予算の季節なので、その関係の話題が多くなっていたが、日経も「経済財政の司令塔はどこに」ということを社説で書くようになったし、今日は、世間でまったく話題にならなくなった年金の話をしよう。
年金の記事が新聞に出なくなったのは、民主党の公約が政治日程に上っていないからに過ぎない。少子化は相変わらずなので、年金制度の問題状況が変化したわけではない。また、年金制度の検討の場は、厚生労働省の審議会であるので、政権交代に伴って停滞しているというのもあるのだろう。
ここで、唐突にクイズである。(問)次の3つのうち、負担増になるのはどれか。①高齢者の増加、②少子化、③給付水準の引上げ。なにやら、どれも負担増になりそうに見えるが、本当の負担増になるのは少子化だけである。従って正解は②になる。
意外な答えに途惑われるかもしれないが、②の高齢者の増加は、寿命の伸長によるものなので、確かに現役時代の保険料は高くなるが、老後には同じ以上の寿命を享受できるから、結局は保険料以上の給付を受けることになる。「得」はしても「損」にならないのだから、負担増とは言えない。③の給付水準の引上げについても、同じ理屈である。
したがって、現状の出生率は、最低だった1.26から2008年は1.37へと、少し回復しただけなので、年金の置かれる問題情況に変わりがないことは、お分かりいただけるだろう。それでも、現行の年金制度の財政見通しの前提とした出生率のレンジには戻ってきているので、一時の危機的な感じは薄れてはいる。
もっとも、現行の年金制度が前提にしているのは出生率だけでなく、基礎年金の2分の1国庫負担も重要である。こちらは、2009年度に形式上の措置はされたものの、財源は「埋蔵金」を充てることにしたので、いずれ恒久的な財源を見つけなければならない。必要な財源は2.5兆円にもなるので、容易なことではない。
筆者としては、道路特定財源の暫定税率廃止分を新たな「環境税」で吸収し、ここに充てるべきだと考える。環境と福祉を統合し、使途を明確化するということならば、国民の納得も得やすいのではないか。国債が膨張と言われているが、基礎年金国庫負担増で年金特別会計を助けたから、一般会計が苦しくなっただけという側面もある。肝心なのは、国債の大きさより財源と使途である。やれやれ、年金の話のつもりが、財政の話へと戻ってしまった。
(今日の日経)
郵政見直し閣議決定。普天間移設ゲーツ長官唯一の案。社説・経済財政の司令塔はどこに。納税者番号、給付つき税額控除と一体。政治主導・審議会の憂鬱。中国、車生産1000万台突破。街の電器店・量販店系列化加速。
年金の記事が新聞に出なくなったのは、民主党の公約が政治日程に上っていないからに過ぎない。少子化は相変わらずなので、年金制度の問題状況が変化したわけではない。また、年金制度の検討の場は、厚生労働省の審議会であるので、政権交代に伴って停滞しているというのもあるのだろう。
ここで、唐突にクイズである。(問)次の3つのうち、負担増になるのはどれか。①高齢者の増加、②少子化、③給付水準の引上げ。なにやら、どれも負担増になりそうに見えるが、本当の負担増になるのは少子化だけである。従って正解は②になる。
意外な答えに途惑われるかもしれないが、②の高齢者の増加は、寿命の伸長によるものなので、確かに現役時代の保険料は高くなるが、老後には同じ以上の寿命を享受できるから、結局は保険料以上の給付を受けることになる。「得」はしても「損」にならないのだから、負担増とは言えない。③の給付水準の引上げについても、同じ理屈である。
したがって、現状の出生率は、最低だった1.26から2008年は1.37へと、少し回復しただけなので、年金の置かれる問題情況に変わりがないことは、お分かりいただけるだろう。それでも、現行の年金制度の財政見通しの前提とした出生率のレンジには戻ってきているので、一時の危機的な感じは薄れてはいる。
もっとも、現行の年金制度が前提にしているのは出生率だけでなく、基礎年金の2分の1国庫負担も重要である。こちらは、2009年度に形式上の措置はされたものの、財源は「埋蔵金」を充てることにしたので、いずれ恒久的な財源を見つけなければならない。必要な財源は2.5兆円にもなるので、容易なことではない。
筆者としては、道路特定財源の暫定税率廃止分を新たな「環境税」で吸収し、ここに充てるべきだと考える。環境と福祉を統合し、使途を明確化するということならば、国民の納得も得やすいのではないか。国債が膨張と言われているが、基礎年金国庫負担増で年金特別会計を助けたから、一般会計が苦しくなっただけという側面もある。肝心なのは、国債の大きさより財源と使途である。やれやれ、年金の話のつもりが、財政の話へと戻ってしまった。
(今日の日経)
郵政見直し閣議決定。普天間移設ゲーツ長官唯一の案。社説・経済財政の司令塔はどこに。納税者番号、給付つき税額控除と一体。政治主導・審議会の憂鬱。中国、車生産1000万台突破。街の電器店・量販店系列化加速。