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玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

司法判断を無視したプリンスホテル

2008年02月04日 | 日々思うことなど
先日の記事で「現代日本人の生活を維持しているのは経済と科学技術だ」と書いたが、大事なことを忘れていた。文化的で安寧な生活を送るためにはお金や科学技術と同じく「法秩序」が必要である。

私は「中立的」で物分りのいい態度をとろうとは思わない。
法秩序に守ってもらわなければ生きていけない弱い人間だからだ。「北斗の拳」のごとき自然状態の社会にはとても住めない。
プリンスホテルの行為は誠実さに欠け自己中心的である。そして何より、法秩序をないがしろにする反社会的姿勢は「コンプライアンスを誓った」はずの企業(参考)として異常だ。各新聞が問題視し社説で取り上げたのは当然である。

ホテル使用拒否 司法をないがしろにする行為だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 司法の判断に従わなくとも構わないという理屈がまかり通れば、社会が成り立たない。

 日本教職員組合の教育研究全国集会(教研集会)が都内で始まったが、全体集会が中止になった。会場になるはずだったホテルが「日教組の予約は解約した」と主張し、使用を拒んだからだ。

 東京地裁、東京高裁は、「解約は無効で、使用させなければならない」と命じたが、ホテルはこれに従わなかった。

 日教組が毎年1回開く教研集会には、2000~3000人が参加する。1951年から57回に及ぶ教研集会で、全体集会の中止は初めてだ。

 裁判所が認定した事実によると、日教組は昨年3月、グランドプリンスホテル新高輪に会場の使用を申し込んだ。その際、例年、教研集会の会場周辺では右翼団体の街宣活動があり、警察に警備を要請していることも伝えた。契約後、日教組は会場費の半額を支払った。

 ところが、11月になってホテル側が突然、解約を伝えた。

 ホテルが契約後、過去の例を独自に調べた結果、100台を超す街宣車の拡声機による騒音や大規模警備で、他の利用者や住民に多大な迷惑をかけることが分かったため、というのが理由だ。

 だが、ホテルが右翼団体による妨害を恐れ、筋の通らない理屈で解約を正当化してまで集会を中止させれば、右翼団体の思うつぼである。

 裁判所が指摘したように、ホテルは日教組や警察と十分打ち合わせ、混乱を防ぐ努力をすべきだったのではないか。

 ホテルが今回、恐れたのは右翼だったが、左翼側の“威圧”で講演会の主催者が講演を中止した例も少なくない。

 1992年に、評論家の上坂冬子さんが月刊誌で憲法改正に言及したとする社会党(当時)などの抗議で、新潟市主催の憲法記念集会での講演が中止となった。97年には、ジャーナリストの櫻井よしこさんも、「従軍慰安婦」問題での発言を巡り、「人権」を掲げる団体の抗議で主催団体が講演を取りやめた。

 異なる立場の意見でも、発言する自由を最大限認めるのが、民主主義社会である。憲法で保障された「集会の自由」「表現の自由」が脅かされてはならない。

 ホテル側は、「極めて短時間で十分な審理、理解を得られないままなされたもので、大変残念」としている。

 だが、ホテル側は裁判の係争中なのに、会場には既に別の客の予約を入れていた。司法をないがしろにする行為は許されまい。一流ホテルには、それにふさわしい社会的責任が求められる。


教研集会拒否―ホテルが法を無視とは asahi.com:朝日新聞社説
社説:会場使用拒否 言論の自由にかかわる問題だ - 毎日jp(毎日新聞)
東京新聞:日教組 全体集会を中止 プリンスホテル 高裁の使用命令拒否:社会(TOKYO Web)

会場提供拒否 無視された集会の自由(2月3日)社説 北海道新聞
信濃毎日新聞[信毎web]|社説=集会拒否 憲法の精神に反する
日教組集会拒否 大ホテルがこんな無法を 新潟日報 NIIGATA NIPPO On Line
教研会場拒否  脅かされた集会の自由 京都新聞 社説
教研全体集会中止 法無視のホテルに疑問 中国新聞 社説
(社説)ホテル使用拒否 「集会の自由」は守らねば - 山陽新聞ニュース
日教組集会拒否 ホテルの姿勢は問題だ 徳島新聞社
[理解できないホテル判断 教研集会拒否] / 社説 / 西日本新聞
ホテル側の判断は疑問 沖縄タイムス社説 2008.2.3
会場使用拒否 ホテルは社会的責任自覚を 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

私の知る限りプリンス側の主張を支持する社説はひとつもない。
弁護士の意見は次のようなものだ。

弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」:日教組、教研集会全体集会を中止
ホテル側にもそれなりに言い分はあると思いますが、主張を尽くした結果としての裁判所の決定に従わない、という姿勢は、コンプライアンスの観点からいかがなものか、という印象を強く受けますね。自分の主張を優先し、司法権に服しない、というホテルが、法治主義を旨とする日本国の、それも首都の中枢において営業を継続していることに対する強い疑問も、当然、生じてくるでしょう。

こういった人や組織が次々と出現すれば、法治主義は根底から崩壊し、日本国は国としての体を為さず、アフリカにあるような「失敗国家」化し、暴力、無秩序、不正義が横行する、暗黒の状態に陥ってしまうでしょう。長きにわたり綿々と続いてきた日本国の歴史も終わりかねません。上記のような姿勢、対応は、正に「暴挙」と言っても過言ではないと思います。

今後、このホテルを利用しようと人は、「日本国の司法権に従わないホテルである」ということを十分念頭に置いて、利用すべきかどうかを、よく考えてみるべきでしょう。

二流ホテルの証明 - 元検弁護士のつぶやき
そのホテルの名前はプリンスホテル~司法判断を無視した企業だと覚えておきます - 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)
プリンスホテル、高裁の命令を拒否|福岡若手弁護士のblog
la_causette: 外部の圧力に屈して直前に契約の一方的廃棄を主張してくるホテルではカンファレンスは開けない

落合弁護士は「日本国の歴史も終わりかねない」「暴挙」とまで言っている。私も同感だ。


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12 コメント

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Unknown (mofmofe)
2008-02-04 20:43:58
いつも楽しみにしています。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q128255637

より


民事保全法に基づく仮処分でしたら、その決定に従わない場合の罰則はありません。確定民事判決に従わなくても刑事罰を科されないことと同様です。

ただし、仮処分決定に間接強制条項があれば、決定の趣旨を履行するまで、1日○○円の制裁を課して、履行日までの損害金を請求することはできます。損害金の請求は、民事判決の強制執行と同じです。

従って、仮処分決定書を再度ご覧下さい。その中に、「決定内容を履行するまで、債務者は1日当り金○○円を債権者に支払う」という条項が記載されていれば、民事制裁はあることになります。

間接強制は民事執行法第172条に規定されています。下記URLを参照して下さい。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54HO004.html#

===
だそうです。

ホテルが仮処分命令に従わないからといっても
法を無視したわけでも、暴挙でもなんでもなく、仮処分決定書内に記された間接強制条項に従っていれば、法の秩序を無視した行動とは言えないのではないかと存じます。強制条項に記された損害賠償請求額を支払わない、となったときに初めて法令無視、と言えるのではありませんか?マスコミの意見は、日教組大会を従前通りホテルが開催しない=仮処分命令無視、法の秩序無視、集会の自由無視で憲法違反だ!「いかがなものか」「けしからん」というのは正確な報道とはいえず、印象論に思えます。

ホテルは裁判所の仮処分命令がどういう意味を持つか理解の上、開催したときのメリットデメリットを
勘案して損害金を支払ったほうが他のお客に迷惑がかからないと決断したのかもしれません。

裁判所からの命令だから、とそこで思考停止しないで「仮処分命令」の意味と実際の効力、命令に従わなかった場合に処せられる処分等について、学ぶことができました。ありがとうございました。
返信する
Unknown (uma)
2008-02-04 22:58:51
日教組と右翼団体が絡んでいるので問題が大きくなってしまいましたが、
要するにこれは顧客との契約を企業の一方的な都合で破棄して良いかどうか、という問題に過ぎない気もします。
今後、民事訴訟でホテル側に賠償命令が下されるでしょうし、
それすら無視するならまさに司法判断の無視ですが、
一営利企業として他の顧客の利益を守るためにあえて損害を覚悟で契約を破棄する、
という姿勢自体がそれほど問題とも思えません・・・。
少なくとも、櫻井よしこさんのケースのような、万人に平等であるべき公共施設が利用を断ったという問題とは、
一線を画して考えなければならないのではないでしょうか。
返信する
民法の正体って (てんてけ)
2008-02-04 23:33:55
この件と真逆な例は、
月極有料駐車場など私有地に、勝手に車を置いた人がいても
土地の持ち主が自力でその車を移動させると賠償金を払う可能性が大いにある、
でしょうね。
警察に電話しても、警察はナンバープレートから持ち主を割り出して、どかせるように連絡してくれるので精一杯です。
その応用例が放置自転車問題だとか。
返信する
Unknown (Unknown)
2008-02-05 08:04:30
新品川プリンスホテルに同情的な意見は少ない一方、日教組と報道記者が誤認をしている可能性も、否定できません。
一方、新品川プリンスホテルの周辺は、駅前では他のホテルや企業が立ち並ぶ一方、品川地区の基幹的な病院もホテルに隣接しております。ホテルとしては損害賠償を覚悟した上での、苦渋の決断なのかもしれません。

一方で、日教組の「法治国家では裁判所の指示に従うべき。法律を遵守すべき」とのコメントに、総突っ込みを入れられているようです。

ttp://www.ops.dti.ne.jp/~makinoh2/
 が、これ、現場行ってみればわかるのですが、ホテル側の言い分の方が常識的です(契約関係で賠償とられるのとは別の話)。
 表は品川駅に近いですが、裏は下町っぽい町で病院もあります。また貸し切りでない以上他のお客さんもいる中で、街宣車100台が来る
可能性のある集会なんかあり得ないです。
 公平に見ても、新高輪プリンスとるか普通?というのが率直な感想です。
 損害賠償覚悟で、街宣車などが押し掛けてお客さんや周辺住民が被害を被るリスクを回避するのは当然です。
 集会結社の自由があるからといって、どこでも集会する権利があるというわけではないでしょう。

ttp://www.team-aoyagi.com/2008/02/vs_b834.html
日本国憲法の基本は「国、行政VS国民」の関係規定なのに
日教組の先生方も新聞記者の皆さんもどうも日本国憲法を完全に誤解しているようです。

日本国憲法ってのは私人(法人含む)間の規定ではないんですよ。ですから、ここで「集会の自由」を持ち出すのは完全に筋違いなんです。

ttp://d.hatena.ne.jp/finalvent/20080202#c1201913518
ホテルの件については、まず原則として契約の自由があるので、契約段階で好き嫌いすることは出来ます。
ところが、今回はもう契約しちゃった。そこで説明義務違反があったぞ、とホテル側が後から契約解除しようとしたんですね。(多分)
それに対して日教組が、裁判所に契約日にホテルを使える権利の確認か何かの訴訟を提起して、仮処分も申し立てた、と。
で、仮処分で、契約の解除を認めず、使わせろ、という決定が出たのでしょう。
仮処分は、裁判の種類のうち決定でなされるのですが、出されるものは仮処分命令ということで、2紙の違いかと。

朝日の内容については、私企業のホテルは、憲法や地自法244条3項の適用を受ける自治体の施設とは全く異なる施設ですから、完全な間違いですし、意図的に間違ってるとしか思えないほどの間違いです。引用部のようなことは、決定の理由中では一言もかかれていないと思います。
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Unknown (Unknown)
2008-02-05 18:46:46
mofmofeさんがかかれた通りだと思いますよ。
「日本国の歴史も終わりかねない」「暴挙」でも何でもありません。
損害賠償請求額を払う方を選択したという、正当な対応でしょう。

正直、落合弁護士もあなたも、暴言だろうと思いますね。
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ミンボーの女 (ルクス)
2008-02-05 22:05:26
プリンスホテルって確か総会屋(つまり暴力団)に利益供与してて、大問題になった挙げ句「社会の規範を守ります」「反社会勢力には毅然として立ち向かいます」って宣言出してるんですよね。
害賎組織のような典型的な「暴力団」に迎合して、商売の契約も勝手に破棄する連中の何がコンプライアンスだか。
「あれがヤクザなのよ。弱い者には強いけど、強い者にはまるっきり弱い」
ミンボーの女の名言です。そういえば、あの映画も都内の大手ホテルが題材だった。暴力団が害賎車出して来るシーンもあったな。
返信する
こんばんわ (おじゃまします)
2008-02-05 22:08:59
ご存知かもしれませんが、違う意見をされている方をご紹介します。(おおやにき)
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000490.html

この件に関しては、私はよくわかりません。

ただ私は「日本国の歴史も終わりかねない」「暴挙」などという言い方はまったく支持できません。自分の意見と違うものに対し、大げさなレッテルを張る行為でしかないからです。「国賊」「売国奴」という物言いと変わりません。
返信する
Unknown ()
2008-02-06 11:34:53
mofmofe さんの「その決定に従わない場合の罰則はありません。確定民事判決に従わなくても刑事罰を科されないことと同様です」というロジックに従えば、民事の損害賠償を無視し続ける2ちゃんねるのひろゆきも全く問題なし、という事になりますね。
そんな腐った法制度のまま放置している立法の問題だと思うけど。
返信する
契約の法がそういう仕組みなら… (ka)
2008-02-06 23:24:33
>そんな腐った法制度のまま放置している立法の問題だと思うけど。

そうですね、立法の問題ですね、でも弁護士や玄倉川さんは

「あんな弁護内容をして公然と裁判を引き伸ばすような事をすれば国民の司法に対する信頼は著しく下がる」

という光市事件の弁護団に対する批判に「法律というのはそういうシステムなのだから納得すべきだ」と、感情に流されず現状の法システムを理解し、従うよう論理的に説明されてましたので

法の仕組みに不満があっても”民主主義への暴挙である”とか感情的で扇動的な用語を使わずに「プリンスホテルの判断は感情的、倫理的には納得いかないものですが法の”契約”というのはそういう仕組みなのだから理解すべきだ」言うことで大いに納得してくれる事だと思いますよ、まさか自分達の都合のいいときだけ倫理観を振り回すなんて都合のいい事をするわけが…。

というかですね、脱線承知で書かせてもらえば上の死刑制度ネタで言えば司法が死刑判決を下したものに対して法務大臣が自分の判断で死刑時期を左右することも、司法権に対する行政権の介入に等しい行為で司法の決定を民間組織じゃなく国家権力が意図的に無視しているという憲法の三権分立の精神を著しく無視した行為だと思うのですが。
(何だ、と言うことは私のいる日本国の歴史は既に終わっていたのかびっくりだ)

これに対して弁護士様達が「行政が司法による判決を無視するとは民主主義への冒涜だ!、行政は司法の決定に従い死刑判決の速やかな履行を!!」なんて活動をした覚えが無いどころか「死刑の暫定的な停止を!!」みたいな裁判所の判決を著しく無視した事を普段言っている癖に(そういう弁護士ばかりじゃないという意見もあるでしょうがそういう活動をする弁護士を”司法の権威を無視する暴挙”なんて批判する
弁護士もいませんよね、筋論だけで言うなら司法の決定である死刑判決を適切に守らせる事をした上で「そしてこんな残酷な刑罰はすぐに法改正すべきだ」と
活動すべきだとおもうのですがねぇ)

何にせよ感情的な扇動発言は弁護士の皆さんには控えて欲しいですよね。
返信する
法秩序と社会的責任 (玄倉川)
2008-02-07 19:57:41
> kaさん

頭を整理してください。
法律の問題点を指摘すること、裁判のやり方を批判することと「裁判所命令を公然と無視すること」はまったく違います。前者は市民の権利ですが後者は公然たる法秩序への挑戦です。社会的責任を負うと宣言した企業のやることではありません。

プリンスホテルのような大企業が法秩序を無視するのは恐ろしいことです。変わり者の個人(2ちゃんねるのひろゆきとか)がアナーキーな行動をとるのは「世の中にはおかしな人もいる」と済ませることもできますが、アナーキーな大企業の存在を容認する意識が広まったらどうなるでしょう。たとえば労働基準法・食品衛生法・公害防止規定… といった(企業に負担をかけて)社会を守る決まりが「罰金払えばいいんだろ」と無視されるのが目に見えています。いや、罰金さえも白ばっくれて払わないようになります。

光市事件について「安田弁護士は後半をドタキャンしたじゃないか」と頭の悪い反論をする人が出そうですが、弁護人の自己都合による公判日の変更は珍しいものではありません。延期要請を認めなかった最高裁にも問題があります。安田弁護士が「充分な準備もないまま出廷し何もできず死刑を言い渡されるのを受け入れられない」と思う心情はよく理解できます。一人の人間の命がかかっているのですから緊急避難の意味が充分認められます。重大な人権問題でギリギリの抵抗をするのはあたりまえのことです。
また、安田弁護士をはじめとした弁護団は「ドタキャン」騒ぎの後は積極的に迅速な審理に協力しており、「公然と裁判を引き伸ばすような事」という批判は一部のみをとりあげた不当な中傷です。

死刑制度云々はただの難癖です。法務大臣が死刑を命じることは法律に定められており、それが「違憲」だという説はkaさんのような素人(ですよね?)からしか聞いたことがありません。

kaさんのご意見はあまりにもくだらないので削除しようかと思いましたが、馬鹿げた意見の典型として残しておきます。
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