第5回 消滅危機言語をなぜ守らなければならないのか
最後に非常に素朴な疑問を。
消滅の危機にある言語を、なぜ守らなければならないのだろう。言語の多様性は、なぜ大切なのか。
いっそ、世界人類の言葉を、英語か何かの共通語に統一した方が、便利なのではないか。などという意見を言う人は少なからずいる。
そんな中、あえて、言語を守る意義とは?
国際的イニシアティヴをとるユネスコのウェブサイトを訪ねると、意外なことが書いてあった。
〈言語の多様性が減ると、生物学的多様性が減少する〉
もちろん、これは数ある理由の中の一つとして挙げられていたのだが、それにしてはトップページにでかでかとリンクが張られ、詳細なページが作られていた。最初、頭の中に疑問符が乱れ飛んだのだが、まあ、言っていることは理解できた。
その土地で培われてきた言語では、植物や動物についてきちんと区別されている。しかし、言語が失われると区別も失われる。どんな種があるのか分からなくなる。それを科学者が再発見するのを待っている間に、多くのものが失われてしまう。
「へえ、そんなことが書いてありますか」と木部さんは言った。