年間繰り返される様子をコンピューターで再現した。その結果、普段ゆっくりすべっている領域でも、周辺で固着領域が大きくすべって大地震が起き、それによる断層のずれが高速で伝わってくると、地震が起きることがあるとわかった。ゆっくりすべりの領域が固着領域に変化する場合があることもわかった。 東日本大震災が発生した日本海
地震が起きた時間帯の割合 【杉本崇】月や太陽による引力が東日本大震災発生の「引き金」になっていた可能性が高いことを、防災科学技術研究所の田中佐千子研究員が明らかにした。東北沖で36年間に発生した地震について引力との関係を調べたところ、2011年の震災が近くなるにつれ、引力の影響が強いときに地震が集中していることがわかった。 引力の影響が強いときに地震が頻発するのは、エネルギーがたまった断層に力が加わるためと考えられ、引力の影響と地震の頻度を調べることで、巨大地震が迫っているかどうかが分かるかもしれないという。 月や太陽の引力によって、地球は伸び縮みを1日2回繰り返す。地表面が20センチ程度上下し、地震を起こす断層にも影響している。その力はプレートのひずみと比べ1千分の1程度と小さいが、田中さんはこの力に注目。東日本大震災を引き起こした断層のある長さ500キロ、幅200キロの地域で、1
戦争のない世界への願い、歌声に込め…1945年8月1日「長岡空襲」の犠牲者追悼、新潟長岡市で30回目の「平和の森コンサート」
【瀬川茂子】三陸沖で7日に発生した地震は、マグニチュード(M)7級の地震が二つ続けて発生していた可能性のあることが、気象庁や東京大グループの解析でわかった。政府の地震調査委員会で11日、報告された。地震調査委はさらに検討するとしている。 気象庁は当初、海溝のさらに沖合のアウターライズと呼ばれる場所で引っ張りの力が働いて発生した正断層型の地震(M7.3、後に7.4に修正)としていた。 しかし、東京大地震研究所のグループが地震の波形を詳しく解析したところ、二つの地震に分けられるという。まず海のプレート内部で圧縮力が働いて逆断層型の地震が発生し、続いて10〜20秒後に正断層型の地震が起きたとみられる。気象庁も複雑なメカニズムの地震だったとして解析を続けている。 関連記事津波警報サイレン作動せず 揺れでアンテナに異常 宮城(12/11)7日の地震をM7.4に修正 気象庁(12/10)津波で漁船
関連トピックス地震 【瀬川茂子】東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9の地震の30倍のエネルギーを出すM10の巨大地震も起こりうる。こんな推定を、東北大の松澤暢(とおる)教授が21日の地震予知連絡会で報告した。日本でM9級の地震発生を想定していなかった反省から、科学的に起こりうる最大を考え、想定外への対応につなげるのが目的という。 過去に世界で観測された最大は1960年のチリ地震で長さ1千キロの断層がずれたM9.5だ。松澤教授はさらに大きい断層がずれることを考え、理論上はM10もありうると推定した。もしM10の地震が発生すれば、地下の破壊は20分から1時間も続き、揺れがおさまる前に津波が到達するおそれがある。日本海溝から千島・カムチャツカ海溝までの3千キロ全部、60メートルずれ動くとするとM10になる。 また、M11の地震エネルギーは、恐竜絶滅の原因となった小惑星衝突のエネルギ
地震学者らでつくる地震予知連絡会は21日、東日本大震災を予測できなかった反省を踏まえ、組織の名称や役割について検討する作業部会の設置を決めた。 1969年に発足した同連絡会は、国土地理院に事務局があり、地震学者らが地震予知に関する観測や研究結果などについて情報交換を行ってきた。会長の平原和朗・京都大教授は21日の記者会見で「地震予知は現実に難しい。組織の役割を再確認し、必要があればそれに見合う名前に変えたい」と話した。
関西電力大飯原発(福井県おおい町)の近くにある三つの活断層がほぼつながっており、連動する可能性があるとの調査結果を東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)らが15日までにまとめた。原発周辺の地形はこれらの断層の活動で隆起したとみられ、原発敷地内の断層も同時に動いた疑いがあるという。 京都府宇治市で17日に開かれる日本活断層学会で発表する。 つながっている可能性があるのは、大飯原発北西沖の海域にある2断層と、東側陸域の「熊川断層」。海の2断層は連動するが、旧原子力安全・保安院は関電による調査結果を根拠に、熊川断層とは「連動しない」と評価。仮に3断層が連動しても、計算上は大飯原発の安全性に問題はないとしている。 渡辺教授と中田高・広島大名誉教授(変動地形学)は今年夏、大飯原発が面する小浜湾で音波探査を実施。熊川断層の延長線上の海底で、深さ約10メートルにある1万年前以降の地層が断層活動で変形し
関連トピックス地震 【ラクイラ=石田博士】300人超が死亡した2009年のイタリア中部ラクイラの地震で、「安全宣言」が被害を広げたとして過失致死罪に問われた学者や政府の担当者7人に対し、ラクイラ地裁は22日、いずれも禁錮6年の有罪判決を言い渡した。 求刑の禁錮4年を上回る重い判決となった。執行猶予はついていない。被告側は控訴する方針を示した。AFP通信によると判決は、市民に地震のリスクを伝えられなかったことを重くみた。 被告は、マグニチュード(M)6・3の地震が発生する直前の「高リスク検討会」に出席した7人。イタリアを代表する国立地球物理学火山学研究所のボスキ所長や、記者会見で事実上の安全宣言をした政府防災局のデベルナルディニス副長官(いずれも当時)が含まれる。 続きを読むこの記事の続きをお読みいただくには、会員登録が必要です。登録申し込みログインする(会員の方)無料登録で気軽にお試
【ラクイラ=共同】多数の犠牲者が出た二〇〇九年のイタリア中部地震で、大地震の兆候がないと判断し被害拡大につながったとして、過失致死傷罪に問われた同国防災庁付属委員会メンバーの学者ら七人の判決公判が二十二日、最大被災地ラクイラの地裁で開かれ、同地裁は全員に求刑の禁錮四年を上回る禁錮六年の実刑判決を言い渡した。
関連トピックス地震 【小宮山亮磨】日本地震学会は17日、学会内部にある「地震予知検討委員会」を廃止する方針を明らかにした。前兆現象をとらえて地震発生前に警報を出す「予知」の目標と地震学の実力差は大きく、委員会の名称は「用語的に不適切」と判断した。 学会は北海道函館市で開いている大会で、改革に向けた「行動計画」を発表し、「予知」に関する取り組みの見直しを盛り込んだ。 委員会の廃止は、東日本大震災の発生を予測できなかったことをきっかけに寄せられた批判をふまえた。「予知」を掲げることで、多額の研究予算を得てきたとの批判もあった。会員からの意見を聴いたうえで、来年春にある総会で正式に決める見通し。 続きを読むこの記事の続きをお読みいただくには、会員登録が必要です。登録申し込みログインする(会員の方)無料登録で気軽にお試し! サービスのご紹介は こちら 関連記事「従来の考え方はリセットを」 地
被災地で保護された犬=麻布大提供 東日本大震災の被災地で保護されたペットの犬も、強いストレスを感じ、心に傷を負っていたことが麻布大獣医学部のチームの研究でわかった。ストレスの度合いを示すホルモンの数値が高く、学習能力が低下したり、世話をする人への愛着行動があまり見られなくなったりしているという。11日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。 チームは、被災地で保護した犬と、震災前に神奈川県の保護施設から引き取った犬計25匹を比較した。被災地の犬はストレスの指標になる尿中のコルチゾール値が5〜10倍高く、調査から10週間たった時点でもその傾向が続いていた。教えたしぐさの覚えが悪かったり、人にすり寄るなどの愛着行動が少なくなったりする傾向があったという。 犬の年齢や育った場所の違いなどの条件をそろえることで、さらに詳しい結果が得られるとしている。麻布大獣医学部動物応用科学科
インドネシア・スマトラ島沖でことし4月に起きた巨大な地震により、インドやオーストラリアの下にあるプレート(岩板)が割れ、インド洋の海底下に新たなプレート境界が生まれつつあるとの分析結果を、米国のチームが27日付英科学誌ネイチャーの電子版に発表した。 地球全体は十数枚のプレートで覆われ、その下にあるマントルの対流などに合わせて移動しているとされる。日本周辺にはユーラシア、北米、太平洋、フィリピン海の各プレートの境界が集中している。チームの米カリフォルニア大サンタクルーズ校ソーン・レイ教授は「新たなプレート境界ができる過程を検知するのは非常に珍しいことだ」と話した。 新しいプレート境界がどこに形成されるかを予測するのは難しいが、スマトラ島沖から西の方向に生まれる可能性がある。米ユタ大のキース・コーパー准教授は「新しい境界ができるまでには数百万年がかかり、同じような巨大地震が多く起こるだろう」と
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