日経は、「骨太から浮かぶ3つの負担増、参院選後の一大課題に」(6/12)としていて、なかなか良い分析の記事なんだけど、足下では、税収が急増していて、緊縮が強まっている状況であり、経済政策の喫緊の課題は、逆の「負担減」になっているんだよ。もっとも、ろくに状況を把握せず、経済政策を立てるのは、日本の得意技だから、日経の言うとおり的外れな流れになる可能性が高いけれどね。
………
国の税収は、2021年度+7.6兆円、2022年度+3.4兆円となりそうで、計+11.0兆円だ、地方の税収は、計+6.1兆円くらいになる。他方、国の一般歳出は、予備費を除くと、2か年で+0.7兆円に過ぎず、地方は、ほぼ横ばいである。これで中長期の試算が上方へシフトする結果、財政再建の目標年次の2025年度には、国・地方の基礎的財政収支が9.5兆円もの「黒字」になる見込みだ。すなわち、目標のクリアはもちろん、過剰に達成することになる。
ハッキリ言ってやり過ぎで、これだけ急速な緊縮をすると、成長に悪影響が出るし、それを避けるべく、黒字分だけ支出を増やしたとしても、財政再建とも両立する。特に、2023年度の緊縮幅は、GDPの4.9%と激しいため、2022年度補正と23年度本予算で、どれだけ支出を増やすかが焦点となる。既に、2022年度は、1次補正で、予備費を除き1.6兆円を措置しているけれども、まだ7.8兆円もある。
この「余地」は、自然増収による財源だから、そのとき限りの支出に限る必要はなく、少子化対策などの恒久的な再分配に充てられる。例えば、非正規を含むすべての女性に育児休業給付を拡大しても7500億円だ。低所得者の年金保険料を軽減し、勤労者皆保険を一気に実現しても2兆円である。それでも「余地」は5兆円も残る。岸田首相が国会で答弁している子ども関連予算の「倍増」は、本人が思うより現実的で、教えてやりたいくらいだよ。コロナ禍で出生が激減し、「少子化非常事態」とさえ言える状況で、今、やらずしてどうする。
キシノミクスの「新しい資本主義」は、成長と分配の循環が看板だ。その大きなチャンスが巡ってくる。アベノミクスの緊縮の悪癖を是正して、本来的な経済政策を取り戻せば良い。少子化対策は、「人への投資」の大本であり、社会の持続可能性の回復につながる。出生率の上昇は、年金収支を改善し、財政負担も軽減する。ひいては、経済成長も高める。若者・女性への再分配は、財政や経済の上でも誠に合理的である。
他方、いつもの補正のごとく、成長戦略と称して、産業政策に使うのも結構だが、肩代わりになるだけで、循環にならない場合があるため、精選が必要である。例えば、コロナの事業者への支援金は、火急の折に負った借入れの返済に充てられるのが常識的だ。設備投資や研究開発の補助は、需要に合わせて増やす以上の伸びが出ないと意味がない。むしろ、中小企業にとっては、社会保険料の軽減の方がありがたい。円滑にパートの労働時間も増やせるようにもなるしね。
(図)
………
今後、財政再建の過剰達成が隠せなくなったとき、財政当局は、どういう主張を始めるのだろう。今の利払費の8.2兆円を賄うくらいまで黒字を出すべきとか、ゴールを更に先へと変えるのか。実は、一般政府で見れば、公的年金は既に4.5兆円の黒字になっていて、これを加えると、2025年度の過剰達成は、14兆円にもなる。どう見ても、家計が疲弊する一方で、財政の余裕は十分である。いつも言っていることだが、経済政策は、最新状況を把握し、全体を見て構想したいものだ。そうでないから、今の有様なのだがね。
(今日までの日経)
急性期病床「名ばかり」3割。金融緩和、日銀は維持。スイス中銀0.5%利上げ NY株800ドル超下落 円は急騰2円超高。日本の家計、緩まぬ財布 エネルギー除き物価上昇0%台。
………
国の税収は、2021年度+7.6兆円、2022年度+3.4兆円となりそうで、計+11.0兆円だ、地方の税収は、計+6.1兆円くらいになる。他方、国の一般歳出は、予備費を除くと、2か年で+0.7兆円に過ぎず、地方は、ほぼ横ばいである。これで中長期の試算が上方へシフトする結果、財政再建の目標年次の2025年度には、国・地方の基礎的財政収支が9.5兆円もの「黒字」になる見込みだ。すなわち、目標のクリアはもちろん、過剰に達成することになる。
ハッキリ言ってやり過ぎで、これだけ急速な緊縮をすると、成長に悪影響が出るし、それを避けるべく、黒字分だけ支出を増やしたとしても、財政再建とも両立する。特に、2023年度の緊縮幅は、GDPの4.9%と激しいため、2022年度補正と23年度本予算で、どれだけ支出を増やすかが焦点となる。既に、2022年度は、1次補正で、予備費を除き1.6兆円を措置しているけれども、まだ7.8兆円もある。
この「余地」は、自然増収による財源だから、そのとき限りの支出に限る必要はなく、少子化対策などの恒久的な再分配に充てられる。例えば、非正規を含むすべての女性に育児休業給付を拡大しても7500億円だ。低所得者の年金保険料を軽減し、勤労者皆保険を一気に実現しても2兆円である。それでも「余地」は5兆円も残る。岸田首相が国会で答弁している子ども関連予算の「倍増」は、本人が思うより現実的で、教えてやりたいくらいだよ。コロナ禍で出生が激減し、「少子化非常事態」とさえ言える状況で、今、やらずしてどうする。
キシノミクスの「新しい資本主義」は、成長と分配の循環が看板だ。その大きなチャンスが巡ってくる。アベノミクスの緊縮の悪癖を是正して、本来的な経済政策を取り戻せば良い。少子化対策は、「人への投資」の大本であり、社会の持続可能性の回復につながる。出生率の上昇は、年金収支を改善し、財政負担も軽減する。ひいては、経済成長も高める。若者・女性への再分配は、財政や経済の上でも誠に合理的である。
他方、いつもの補正のごとく、成長戦略と称して、産業政策に使うのも結構だが、肩代わりになるだけで、循環にならない場合があるため、精選が必要である。例えば、コロナの事業者への支援金は、火急の折に負った借入れの返済に充てられるのが常識的だ。設備投資や研究開発の補助は、需要に合わせて増やす以上の伸びが出ないと意味がない。むしろ、中小企業にとっては、社会保険料の軽減の方がありがたい。円滑にパートの労働時間も増やせるようにもなるしね。
(図)
………
今後、財政再建の過剰達成が隠せなくなったとき、財政当局は、どういう主張を始めるのだろう。今の利払費の8.2兆円を賄うくらいまで黒字を出すべきとか、ゴールを更に先へと変えるのか。実は、一般政府で見れば、公的年金は既に4.5兆円の黒字になっていて、これを加えると、2025年度の過剰達成は、14兆円にもなる。どう見ても、家計が疲弊する一方で、財政の余裕は十分である。いつも言っていることだが、経済政策は、最新状況を把握し、全体を見て構想したいものだ。そうでないから、今の有様なのだがね。
(今日までの日経)
急性期病床「名ばかり」3割。金融緩和、日銀は維持。スイス中銀0.5%利上げ NY株800ドル超下落 円は急騰2円超高。日本の家計、緩まぬ財布 エネルギー除き物価上昇0%台。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます