『本を贈る』若松英輔、島田潤一郎、牟田都子、矢萩多聞、橋本亮二、笠井瑠美子、川人寧幸、藤原隆充、三田修平、久禮亮太著(三輪舎) ■「思いのリレー」担う人々 ある評論家が「あとがきに謝辞はいらない」と書いていた。本のあとがきで編集者への感謝の念を述べるのであれば、本づくりのすべての工程に関わった人への謝辞を記すべきだというのだ。しかし、映画のエンドクレジットのように全関係者の名前が記されている本は見かけない。名前を出さないことを美徳とする慣習もあるようだ。 本書は編集、校正、装丁、印刷、製本、書店営業、取次(とりつぎ)といった、本づくりに関わる10人が、自分の仕事への思いをつづったエッセー集だ。 校正者の牟田都子(さとこ)は、ゲラ(校正刷り)を読み込み誤字や間違いを見つけるとともに、著者の「まだ形になっていないことば」に耳をすます。 印刷会社の藤原隆充(たかみち)は、インターネットの普及で紙