企業のイノベーションブームに触発された教育における創造性育成論議について、重要にもかかわらずあまり検討されていないテーマがあります。創造性と専門性はどう関係しているのかという問題です。 教育の文脈では、専門性と創造性は対置的に使われることがあります。特に大学教育では、従来の専門教育に対する教育形態として創造的活動を含むプロジェクト学習に言及する時もあり、転移可能性の高い「新しい教養教育」として位置づけられています。 確かに、教科書に記述できるレベルの専門知識についてはアップデートが激しく、逆に変わらないものは、流通することで価値が下がるという現象が頻繁に見られます。ただ、だからといって創造的活動に専門性が必要ないかというと、そんなことはないのではないかと考えています。 イノベーションに関する議論でよく引き合いに出されるiPadを例に考えてみても、生み出したAppleという企業は情報技術に関