サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ブラックフライデー
blog.goo.ne.jp/keisai-dousureba
11月の国の税収は、累計の前年同月比が+12.1%と極めて好調である。中間の納税月だった法人税は+31.0%にもなり、所得税は+11.6%、消費税は+6.1%と軒並み高い。11月までの実績に、GDPと企業業績の見通しを組み合わせて予測すると、2022年度の税収は72.8兆円になり、前年度決算から+5.7兆円もの伸びになる。2021年度の前年度比+6.2兆円に続き、アベノミクス期の平均増収幅2兆円の3倍近い異次元の税収増である。岸田政権の税収増の「倍増計画」は大成功を収めている。 岸田首相は、伊勢神宮参拝後の年頭会見で、出生の激減を受け、異次元の少子化対策に挑戦するとしたが、子ども予算の倍増をすれば、黒田日銀総裁が異次元緩和で2倍をキャッチフレーズにしたので、「異次元」になるという意味なのだろう。むろん、「子ども保険」などの負担増とセットになるので、そちらも倍増となる。激増の税収は、すべて財
~1.8兆円の再分配による少子化の緩和と非正規の解放~ この世界で生き続けること、その全てを愛せる様に、祝福を君に はじめに 2022年の合計特殊出生率は、過去最低の水準にまで落ち込む。これは、経済的にも、社会的にも危機的な状況だ。子世代が1.67倍もの損な負担を被るどころか、人口が崩壊して社会の維持が困難になる。この国に生まれたこと、この時代で生き続けることが、本当に無理なものになっている。だけど、これは運命ではない。少子化の緩和に成功している先進国がある以上、政策的な結果でしかない。受け入れるしかないと思うのは、誰かが描いたイメージや、誰かが選んだステージに、甘んじているだけだ。 日本が少子化の圧力を跳ね返せなかったのは、若者への経済的な支援が薄かったせいである。いまだ、非正規には、育児休業給付もない。0.7兆円あればできるのに、そうなるのは、「財源がない」とする論理だ。税の自然増収が
行動を変えるには、認識を変える必要がある。少子化対策をするのは良いが、戦力の逐次投入をするのではなく、戦略性を持って行うべきだ。例えば、非正規への育児休業給付を実現すれば、出産しても生活費の心配はないという認識が作られ、結婚ができるという行動につながる。対照的に、育児用品に10万円分の支援をするとしても、少しは助かるという意味付けしか与えられなくては、結婚につながらない。 ……… 2022年は少子化が激化し、危機的様相を呈している。正しくは、危機は既に起こっているわけだから、危機に備える防衛問題以上に焦眉の急である。それでも、防衛問題と同様、対応に必要な財源の確保で揉めそうであり、東日本大震災のときに、復興の中身より財源の増税で議論が白熱したことが思い起こされる。少子化が緩和すれば、財政的にも投入以上の成果が期待できるという決定的な違いはあるにせよ、意味付けは大事である。 女性への育児休業
資源高と円安に伴う値上げが相次いだことから、実質での消費は低下しており、消費者態度に端的に現れている。賃金が上がるまで耐えるしかないが、他方、生産で陰りが出て来てしまった。欧米の引締めによる減速と、中国のゼロコロナの混乱で、輸出は崩れないだけで御の字であり、成長の牽引は厳しい。 米国の金利は峠を過ぎ、黒田日銀の粘り勝ちで、異様な円安は15円も戻した。いつの間にか、ターゲットが賃金に変わったようだが、金融緩和が足りないからではなく、財政の抑圧が過ぎて、消費が弱いからだ。生産性格差インフレーションが足りないので、2%目標も達成できない。やはり、いかに消費を増やすかである。 ……… 10月の商業動態・小売業は前月比+0.2だったが、10月のCPIの財が前月比+1.0にもなっており、実質ではマイナスである。11月の都区部は前月比+1.3である。物価高に影響され、11月の消費者態度指数は、前月比-1
第2次補正予算が閣議決定された。予備費分を除いた国債の増額は18.1兆円であり、名目GDP比で3.3%にもなるので、全部が直ちに需要に上乗せされたら、日本経済が暴走しかねない規模である。しかし、いつものごとく、誰も、そんなことは心配しない。安心できると言うか、甲斐性がないと言うか、効きの悪い経済対策は何のためにしているのかなと、毎度、考えさせられるのである。 ……… 経済対策の効きの悪さは、理由の一つは所得移転の多さだ。電気・ガス、燃料油の値上がり分の一部を補填するのに6.1兆円が充てられる。値上がりで実質所得が削られるのを軽減し、現状の低所得層の消費や高所得層の貯蓄を減らさないようにするだけだから、効いてはいるけど、見えにくい。これが国債増額分の1/3を占めており、需要の上乗せでなく、維持なので、成長が加速されるものではない。 次に目立つのは、投資の促進で、6兆円ある。直近のGDPの民間
国民年金の保険料納付を64歳まで延長することについて、「100万円も負担増!」なんて反応が出ているけれども、給付は、国庫補助が付いて、負担以上に増えるから、むしろ、「得」なんだよ。そうでなければ、財政投入に頭を悩ますこともない。こうした、目先の負担しか見ないのは、仕方のないところはあるが、後のことも考えないとね。まして、世代を超える無限の話となると想像もつかないかもしれない。 ……… 公的年金は、親世代を子世代が支える賦課方式になっている。そのため、子世代が6割に減る少子化が起こると、10/6=1.67倍の負担が必要になって、子世代には、7割増しの分が「損」になってしまう。ここまでは常識的だが、長寿化で高齢者が増えたり、給付水準を引き上げたりして、子世代の負担が大きくなる場合は、逆の「得」が生じる。なぜなら、子世代も、老後になれば、より長い、あるいは、より多い給付を受けるようになるからだ。
ドル円は150円に及び、二度目の円買い介入となった。日米の金利差拡大で円安になっているけれども、米国の金利は5%の「上限」に近づき、いつまでも続くわけではない。この7か月余りの円安局面は、YCCやマイナス金利の修正には良い機会だったはずだが、これを逃してしまうと、直すのは一段と難しくなる。黒田日銀総裁は、金融緩和が成長を導くと、本気で信じているのだろうなあ。 ……… 日本の成長は、輸出次第だ。それは、バブル崩壊が終わった1995年以降、極めて明確である。だから、金融緩和をして円安にしても、輸出が増えなければ、成長しない。そのため、日銀が、輸入物価の高騰というデメリットを覚悟で、金融緩和を継続しても、まったく意味がない。デフレ脱却を目指す金融緩和は、輸出促進の円安狙いという本音を隠す建前というわけではないようだ。 デフレ脱却と言っても、モノの物価は既に上がっており、サービスや賃金が上がってい
門間一夫さんの『日本経済の見えない真実』の中で、最も感慨深かったのは、サービス業の代表として散髪を例に挙げ、需要が生産性を伸ばすことを分かりやすく説明したところ(p.101-3)だった。世間では、この「真実」が分かっていないために、緊縮財政で消費を抑圧しつつ、投資を産業政策で促進して、成長を向上させるという、分裂した戦略が、相反を知らぬまま、推し進められている。成功しない戦略にしがみつく姿は痛々しいほどだ。 ……… 経営者からの「労働生産性を上げるには、どうすれば良いのか」という相談に、「賃金を上げることですね」と答えると、「何を言ってる」みたいな顔をされる。エコノミストとしては、賃金は付加価値になるから、当然の答でしかないが、経営者は、付加価値ではなく、モノやサービスの数量を増やすことをイメージしているので、ちょっと間抜けなやり取りが生じてしまうのである。 例えば、美容室の労働生産性を上
日銀出身の門間一夫さんが『日本経済の見えない真実』の終章に「重要性を増す財政の役割」を持ってくるとは、少し意外だった。財務省の領分は犯さないのが日銀の不文律だと思っていたのでね。むろん、門間さんの主張は、必要だし、正しい。マクロ経済を運営するのに、金融政策と需要管理は車の両輪で、独立して行うのは無理があり、日銀が財政に対して主張することは、政策的な意義がある。 ……… 2014年の異次元緩和第2弾は、巷間、消費増税を促すものだと言われた。2%の物価目標を達成したいのであれば、日銀は、消費を弱める増税を諫めるべきだったろう。「財政再建がなされなければ、金利が上昇に向い、金融緩和の効果が失われる」というロジックは、現実味の乏しいものだった。もちろん、財政とは関係なく、日銀がやれることをやるというのも、一つの在り方ではある。 もっとも、財政金融を整合させる以前の問題として、門間さんが提言するとこ
8月も終わり、東京のコロナ感染は、ピークだった月初の半分になった。月末に公表された7月の経済指標は、感染が急拡大していた頃のものになる。行動制限はかけられなかったが、冴えない結果だ。やはり、コロナ後になって、外需次第の景気に戻ったというところか。その外需の先行きは、資源高と金融引締めで心配な昨今なのに、国内は、国葬と旧統一教会の問題で、景気どころではない感じだ。 ……… 7月の商業動態・小売業は4-6月期とほぼ同じ103.8だった。この水準は、10%消費増税前を上回っていて、コロナ禍を超えて完全に回復している。ただし、名目なので、CPIの財で除して実質で見ると、6Ptもの差になる。消費増には、雇用者報酬がいるが、1-3月期GDPの段階で、2019年10-12月期を名目で上回っており、こちらも既に回復している。家計調査の消費性向は、相変わらず低いものの、消費増税後のレベルには戻った。8月の消
経済学には、二つの柱があって、需要と供給は価格によって調整されること、投資と貯蓄は金利によって調整されることだ。問題は後者で、現実には、金融政策で金利を動かしても、なかなか効かない。これが理論と現実の大きな違いである。今回の米国の金融引締め局面は、その最新の例になりそうであり、今後の日本の経済運営を考える上でも、よく見ておきたいところだ。 ……… 日本は、米国に遅れること1年で、ようやく、コロナ前水準のGDPを回復したが、米国がいち早く回復できたのは、2021年3月の「米国救済計画」によって財政出動を行い、回復期でも敢えて後押しをしたことがある。さらに、11月には「インフラ投資と雇用法」も成立させた。これは、リーマンショック後のオバマ政権が緊縮を余儀なくされ、長期停滞に至った教訓に基づくものであり、おかげで、雇用は急速に回復し、賃金も増した。 その反面、秋には、原材料高や供給制約もあり、物
アベノミクスは、2度の増税で消費抑圧を行うとともに、財政規模も縮小させてきた。絵に描いたような金融緩和と緊縮財政の組合せである。そして、注目する人は、ほとんど居ないが、公的年金もまた緊縮の舞台になっている。そこには、「高齢化で年金が膨張し、破綻しないか不安」という世間のイメージとは、まったく異なる実態がある。日本では数字を見ない財政論が盛んだが、度外視するには大き過ぎるのが年金だ。 ……… 8/5に2021年度の厚生年金の決算が発表になった。これを見ても素人には分からないので、収入を保険料+一般会計受入+基礎年金受入で、支出を給付費+基礎年金繰入で集計しなおし、フローの変化について収支を出すと、7000億円の黒字である。2020年度は-3400億円の赤字だったので、約1兆円の緊縮財政をしていたことになる。もちろん、こんなことをすれば、消費が抑圧されるのは当然である。 厚生年金は、予算だと、
4-6月期のGDPは、年率+3%程になりそうで、やっとコロナ前の水準に帰りそうだ。欧米には遅れた反面、インフレの心配は薄い。「塞翁が馬」であり、積極財政でいち早く回復させた米国がうらやましかったが、供給制約からウクライナ戦争へ連なり、景気後退も覚悟の金融引締めに追い込まれている。原油高と円安が一服し、頑固一徹の黒田日銀が粘り勝ちをする様相となり、この国の課題は相変わらず内需不足のままだ。 ……… 鉱工業生産は、6月が前月比+7.8と急伸したものの、前月の落ち込みの反動に過ぎず、4-6月期の前期比は-2.7と大きく低下した。毎度「来月は急上昇」の資本財(除く輸送機械)も、終わってみれば、前期比-1.1と後退である。ただし、設備投資を示す出荷については、前期比+0.9と1年ぶりのプラスとなった。また、3期連続で低下していた建設財は、前期比が生産で+4.5、出荷で+3.4と復活を見せている。 消
7/29に公表された「中長期の経済財政に関する試算」では、「2025年度に財政再建を達成するには5000億円ほど足りないから、歳出抑制に努めましょう」というのがメッセージのようだが、ベースになる2022年度の税収が前年度より-1.8兆円と減る設定なのでは、まるで現実味がない。ごく普通に税収が伸びるとして計算すると、2025年度には6.9兆円もの過剰達成になる。結論ありきにしか見えない試算をしているようでは、闇雲な緊縮の過ちを惹起し、成長を失速させることになる。 ……… 「試算」における税収は、名目成長率で伸びるというのが基本の設定だが、2022年度の名目成長率は+2.1%になっているのに、国の税収は-2.7%とマイナスに逆転している。これは、昨年末に決めた予算の数字のまま放置したせいで、この夏に判明した2021年度の税収実績が大きく上ブレしたことで歪なものになった。この一事でもって、「試算
アベノミスクは、異次元の金融緩和と機動的な財政出動の二つが特徴として語られがちだが、徹底した「消費抑圧」も、公言されることのない政策の柱である。それゆえ、消費が弱く、物価が上がらず、売上が高まらず、賃金が伸びない仕儀となった。黒田日銀がいくら「金融抑圧」をかけ、痛いほど円安にしたところで、抑圧される消費を超えるような輸出の増加でもなければ、2%物価目標をクリアしてのデフレ脱却とはならないのである。 ……… 7/22に家計可処分所得の1-3月期がGDP速報の参考系列として公表され、2021年度の数字が判明したこともあり、これで推移を見てみよう。まず、アベノミクスでは、雇用者報酬が伸びた。質はともかく、量が増大したのは、立派な成果であり、リーマンショック後の減少と低迷からの脱却に成功している。ところが、家計消費は伸びなかった。所得が増せば、消費も増えるという「法則」に反する異常事態である。 そ
日経の扱いは小さかったが、2021年度の地方の税収が43.3兆円だったことが公表された。地方財政計画からの上ブレは3.7兆円に及ぶ。国の当初予算からの9.6兆円の上ブレに続くもので、これらが素直に反映されれば、中長期の経済財政の試算は上方へシフトし、2023年度にはプライマリーバランスへ近接し、2025年度には5.2兆円の過剰達成に至ると見込まれる。この余裕を、危機的な状況にある少子化の緩和に充てたいところだ。 ……… 地方の税収の総額43.3兆円は過去最高であり、前年度決算比は+1.6兆円であった。内訳は、個人住民税が前年度決算比でほぼ横バイ、法人二税(含む特譲税)が+0.8兆円で11.2%増、地方消費税が+0.7兆円13.8%増という内容だった。個人住民税は、国の所得税の11.4%増と比べると目立って小さく、法人二税も、国の法人税の+21.4%増より小さい。地方消費税は、かなり大きく国
6月の消費者態度指数は、コロナ禍からの正常化で、ますます改善すると思いきや、前月比-2.0の低下となった。特に、暮らし向きが-2.6と大きかったので、物価高が影響したと見るべきだろう。こういうインフレへの反応は久々に見たね。他方、5月の商業動態・小売業は、前月比+0.6と好調で、4,5月平均は前期比+2.1にもなっている。だだし、CPI・財で割り引くと、+0.6に縮んでしまう。このあたりが、消費回復の実相を表しているようだ。 ところで、東洋経済(6/25)で、村井首相補佐官が 日本経済の最大の課題は「将来不安の軽減」としていたが、典型的な「大蔵省見解」かと思う。統計的には、家計の非食料消費の割合は超長期に渡り一定で、好不況で上下に微変動を繰り返す。ただし、アベノミクスは例外で、消費増税で将来に大きな安心感を与えたはずなのに、非食料消費が減っていく一方という単純な反応になった。要するに、消費
非正規の女性は、育児休業給付を受けられない。なぜなら、育児休業給付は、出産支援ではなく、出産退職の防止を目的とするからだ。そのため、結婚・出産は、収入が途絶する中ですることを覚悟しなければならない。おまけに、非正規は保育を受けるのも困難だ。あとは、支えてくれる男性を探すしかないが、デフレ下の若年雇用が悪化し、なかなか見つからない。これでは、少子化にならない方がおかしいだろう。 ……… 育児休業給付を、子が生まれて受け始める女性は、2020年度が37.3万人だった。この年の出生は85.3万人だから、受給者の比率は44%と半分以下でしかない。これでも、5年前の2015年度は29%に過ぎなかったので、上がってはいる。その要因は、受給者が+7.8万人増えた一方、出生が-18.1万人も減ったからだ。2020年度の平均受給月額は13.5万円、平均給付期間は12.1か月と推測される。給付総額は6,200
日経は、「骨太から浮かぶ3つの負担増、参院選後の一大課題に」(6/12)としていて、なかなか良い分析の記事なんだけど、足下では、税収が急増していて、緊縮が強まっている状況であり、経済政策の喫緊の課題は、逆の「負担減」になっているんだよ。もっとも、ろくに状況を把握せず、経済政策を立てるのは、日本の得意技だから、日経の言うとおり的外れな流れになる可能性が高いけれどね。 ……… 国の税収は、2021年度+7.6兆円、2022年度+3.4兆円となりそうで、計+11.0兆円だ、地方の税収は、計+6.1兆円くらいになる。他方、国の一般歳出は、予備費を除くと、2か年で+0.7兆円に過ぎず、地方は、ほぼ横ばいである。これで中長期の試算が上方へシフトする結果、財政再建の目標年次の2025年度には、国・地方の基礎的財政収支が9.5兆円もの「黒字」になる見込みだ。すなわち、目標のクリアはもちろん、過剰に達成する
6月半ばともなると、2次速報で1-3月期GDPの結果を聞かされても、過去のものの感はある。この間に、コロナ感染の収束、ウクライナ戦争の長期化、急速に進んだ円安と、大きな環境の変化があっただけに、なおさらだ。上方修正ではあるが、内容が悪く、設備投資は前期比でマイナスへと符号が変わり、押し上げは在庫が大幅に積み上がったことが理由だ。過去ではあるが、今後に尾を引きそうである。 ……… 設備投資は、実質で前期比-0.7%と下方修正となり、水準は1年前に逆戻りだ。遡れば、8年前の2014年1-3月期と同レベルと思うと、寂しい限りである。輸出は105兆円を回復して、最高水準にあるから、設備投資がもう少し高くても良さそうなのだが、輸出や消費の動きと逆行して減った。機械設備等は寄与度0.0だが、輸送用機械が-0.1になっていて、企業の建設投資もマイナスだったようだ。 今後については、鉱工業生産の予測が異様
この1-3月期のGDPは、またもマイナス成長になりそうである。コロナの感染拡大でマンボウがあったり、原油高で物価が上がったりしたから、仕方のないところはあるが、2年間で4度目のマイナス成長となり、ピークより20兆円も少ない水準をさまよい続ける。日本だけがコロナ前水準から遠く、10%消費増税前への回復となると、いつになるのか、まったく見通せないのであった。 ……… 3月の鉱工業生産は、前月比+0.2となったものの、1月の下落を2か月かかって取り戻した程度である。内外の設備投資の動向を示す資本財(除く輸送機械)は横バイで、水準は増税前より高いものの、1-3月期は前期比-0.2となった。消費財の状況は深刻で、7-9月期の大きな落ち込みを10-12月期に取り戻せなかったのに、1-3月期には-0.4とダラ下がりである。建設財も情けなく、1-3月期は-0.8と、3期連続での低下となった。 コロナ蔓延で
MMT学派のS・ケルトンが言うように「(懸念すべきは、日本が)過去の過ちを繰り返し、景気回復が本格化する前に、その勢いを挫くことだ。そうした事態は過去に何度も起きている。」というのは、まったく正しい。ただ、緊縮財政への戦いを始める前には、終わらせ方まで考えておかなければならない。自国通貨で借金できる国は財政破綻しないという理論があるだけでは、とても政策にならない。 ……… 米国は、リーマンショック後の早すぎる財政撤退で景気を失速させたオバマ政権の蹉跌を教訓に、コロナショックの立ち直りのタイミングで積極財政を打ち、真っ先にコロナ前水準の回復を達成して、賃金増を伴うインフレまで懸念されるまでになった。金融緩和は平常化へと向い、資源高の中でドル高も享受できている。日本が円安で苦しむのは、黒田日銀の拘りもあるにせよ、財政を含めた政策協調の観点のなさにもある。 日本では、「中長期の試算」で明らかなよ
金曜に公表された3月の東京都区部の消費者物価は、前月比+0.3と続騰し、特にエネルギーの上昇があって、財の上昇は、2月の+1.1と同様、3月も+0.8と大幅だ。他方、サービスは、前月比+0.1と、ほぼ横バイである。金融政策の目標は物価の安定であり、物価が上がるようなら、金融を引き締め、沈静化を図るのがセオリーだが、今のように財とサービスが分かれていると、なかなか悩ましいことになる。 ……… 教科書的には、金融政策の主な対象は設備投資であり、金利の上下によって、増減させることになっている。しかし、現実には、設備投資は、金利よりも、需要リスクに強く影響され、その動向に左右されるため、多少、動かしたくらいでは、なかなか効かない。よく言われるように、不況時に「ヒモ」で押せないのはもちろん、好況時の抑制だって容易でなく、なかなかブレーキが効かないのである。 実際に金利が効くのは、住宅と為替に対してだ
10-12月期の資金循環統計における一般政府の資金過不足は、前年同期比で+2.2兆円となり、前の7-9月期ほどではないにせよ、引き続き着実に改善、すなわち、緊縮となった。改善幅が小さめだったのは、12月中に補正予算が成立して、例年より早めに執行がなされたためと思われる。1-3月期でのコロナ蔓延や戦争勃発による原油高を思えば、補正予算を早く上げていたことは幸いだった。 ……… 一般政府の内訳を見ると、中央政府と地方公共団体の改善幅は1,2千億円でしかなく、社会保障基金の寄与がほとんどである。主力の公的年金は、相変わらず黒字基調にあるので、医療や労働の赤字が縮小したことによる。10-12月期はコロナが収まっていたためだろう。今後は、コロナがまたも蔓延してしまった一方、高い税収が期待できるため、更に財政収支は改善すると思われる。 部門別に移動平均で見ると、家計は、コロナ禍での高水準の過剰が続いて
翁邦夫さんは、『人の心に働きかける経済政策』で、黒田日銀による期待に働きかける異次元緩和のロジックを完膚なきまでに論破しているが、やや虚しさを覚える。それは建て前に過ぎず、公言できない真の目的は円安と株高を呼び込むことにあって、これには成功したと言えるからだ。もっとも、狙った輸出の拡大は期待した程ではなく、消費増税の破壊力を軽く見たために、物価の2%目標は夢と消えたわけであるが。 ……… 金融緩和が設備投資に効かないことは、ケインズの昔から実証されていて、金利が設備投資を最適化するのは、教科書の上だけである。実際に効くのは、為替と資産に対してだ。すなわち、自国通貨安で輸出が伸び、住宅や建設投資が増し、それらが生み出す需要が設備投資を引き出していく。設備投資は間接的に動かされるものであって、期待は需要の動向で形成される。最適化に向わない不合理な行動になるけれども、これが現実だ。 法人企業統計
「豊かな社会になると、お金が好きになって、あまり消費をしなくなる」として、長期停滞の理由に擬せられたりするが、長期の家計調査を眺めると、それはちょっと違うということになる。確かに、食料消費に充てる割合は減少してきたが、それ以外の非食料消費の割合は、50年間に渡って、ほぼ一定だったからだ。それを覆し、消費の割合を急低下させたのは、アベノミクスになってからである。 ……… 下図で分かるように、食料消費の割合は、傾向的に低下していたが、1997年のハシモト緊縮財政の後、デフレの長期停滞に入ると下がらなくなった。他方、非食料消費の割合は、ほぼ一定である。残差の貯蓄は、むしろ、デフレになってからは減り気味だ。つまり、お金が好きになったから、長期停滞になったとは言いがたい。消費を減らしてお金を貯めるようになったのは、アベノミクスでのことだ。 「非食料消費が一定」というのは、赤羽隆夫が発見した非常に重要
12月の鉱工業、商業動態は、コロナが収まっていたにもかかわらず、いずれもダウンとなり、この様子では、10-12月期のGDPは、コロナの蔓延で大幅なマイナス成長だった前期の反動が出るはずなのに、伸び悩みそうだ。プラス成長であっても、前期の落ち込みを取り戻すところまで行くか微妙で、景気の下地の弱さがうかがわれる。コロナの影響だけでなく、10%消費増税後の低成長構造との戦いでもある。 ……… 12月の鉱工業生産は前月比-1.0となって、10-12月期が前期比+1.0になったものの、7-9月期が-3.6もの落ち込みであった割に鈍いものとなった。前期の落ち込みの原因であった自動車は12月までにほぼ回復したが、資本財(除く輸送機械)が前期比-2.2、建設財が前期比-2.3といずれも2期連続の低下である。投資部門の低調さは、コロナの動向とは別に、今後の景気に不安を抱かせるものである。 次の1-3月期に関
半期に一度の「中長期の経済財政に関する試算」が公表され、2023年度にGDP比で4.8%、額にして27.9兆円もの緊縮を一気にやる計画になっているけれど、本気なのかな。上昇負荷がかかり過ぎ、人が耐えられざるものになりかねないのに、もう少し加えて2025年度の財政再建を予定どおり達成しようという意欲さえ滲んでおり、そら恐ろしいものを感じるよ。「ダイエットにやり過ぎはない」といった思想は何とかならないものか。こんなものを見せられて、誰もまずいとは考えないのかね。 ……… 日本経済が「失われた25年」になったのは、回復期に財政再建を焦って急激な緊縮をかけ、成長を失速させるのを繰り返してきたからだ。デフレを抜けたければ、徐々に進めれば良いだけなのに、どうしても我慢できない。「試算」の2023年度の赤字のGDP比は-1.4%まで縮み、コロナ禍を抜けた病み上がりの時期に、景気が好調だった2018年度の
マイナスに及ぶ異次元の金融緩和、世界一の政府債務比率の財政出動、これだけやってもダメだから、ムダなんだというのは、よく聞くが、高級食材を使えば必ずうまい料理になると言うのと似て、使い方が大事なことを忘れている。不況期には思い切った財政出動をしても、回復しだすと急激な緊縮をかけて失速させる。こういう拙い運営をしているから、大借金とデフレの共存となる。それは、今、やろうとしていることでもある。 ……… デフレ脱却の最大のチャンスは2014年だった。民主党政権末期の2012年10-12月期を底として、円高是正を背景に輸出が急回復し、公共と住宅の建設投資も増え、消費も伸びていったからだ。2014年4月に消費増税をしていなければ、輸出増は更に3四半期続いたので、デフレ脱却となっていただろう。逆に言えば、なぜ、大チャンスを緊縮財政で潰さなければならなかったのかである。 無謀な消費増税計画は民主党政権が
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『経済を良くするって、どうすれば』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く