発がん性が指摘される化学物質「PFAS」が全国の水道水から検出されている。何に気を付ければいいのか。20年あまりの間、PFAS研究に携わってきた京都大学の原田浩二准教授は「水の汚染は、水道水だけではなく、食品にも影響する。影響しやすい食材や、産地を知ることも重要だ」という――。

※本稿は、原田浩二『水が危ない!消えない化学物質「PFAS」から命を守る方法』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

水面に落ちる水滴と波紋
写真=iStock.com/Wirestock
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剥がれ落ちたPFASはどこに行く?

発がん性が指摘される化学物質「PFAS」が全国各地の水道水から検出されています。

前回記事(多摩地区住民約790人から「発がん性物質」が検出された衝撃…「家の水道水が危ない」京大准教授が警告する理由)では、私たちの暮らしは、水道水に限らず多くのPFAS製品に囲まれている、というお話をしました。

そして、このPFASは、ふとした弾みで製品からはがれ落ちることがあります。剥がれ落ちたPFASはどこに向かうのでしょう?

水に溶けやすいPFAS(※)はこれまで数十年使われてきた中で、川や海に流れ込んできました。海は非常に広いので、PFASはかなり希釈されて、濃度は川や湖よりは低いことがわかっています。しかし、いくつかのPFAS、たとえばPFOSは水の濃度に比べれば、1000倍以上、生物に蓄積することがわかっています。

筆者註※PFASは、有機フッ素化合物の一群。Per and PolyFluoroAlkyl Substancesの略で、「ピーファス」と呼ばれる。少なくとも4700種類あると言われている。WHOの国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類で最高区分の「発がん性がある」とされたPFOA、「ヒトへの発がん性の可能性がある」PFOSはこの中の1種。

そのため、魚介類は重要な対象となります。サカナたちもPFASを口やエラから摂り込み、身体の中でためている可能性があり、それを食べている人間に戻ってくるのです。

イワシやサバといった、いわゆる青ザカナに多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)は、人間の記憶や学習といった脳の機能に重要な役割を担っていると言われます。また、EPA(エイコサペンタエン酸)も同じ脂質で人間の体内でつくることができない必須脂肪酸です。

このDHAとEPAが血液中に多い人、つまりサカナを多く食べている人ほど、PFAS濃度も高いという調査報告もあります。サカナが、PFASの摂取ルートの一つになっているのは確かなようです。

“海魚”よりも“川魚”に用心の理由

ただ、たんぱく源として魚介類は赤身肉などよりも健康によいとされています。PFAS濃度が高いからといって魚介類をさけることはすすめられません。魚介類の汚染を防ぐためにPFASの放出を防ぐことが必要ですし、汚染が強い場所での魚介類を摂取しないことが重要です。

どのサカナに気をつけるべきか、魚種としてはあまりわかっていませんが、強いて言うなら、海より川にいるサカナのほうに用心すべきでしょう。

海は広く、PFASは均一に希釈され、またサカナたちも様々なところから捕られるので影響が平均的になります。対して川は、棲む川自体が汚染されていれば、サカナもそのPFAS濃度に応じて汚染されるリスクは高くなっていきます。