『龍三と七人の子分たち』をレンタルDVDで鑑賞。
もうさんざ語り尽くされてると思うのでいろいろ割愛するが、すごく興味深い作品だった。
主人公はかつてヤクザとしてその界隈では名を馳せたおじいちゃん。息子夫婦、孫と同居しているのだが、息子はヤクザだった親父をうとましく思っており、基本的に家に居場所がない。
パチンコ屋でむかつく相手に対し、一方的に殴りかかるも当然店から追い出される(逮捕はされない)。昼間からそば屋で酒飲んで怒鳴ればこれまたウザがられる。夜出歩けばDQNに絡まれるで街にも居場所がない。
あげくビートたけし演じる刑事に「ヤクザなんて口に出しただけで逮捕される時代だよ」と諭され、勝手に兄弟分を集めて組を作って、お世話になった親分に挨拶に行けば、その親分は亡くなっており、息子が引き継いだ組は解散。わけのわからないセールス会社を立ち上げている。
しかも暴力団のかわりに水商売を牛耳っているのが、暴走族から発展しただけの詐欺集団。ヤクザなど屁とも思ってない連中でかちこみに行ってもスマートなやり方で追い返されてしまう。
『みんな〜やってるか』級にくだらないギャグ満載の映画だが、ストーリーを書き出すと、まるで『アウトレイジ ビヨンド』のさらにビヨンドというか、任侠や義理や仁義は2015年代においてファンタジーでしかないということを、いわゆる「時代に取り残された男」として描いていることがよくわかる。
さらに死に対しても感覚もいままでとは違っている。それまでは「死にたい」願望が強く、映画の中でたけしはよく死んでいたのだが、70歳近いジジイになり、放っといても死が近づいていることを肌で感じとっているのか「じゃあそういう時代になっちゃってどうやって生きていったらいい?」というテーマを奥に隠しているように思える。しかも「オレが死んだとしても偉人扱いしないで、芸人として笑いにして送ってほしい」と言わんばかりの不謹慎なナンセンスギャグが無意味に差し込まれる。
北野武のフィルモグラフィのなかでは下のほうだと思うのだが、こういう風に汲み取るとかなり切なく、かなり物悲しい作品。もう時代はこうなってきているんだということを開き直っており、神格化せず、さらに懐古主義的に描いていないところも良い。
もしかしたらこの作品のくだらなさはそういう部分への照れ隠しなのかなと。
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- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
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