Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

復興って、どうすれば

2011年08月31日 | 経済
 今回の党首選では、各候補とも「復興に全力で取り組む」としたが、具体的な方策は、さっぱり分からなかった。そもそも、中央政府ができることには限りがある。それを上手く見せることが重要になる。地方からの不満というのは、たった三つだ。(1)カネがない、(2)規制が邪魔、(3)方法が分からないである。

 (1)については、筆者なら、1戸当たり全壊1000万円、半壊500万円を基準に、市町村に資金を分配して自由に使わせる。「カネがないなら、これを使え」というわけである。一般国民には「1戸に1000万円もあれば、とりあえず間に合うはず」と説明する。警察発表では、全壊11.4万戸、半壊15.4万戸なのだから、それでも総額は1.9兆円に過ぎない。

 今日の日経社説では、「三次補正の規模精査を」とあるが、政府の復興費の算定は、増税ねらいで膨らみ過ぎている。23兆円も必要と言うが、これでは1戸当たり1億円を超えてしまう。「1億円あげるから、復興せずに、他県に引っ越してくれ」という暴論が成り立つほど、いい加減なものなのだ。

 (2)については、筆者なら、被災市町村に1人ずつ総務省(旧自治省)の職員を送り、首長の御用聞きに専念させる。被災市町村の「カネと規制」の悩みを週一で報告させ、それを直ちにHPで公表するとともに、復興本部は、即断即決で対処法の答え作って公開することにする。できないならできないで、早く答えが分かり、次善の策が見つかることが大切だ。

 (3)については、1か所に人材を集中投入して、モデルを作る。例えば、自衛隊の放射能除染隊を福島県の一町に送り込み、除染の具体的なノウハウを確立し、復興が可能であることを示す。それは、自衛隊に除染をさせるということではなく、ノウハウができたら、自衛隊は除染をする事業者の教育役に回る。

 以上が本コラムの提案であるが、つくづく、復興も以前からの準備が大切だと感じられる。戦後の農地改革は、占領軍によって実現されたが、戦前からの農林官僚の蓄積が活かされたものだ。今回の震災は、漁業を、資源管理で高付加価値化する機会にもなり得たはずだが、そうなりそうもない。日経オンラインに掲載された、法大の岡本義行先生の「日本の漁業は高収益化できるか」の論考を見るにつけ、道は遠いと感じた。

 他方、三陸縦貫自動車道は、復興道路として、迅速に計画が策定された。まあ、進捗率の低い宮古市以北も果たして必要かという気はしないでもないが、準備があればこそであろう。他方、三陸沿岸の鉄道は、復旧の見通しが立たない。赤字ローカル線が被災した場合、どのように交通手段を確保するか、例えば、復旧の代わりに基金を作ってバスの補助をするといった検討の蓄積がないからであろう。

 やや古い話になるが、公正取引委員会は、通産省や建設族にいじめ抜かれた冬の時代にも、独禁法の強化策を地道に研究していた。それが米国の目にとまり、日米構造協議の場で取り上げられ、日の目を見ることになる。その後、経済の自由化を背景として、制度と体制が着実に整えられていったのである。

 今日の経済教室では、藤田昌久先生が東北州を提唱しておられるが、中心となるだろう宮城はともかく、周辺の岩手や福島は必ずしも道州制に好感を持っていない。東北州なり、復興庁なりの財源や権限も不明確では、魅力を感じろといっても無理がある。中央からの巨額の復興費の移転が必要とされているときに、分権や自律と言われてもリアリティが乏しい。本コラムが考えるのは、あくまでも「どうすれば」の具体策である。

(今日の日経)
 幹事長に参院・輿石氏。社説・成長と財政再建の実現。電力制限令前倒し解除、節電目標超え達成。復興増税与党の壁、補正と同時決着焦点。日債銀事件、相次ぐ逆転無罪。がれき8割超撤去、費用3519億円の42%。中国、不動産バブル懸念増す、地方政府向け融資3割増、34兆円。インド経済緩やかに減速。経済教室・脱国境脱中央・藤田昌久。

※前原政調会長は次期総選挙のマニフェストも作るのだろうね。※これだけ節電できるのだから、日本人は大したものだよ。※がれき処理だけで数兆円の予算が必要などと言われていたが、こんなものだ。※中国も目が離せないなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新首相に捧げる経済運営

2011年08月30日 | 経済
 日本の財政当局の政治力の凄さには恐れ入った。2年前、政権を奪取した民主党で、閣僚にもなれなかった男が、財務省の副大臣を振り出しに、宰相の座を射止めるに至るとは、誰も予想できなかったことだろう。

 野田財務相は、前原氏の出馬で、一時は当選圏外とも言われたが、新手の円高対策を取りまとめて実行力を見せつける一方、「偶然」にも、前原氏には、国税庁から脱税を摘発された企業からの献金疑惑が持ち上がり、党首選の決選投票への切符を手中にした。

 さて、そんな新首相が始めるのは、デフレ下の緊縮財政である。これまで打ち出されてきた財政当局の方針に従えば、必ずそうなる。今年度予算は、当初は政策的経費が71兆円であったが、震災対応の補正予算によって、政策的経費69.5兆円+復興費6兆円に組み替えられ、75.5兆円になっている。

 これに対し、来年度予算の概算要求基準は、政策的経費が相変わらずの71兆円なのだから、4.5兆円の歳出削減をすると宣言しているようなものだが、補正予算を勘案した前年度との比較を、財政当局がまったく説明してくれないために、世間は、そして、おそらく野田新総理も、何も分からないまま、進めていくのであろう。

 財政当局が金科玉条のごとく主張する「公債発行44兆円枠」も、今年度一次補正で、年金国庫負担の2.5兆円分に充てられる「埋蔵金」の付け替えを行って復興費を用意したために、事実上、46.5兆円に拡大している。付け替えを行えば、年金は積立金を取り崩し、保有の国債を手放さねばならないから、経済的には国債増発と変わらない。

 こうした操作を行っているために、予算書を見ても、せいぜい補正後に、歳出が71兆円から73兆円に膨らんだようにしか分からないようになっている。本当は、税収以外の歳入の枠組みを設定するのであれば、「公債発行44兆円+当初埋蔵金7兆円+年金取崩し2.5兆円」を基準にしなければならない。借金も、資産減らしも、経済的な影響は同じだからだ。

 財政当局の手口は、埋蔵金以下の部分を見えなくすることによって、歳出削減圧力をかけ、どうにも削れないとなれば、昨年度の鉄建機構剰余金のように、「こんなものが見つかりました」と言って出してくる。おそらく、来年度は、年金国庫負担2.5兆円について、2013年度の消費税増税を前提に、「つなぎ国債」で賄うといった「発見」をしてくれることだろう。

 また、財政当局は、税収増隠しもしている。来年度が2.2%成長でも、2.5兆円くらいは見込めるはずだ。その上、年少扶養控除廃止で0.4兆円の増税になること、子ども手当の削減で0.5兆円の負担増になること、毎年の厚生年金保険料アップで0.5兆円の負担増になることも忘れてはいけない。復興増税なんかしなくても、4兆円の負担増にはなる。

 あとは、来年度の復興費がどのくらいになるかである。今年度の6兆円に、4兆円の負担増分を加えた10兆円くらい用意しないと、緊縮財政になってしまう。これは、今年度の三次補正で10兆円を用意し、来年度は復興費をゼロとして、公共事業費などの従来の枠組みの中で実施することにしても、同じ話になる。

 こうしてみると、今後の日本経済は、復興増税を行えば、その分だけ財政デフレがかかる計算である。それがどのくらいで決着するかがポイントだ。加えて、巨額に積まれた復興費がどれだけ執行されるかによっても、景気は左右される。おそらく、足取り重く、回復して行くといったところだろうか。これでも、10兆円の財政デフレをかけ、年度後半にマイナス成長に突き落とした2010年度の財政運営よりはマシになるはずだ。

 野田新総理は、財政当局の力によって、その座を得た。財政当局の言うとおりにしていれば、政権を維持していくのは可能だろう。難しい与野党協議も裏でいろいろとやってくれるはずだ。しかし、デフレに苦しむ国民は救われない。20年間、毎日、辻立ちをして、国民に訴えたかったこととは、これだったのかね。

(今日の日経)
 野田首相きょう選出、復興財源、自公と協議。電力制限令を9日解除。社説・復興増税で指導力示せ。円高対策・成長戦略が急務・経済界が注文。復興資金需要伸びず。需要不足20兆円・内閣府。非正社員の不本意が増加・厚労省調査。対中姿勢に揺らぎ・比・越。掃除機の車輪が球体に。経済教室・正社員の入り口・川口大司。

※日経は財政収支の実態が分かっていない。復興増税分だけ財政デフレになるとは知らないのだろう。経済界も同じだ。円高も低成長もデフレでは変えようがない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

党首選の展開と政策論争

2011年08月29日 | 経済
 民主党の党首選は、意外な展開になっているようだね。野田氏が2位になりそうだとは、前原氏出馬が決まった時点で、誰も予想してなかったのではないか。本コラムは、8/23に、合理的な選択なら、野田氏になるとしていたわけだが。

 もし、筆者が小沢元代表なら、手勢を回し、野田氏の2位を確実にする。自陣の海江田氏は、過半数は困難でも、1位は揺るがないから、反小沢色が強い前原氏を決戦投票から排除することを、まずは目標にする。その意味で、野田氏が前原氏と互角になった時点で、前原氏の目はなくなったと見てよかろう。まあ、小沢氏を戦略家と仮定したら、ということだが。

 こうしてみれば、初めから、幹事長を渡すことを条件に、野田氏を支持しておけば、党内融和が図られたように思える。直線的にそうできない派閥内の事情があったのかもしれないし、海江田氏による過半数確保の可能性も追求したかったのかもしれない。その辺の政局は、筆者の関知するところではない。

 念のため言っておくが、筆者は野田氏を支持しているわけではない。むしろ、野田氏が進めてきた財政運営は、日本経済にとって最善ではないと考えている。こうした見方を持つと、つい野田氏以外の候補に同情しがちなバイアスがかかるものだが、それは意識して排除し、戦略的見地だけで判断している。

 もっとも、野田氏が8/23に書いたような戦略で本当に来た場合、端倪すべからざる統治能力があるとして、支持していたかもしれないな。海江田氏のような反緊縮財政・マニフェスト重視では、自民党との間で開きが大き過ぎ、何もできずに混迷するおそれがある。それよりはマシというわけである。

 今回の代表選では、期間が短く、政策論争が乏しいという批判がされたが、各候補の主張を聞く限り、具体的な政策を持っているようには見えず、どうせ中身がないのだから、時間をかけてもムダだったように思える。そもそも、質問する側が、日本にどのような政策課題があるかを、良く分かっていないのだから、どうにもならない。

 例えば、政府の「経済財政の中長期試算」では、2012年度、2.7~2.9%の成長を果たす中で、復興増税を行うと、物価上昇率は0.3%にとどまるとしている。このところの円高と欧米経済の減速で、民間調査機関は、成長率予想を2.2%程度に下方修正した。これで復興増税を行えば、物価が下がり、デフレが続くのは必定だ。もはや、復興増税の是非など、あり得ない状況にある。むろん、デフレも関係なく、財政再建に励むというのなら、話は別だが。

 今日の経済教室では、みずほ総研の杉本和行理事長は、元財務次官だけあって、「財政赤字の臨界点近づく、政治の実行力不可欠」としている。ナニやら、野田氏の応援のような絶妙なタイミングであり、さすが、日本の財政当局の政治力は大したものである。むろん、経済的な見地での内容は見るべきものがなく、当局の見解そのものにすぎない。

 ところで、杉本さんのみずほ総研も、8/17に「2011・2012年度内外経済見通し」を公表している。2012年度は、復興増税として所得税の10%の定率増税を組み込んだだけで、成長率は2.0%にとどまり、コアCPIはマイナス0.8%に落ちるというものだ。そうすると、杉本さんの趣旨は、デフレが加速しても、政治が実行力を見せて増税をやれということなのか。デフレが続いては、財政再建もあり得まい。

 杉本さんも、天下りして民間エコノミストになったのだから、「中長期的に財政再建が必要」という一言居士を続けるだけでなく、まじめに経済状況を把握し、当面をどうすべきかも考えるべきではないのかね。みずほ総研のチーフエコノミストの高田創さんは、的確な経済見通しを出す腕前を持っており、これを活かすだけの度量も必要だろう。そして、高田さんには、これまでと変わらず、自由な活動を続けてほしいと、切に願っている。

(今日の日経)
 海江田氏の過半数は困難。3党合意を海江田氏は見直し視野。車増産、部材不足の懸念、人員の確保も遅れ。社説・攻めの省エネ。領空侵犯・東北を高齢者支援モデルに・清成忠男。中国国家電網・比で買収、海外に野心。政治突き上げる企業力・安西巧。仙台を新エネ拠点に・JX木村社長。放射線巡る混乱の収束遠く、安心な値定まらず、専門家の見解分かれる。経済教室・財政赤字の臨界点近づく・杉本和行。「街放棄論」乗り越えた大阪市。

※人員はジャストインタイムとはいかないのだよ。※社説の意欲は分かるが、もの足りない。※清成先生、高専賃を作ることだよ。※比というのが政治的に嫌だね。※安西さんは震災対策の規模の適当さが分かっているようだ。※今日の科学技術欄の放射線に関する一連の記事は非常に良いものだったよ。珍しく褒めておこう。※好事例を見つけてくれた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

8/26の日経

2011年08月26日 | 経済
 旅行のため、数日、休載します。

(今日の日経)
 割安携帯参入相次ぐ。原発周辺町村が合併検討へ。金急騰が一服、円も下げる。欧州銀、国債下落を懸念、資金繰り警戒。新児童手当・増収の地方、国と綱引き。生保新規制に日本勢恐々。FT・財政再建は慎重に。建機、先行きに不透明感。太陽電池、拡販も採算悪化。リサイクル収益拡大。経済教室・ユーロ安定へ離脱ルール・小川英治。

※子ども手当のために年少扶養控除を廃止したのに、それを地方が自分の勝手にしようという発想自体が理解できない。※FTなど海外ではよく見られる評論だ。日本は緊縮一色だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

必要なのは覚悟でなく状況把握

2011年08月25日 | 経済
 日本の場合、情報を隠して闇雲な緊縮財政を行う財政当局と、埋蔵金・政府通貨・日銀引受けを主張する「禁じ手派」の両極端に分かれている。本コラムのように、経済状況を見ながら、どの程度の財政再建が適切かを検討する「平凡派」が一番影が薄い。だから、こうして書いているわけであるが。

 昨日、ムーディーズの日本国債への格付けが下がったが、その根拠は曖昧だ。日経にもあるように、遥かに高い金利を要求されているイタリアより格付けが低いと言うのは、何とも説明がつかないだろう。ムーディーズが、マーケットとは別の評価を下すというのは、いかなる独自の情報によるのであろうか。

 そもそも、格付けの見直しは、震災被害による財政悪化の懸念から始まったが、ムーディーズの被害想定は、後に大幅に下方修正された内閣府の当初の推計を倍加させた過大なものだった。しかも、震災からのサプライチェーンの回復は、現実は、いかなる予想より早かったと言えよう。今回は、政治の不安定さも根拠にしているようだが、それなら、何でも言えてしまう。

 日本の財政について、筆者が過度の不安を持っていない最大の理由は、日本は2007年度に、現在より10兆円も多い税収を上げており、今後、普通に成長するだけで、大幅な税収増が見込める構造にあると考えるからである。実際、2.3%成長だった2010年度は、前年度より2.8兆円も増収になっている。こういう事実に、財政当局は口をつぐむため、世間には知られていないのであるが。

 また、日本は、2010年度に景気対策で4兆円の補正予算を組んでいるため、これと予備費の1兆円を合わせれば、来年度以降、毎年5兆円の復興費を出したとしても、財政支出が増えることにはならない。復興費で財政支出が急増するなら、筆者も不安になるが、そうではないのである。 

 他紙で恐縮だが、昨日の毎日の社説は酷いものだった。本コラムの読者なら、来年度の概算要求の枠組みが「お笑い」でしかないことが分かると思うが、毎日は、それを守らねば、長期金利が急騰するとでも言うような狼狽ぶりである。また、金利上昇による国債費の増加を極度に恐れているが、利子課税などによる税収増でカバーされることも知らないようだ。おまけに、景気なんて分からないから、関係なく増税せよと来る。

 言うまでもないが、このような財政状況の的確な把握を怠り、経済状況をまったく無視し、財政再建なら何でも賛成という態度こそが、成長を妨げ、税収を落とし、国民を苦しめているのである。毎日は、財政当局の片棒を担がされ、国民の不利益になることを主張しているとは、露ほども思ってはおるまい。

 禁じ手派の方々も、毎日と同様に、国債増発が困難であるという前提を持っているように思える。だからこそ、それを避けるように見える奇策が好きなのだ。むろん、そうした手は、実質的に国債増発と変わらないものである。それなら、奇策に走るより、経済状況を見極めつつ、国債を増発する方が遥かに安全だ。財政再建派とは対極にあるが、財政状況の的確な把握を怠り、経済状況を無視してかかるのは、共通している。

 今日の日経は、社説で財政再建の覚悟を求めるが、必要なのは、債務残高200%だとか、2020年黒字化だとかといった、足元の財政運営をするには何の役にも立たないものを押し頂いて覚悟を決めることではなく、来年度の支出が増えるのか、減るのか、税収がどうなるのか、まじめにチェックする地道さであろう。

(今日の日経)
 個人マネー滞留一段と、普通預金200兆円に迫る。社説・国債格付けが迫る財政再建の覚悟。尖閣で中国監視船が領海侵犯。円高対応にわか仕立て、市場効果を疑問視。続くウォン安、日本なぜ為替介入しない。東北電、新仙台火力の冬の稼動目指す。液晶関連、部材高シェア組が好調。アークス・八ヶ岳経営で規模拡大。経済教室・短期経済予測・愛宕伸康。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

概算要求基準の世間的な解釈

2011年08月24日 | 経済
 2012年度の概算要求基準が決定されたが、日経は「メリハリ乏しく」という定番の論評で済ましている。日本の予算の枠組みの作り方は、世界的に見れば、完全に時代遅れになっており、今時、途上国でも見られないようなシロモノだ。それに不審を抱かない日本のトップエリートにも呆れてしまう。

 財政管理は、経済全体での位置づけが必須である。予算が前年度より、減るのか、増えるのかが極めて重要で、それが経済をデフレにしたり、インフレにしたりするからである。日本の概算要求基準の特殊性は、前年度の補正予算分を無視することであり、そのため、減るのか、増えるのかがまったく分からない。

 日経を含め、世間は、今回示された2012年度の政策経費は、今年度と同規模だと思っているようだが、実は違う。8/13の「ラチもない」で指摘したように、補正後では、実質的に75.4兆円になっているため、来年度を71兆円とすると、4.5兆円減のデフレ予算になる。そんな方針が決定されたという事実を、みんな分かっているのだろうか。

 また、細部を見ると、社会保障費の自然増1.2兆円は認めるとするものの、年少控除廃止による地方増収分0.5兆円と、子ども手当削減分0.4兆円を勘案すると、正味の増は0.3兆円に過ぎない。他方、政策経費の一律削減によって、1.3兆円を捻出するようだから、更に1兆円減のデフレ予算となる。

 しかも、概算概算要求には、不思議なことに、国債発行枠44兆円はあっても、税収見積りがない。民間調査機関の予測する堅めの2%少しの経済成長であっても、2.5兆円の自然増収は見込めるだろう。以上の三つを合わせて、8兆円のデフレ予算である。むろん、財政再建には結構な話だが、デフレが続いても文句は言わないことだ。

 日本国民には、こんなカラクリは分からないだろうが、プロが見れば、「来年も日本はデフレのようだから、円は安心して買える」となる。日本の産業界にとっては迷惑な話でも、これは仕方がない。代わりに、日本の財政当局は、予備費でもって、申し訳程度の円高対策をしてくれるようだから、喜んだらいいのではないかね。無知な人たちには、お似合いだよ。

 一応、来年度予算では、別途、復興費が上乗せになる可能性がある。それでも、概算要求基準の枠組みが8兆円のデフレ予算なのだから、8兆円も上乗せして、ようやく、経済に中立となる。当たり前だが、10兆円上乗せで、2兆円の復興増税でも同じことだ。この数字、何やら見覚えはないか。そう、10兆円の復興債を発行し、5年で償還するという、日本の財政当局が盛んに流している枠組みである。

 もちろん、復興は大事だが、既に6兆円が予算化されており、更に、今年度から来年度にかけて10兆円が用意されても、1年では、とても使い切れないだろう。被害総額の16.9兆円と変わらない規模なのだ。むしろ、被災の市町村は、使い勝手に不満があるようなので、全壊1戸当たり1千万円を配り、自由に使わせたらどうか。警察発表では、全壊11.4万戸、半壊15.4万戸なのだから、それでも総額は1.9兆円に過ぎない。

 さて、日経は「財政不安・円高の中、前例踏襲、処方箋見えず」としているが、それは、財政当局が説明してくれないと、何も分からないからである。見る目があれば、「財政再建・円高は覚悟、前例踏襲、脱デフレは見えず」と分かる。おまけに、「社会保障費踏み込めず」としているが、年少控除廃止と子ども手当削減で1兆円の合理化がなされるのだ。

 日経は、経営者やビジネスマンの購読料や広告費によって支えられており、政治・経済を判断する際の指針になっているのだから、そうした人達が不利益を受ける間違いをしてしまうような財政当局のプロパガンダを、そのまま流すのは、やめてもらいたい。事実の解釈で当たっているのが「前例踏襲」の部分だけでは、情けないではないか。

(今日の日経)
 民主代表選本格化・復興・増税論戦に。カダフィ政権拠点を制圧。電力融通枠を相互に拡大。仕事再考・シニアは土日に。社説・普天間の現状固定の危機。円高還元なぜ進まぬ、内外価格差縮小と原料高メリット相殺。住宅ローン・崩れる安全神話。国民年金、非正規に未納多く。再エネ法案・石油石炭税増収で軽減。タイ、購買力向上へ賃金底上げ。年金会計の新基準先送り。経済教室・ユーロ・竹森俊平。

※復興も増税もどの程度、理解しているものやら。※東北電の復旧状況が知りたい。※普天間は忘れられていると思ったよ。※欧米に比べ、物価高になっていないことが消費を支えている。※タイも再分配が上手くいくと良いね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

正しい政争の明け暮れ方

2011年08月23日 | 経済
 混とんとしている次の首相選びは、合理的に考えれば、野田財務相ではないだろうか。むろん、彼の政策が日本経済にとって正しいわけではないし、政治が合理性を発揮するはずもないのだが、一応は、そういうことになる。

 今年度の赤字国債特例法案がようやく成立するが、同じ問題は来年も起こる。震災から1年が経過し、自民党は総選挙を求めて、今度は絶対に妥協しないだろう。したがって、来年秋までには、必ず総選挙があると思わなければならない。

 ここで、民主党の戦略を考えると、増税の是非を総選挙の争点にしないことが一つの方策になる。例えば、2013年度からの消費税増税を、自民党の間で合意してしまい、2012年秋の総選挙では、二大政党は増税以外の争点で戦うことにするのである。定数是正によって比例区を減らせば、中小政党に割って入られるのを防ぐこともできよう。

 野田氏が首相の座を得たいと思うのなら、自民党との増税合意を達成したら、総選挙の前に退陣すると、今から宣言することだろう。すなわち、総選挙は、次の党首の下で、その後4年間に実現する新たな公約を掲げて戦ってくれとして、増税の憎まれ役だけを自分が買って出ようというわけである。

 野田氏が党内の支持を広げられない理由は、「増税路線では選挙に勝てない」ことだとされるが、工夫次第では、選挙の争点から外すこともできるのだ。また、小派閥である弱点も、次の党首の出番を約束し、その際には応援に回ることを約束すれば、それを補うのに役立つだろう。

 こういう戦略は、短命政権を初めから決めてしまうように見えるかもしれないが、意外に、そうでもない。政治は何が起こるか分からないのであり、来年夏までの間に、外交などで大きな得点を上げ、野田政権の人気を高めるようなことがあるかもしれないのだ。そうなれば、自民党は総選挙自体を望まなくなるので、政権は、2年後の衆議院の任期満了まで続くことになる。

 今日の日経によれば、民主党の主流派は分裂し、前原前外相も立候補するようであるから、野田氏は不利になったようだ。ただし、先のような「捨て身」の戦略を掲げるなら、主流派と拮抗する勢力の反主流派が、逆に乗ってくる可能性もある。あえて、主流派を分断するためにね。要は、政争のやり方次第なのだ。

 日本の政治は、「国民不在の政争に明け暮れる」と批判されるが、考えられた戦略による政争は、それなりに見ごたえがあるし、政治課題の解決に展望をつけることにもなる。その意味で、日本の政治は、政争をする能力も満足にないようにも思える。まあ、経済状況から言って、野田氏の緊縮財政の路線では、日本経済は苦しむだけだから、それもまた構わないのであるが。

(今日の日経)
 円高で海外シフト4割、介入・法人減税望む。前原氏出馬きょう表明。カダフィ政権が最終局面。関電、冬も節電要請。物価上昇懸念増す・セントルイス連銀総裁。ヨーカ堂、首都圏で円高還元。一目均衡・馬場直彦リポート。経済教室・ドル体制終焉の引き金に・櫻川昌哉

※経済界の要望もワンパターンだね。JT株の売却による投資補助金の創設でも要望したらどうか。※長短国債の実質利回りは、デフレで日本が米国を上回る。デフレでも、政治が指導力を発揮すれば、増税はできるものなのかな。分析はおもしろいが、どうすればがないね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

円高は経済界が望んだ結果

2011年08月21日 | 経済(主なもの)
 当然の結果ではないだろうか。今回の円高局面である。日本は、2010年度後半に、10兆円もの緊縮財政を行い、デフレを放置した。他方、米国はQE2を行い、ドル安と資源高によって、物価高となったのだから、円高ドル安にならない方がおかしい。

 もちろん、物価差が開いても、日銀が金利を下げ、金利差をつけることができれば、円高を緩和できるのだが、短期金利はゼロに近く、長期金利は1%割るところまで来ているのだから、それは無理な話である。昨日の夕刊で日経は、円高の背景には日米の金利差縮小があると報じている。米国の長期金利は、3%程度であったものが、この1か月で2%程度まで低下した。日本の長期金利は、もともと1%程度しかないのだから、従来の金利差を維持しようと思えば、マイナス金利にでもしなければならない。

 金融政策には限界があるのだから、円高のためにも、デフレが続くような緊縮財政をすべきではないのである。「えっ、そんなことしてたの?」という声が聞こえてきそうだか、先日公表された政府の「経済財政の中長期試算」を、よく見たら良い。国・地方の基礎的財政収支の対GDP比が、2009年度の-8%から2010年度の-6%に改善されている。これは、額で言えば、約10兆円である。

 さて、ここでクイズだ。「需要と供給が均衡している状態で、需要を抜いたら、物価はどう動くでしょう?」 まあ、物価が下がってデフレになるくらい、学部の学生だって分かるだろう。「政府がそんなことをしているなんて聞いてない」って? やれやれ、日本のエリートは、大本営が「デフレ覚悟で緊縮財政をします」と発表しないと、分からないのかね。

 日本の経済界は、不思議なことに、財政再建が大好きで、消費増税にも積極的である。それなら、円高になったからと言って、不満は言わないことだ。今日の日経には、円高に対する経営者の「悲鳴」が書き連ねてあるが、「10兆円の財政再建を果たしたのだから、円高なんて当然です」くらいの気骨を見せてほしい。まあ、そんな覚悟もあるまいが。 

 日本の財政当局は、この1年で、為替介入を7兆円も行った。彼らは、特別会計の事業仕分けの際に、介入で累積した外為特会のカネは、埋蔵「借金」だと言い張っていたが、この調子で行けば、介入は10兆円を超えるかもしれない。そうすると、デフレ覚悟で10兆円の緊縮財政をしたのに、それを帳消しにするような蕩尽もするわけだ。なんと素晴らしい経済運営ではないか。

 為替介入とは、ドルを札束で置くわけではないので、結局は米国債を買うのと同じになる。同じカネを使うのに、何が悲しゅうて、日本人からは吸い上げ、米国人にバラ撒かなければならないのか。昨年度後半、景気対策を次々にぶった切り、急激な緊縮を行ったが、経過措置をとって、緩やかに締めるという、平凡な財政をしておけば良かっただけのことだ。そうしていれば、デフレから脱して、ひどい円高にもならずに済んだろう。

 それで、「これから、日本経済はどうなる」って? いやだなあ、さっきの「中長期試算」に、今年度から来年にかけて、基礎的財政収支がGDP比で1.2%改善すると書いてありますよ。6兆円も緊縮財政をかけるのだから、デフレが長引き、更なる円高に向かうでしょう。まあ、米国の景気が回復すれば、話は別ですが。

 「復興で支出がかさむのに、どうして、そうなるのか」って? 本当に、日本人は財政当局から何も教えてもらえないんですね。今年度の一次と二次補正で6兆円の復興費を用意したわけですが、これは増税なしに用意したものなので、来年度、その支出がなくなると、財政収支は改善するわけです。もちろん、来年度も復興費は用意されるでしょうが、それは、見合いの復興増税で賄われることになっているので、財政収支には中立なのです。

 おっと、諭す気持ちが入ったら、思わず、「ですます調」になってしまった。経営者の諸君よ、財政再建に理解を示すなんて格好をつけず、本音を出して、内需をよこせと言うべきだろう。内需があれば、円高でも耐えられるし、そもそも、円高にもなり難くなる。介入しても投機筋に食われるばかりだ。まともな経済あっての財政である。今こそ、経営者の実感を取り戻すときであろう。

(今日の日経)
 大災害時の政府機能を西日本で補完。政府、円高総合対策へ。マネー動乱、逃避先は円・滝田洋一。社説・さらなる介入と金融緩和をためらうな。風見鶏・一票の格差・西田睦美。円高についての経営者コメント。協調介入G7冷淡、そろわぬ足並み。米がドル安容認、輸出拡大。中外時評・携帯市場を変えたアップル・関口和一。損保会社がトラブルナビ。読書・オバマの戦争。

※こんなことより耐震工事でもしたらどうか。※子ども手当を切って、円高バラマキだ。※逃避だけではなく、経済運営の差もある。※輸出企業に補助金を出す方が安上がりだよ。※日本が緊縮財政で自ら招いた円高に、米国が協調してくれるわけもなし。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

若田部先生に思う日本の現状

2011年08月20日 | 経済
 ダイヤモンド・オンラインに早大の若田部昌澄先生のインタビュー記事が出ていたが、筆者の考えに近いものだったね。日本では「財政赤字は深刻、よって増税」という単調な議論ばかりなので、こういうものに出会うと、気が休まるよ。

 世界経済に対する若田部先生の見立ては、「早すぎた欧米の出口戦略」だ。バブルがはじけた後は、回復までには長い時間が必要なのだが、往々にして、我慢し切れず、利上げや緊縮財政に走り、二番底をつけてしまう。これは本コラムで何度も触れてきていることだ。若田部先生は、「いま金融緩和、財政出動をやめると危険だ」と率直に述べている。

 今回の記事で、好感が持てたのは、金融・財政政策の在り方について、米国でも見方が分かれていると書いてくれているところだ。クルーグマンやマンキューの「不十分派」、テイラーやラジャンの「構造派」、ラインハートやロゴフの「あるがまま派」の三つがあるとする。日本にいると、「構造派」の路線しかないような気がしてくるからね。

 そして、「経済が拡大しなければ、財政再建は実現しない」と、当たり前のことをきちんと指摘している。昨日の日経の社説では、成長は3番目ぐらいの扱いで、財政赤字ばかりに気が回っている。誤解を受けがちだが、若田部先生が言うように、ある程度、インフレを容認した経済運営も求められよう。

 筆者と若田部先生の違いは、日本の財政政策に対する認識だろう。どうも、若田部先生は、日本の財政赤字の大きさから、拡張財政を続けて来ているように思っているようだ。日本の財政当局は、財政運営の実態を分からないようにしているので、こういう誤解は多い。実際には、GDP統計の中央政府を見れば分かるように、2004年から2007年にかけて13兆円の緊縮財政が行われており、それが大きなデフレ要因になっている。

 また、若田部先生は、御持論の思い切った金融緩和を主張されているが、2010年度でみると、日本の財政当局は、10兆円の歳出削減と4兆円の税増収を試み、年度後半をマイナス成長に陥れている。結局、円高対策を余儀なくされ、増収分を景気対策で吐き出したが、かなりの緊縮財政であり、これでは日銀の金融政策を責められまい。

 日本の財政当局のダマしのテクニックは、常に、前年度の当初予算との比較しか説明せず、前年度に補正予算で実施した分が抜け落ちることで緊縮になっても気づかせないというものである。また、税収を過少に見積もったり、埋蔵金で調整することで、国債発行額の44兆円を減らさないようにし、財政の回復ぶりを知られないようにもしている。こういう手に引っかかってしまうのだ。

 昨日の読売の社説は、その典型で、「歳出を当初予算に抑えても、国債44兆円は過去最大」と危機感をあらわにしているのだが、当局の解説の受け売りにすぎない。実際には、2011年度に一次と二次の補正で実施することにした復興費6兆円を上乗せするのでなければ、緊縮財政になってしまうし、復興によって成長すれば、3兆円程度の税収増も期待できる。

 社会の木鐸がこんな有様では、財政運営の実態が知られないのも当然である。実態を理解できるのは、財政当局のお仕着せの解説に頼らずに、基礎数字をいちいち確かめるような奇特な人だけである。こうして、日本の財政当局は、世間の目をよそに、急速な緊縮財政を行い、デフレで国民を苦しめているのである。

(今日の日経)
 円最高値75円台、仕掛けた投機筋。国内最大メガソーラー、政投銀融資で中電も参加。外為特会資産80兆円で評価損40兆円赤字20兆円。相続税を復興財源に。欧州銀でリストラ相次ぐ、資金調達を市場が不安視。電力不足、ヤマ場越す。10年債0.980%に低下。復興需要は年末以降に。ガソリン、半年ぶり安値。

※最高値は一瞬だったが、円高水準は続く。※買い取り制度と言っても、政策融資と電力の協力がないと、自然エネは成り立たずか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日経は日和見たるべし

2011年08月19日 | 経済
 筆者以外に、日本の財政当局のトリックを見抜く人がいるとはね。今日の大機小機の夢風さんだ。本コラムではおなじみの「税収過少見積りの術」を指摘している。ただ、社会保障の抑制策については月並みなので、本コラムの「年金のどこにムダがあるのか」シリーズ(5/25,27,28)でも見てもらったら良い。

 夢風さんは、「総理の有力候補と言われる政治家が増税を主張し、これを援護射撃するかの如く、増税を正当化する報告が一気に公表されている」と、なかなか穿ったことを言っている。今日の日経の社説は、一本立てで「日本の財政悪化はもはや放置できない」であるが、これも援護射撃の一環である。何と言うか、大機と社説で「バラエティ」に富んでいるのは、日経の愛すべきところだ。

 むろん、日経の論説陣が、財政当局に頼まれて、こんな社説を書いているのではない。税と社会保障の一体改革の「それらしい」報告書や、「もっともに見える」中期財政フレーム、「いかにもな」経済財政の中長期試算を見せられ、すっかりディスインフォメーションに染められているのである。それらの文書の問題点を見抜くには、相当の専門的知見が必要なので、「乗せられるな」と言っても難しい。

 だからこそ、本コラムでは、文書が出される都度、問題点を衝くことを書いているし、財政当局が示すようなものでない、まともな財政運営がどんなものかを示すようにしている。比較してみれば、財政当局がいかに無理無体をもくろんでいるかが分かるだろう。また、過去に、どれほど酷い結果を財政当局が招いたかも晒してある。

 今日の日経の社説は、要すれば、緊縮と増税をやれというものであるが、問題は、いつ、どのくらいするかである。欧米の経済状況が危うい中で、2012年度に、どの程度の財政デフレならば現実性があるかを勘定する必要がある。「国債残高が巨大だから、消費増税と社会保障削減をすべし」と言うだけなら、バカでもできる。

 今日の日経の実報で、一番、気になったのは、アジア域内の貿易が落ちていることだ。米国向け輸出は在庫が回復すれば急速に鈍化するだろう。日米欧で輸出関連の株価が下げているのは、むべからざるものがある。日本経済は、これから、この衝撃にも耐えなければならない。前に一口メモで書いたが、株価乱高下は、崩壊の兆しの場合があるので、筆者は、非常な危機感を持っている。

 財政当局が千年一日のごとく財政再建を唱えるのは仕方がないし、経綸を持たない政治家が易々とそれに乗るのも止められないだろう。しかし、日経は、「国民生活の基礎たる経済の発展を期す」観点に立ってほしい。それは、刻々と変わる経済状況を反映させつつ、現実的な方策を具体的に示すことである。財政再建や小さい政府のイデオロギーに染まるくらいなら、日和見たるべしなのだ。

(今日の日経)
 車燃費24%改善義務、メーカー全車種平均。NY株、一時520ドル下げ、欧州株も軒並み急落。混戦・住宅ローン、ネット銀先行。円高警戒、バーナンキ講演を前に。短期国債の買越額最高。アジア向け輸出回復鈍く、域内貿易量低迷。防衛産業でASEAN各国が協力。ミャンマー少数民族へ停戦呼びかけ。米景気後退30~50%、エコノミストがリスク警告。電力・ガス値上げ、円高効果には時間。三菱電機・スマート電化。凸版・北米で電子コミック。大機小機・検証なき増税論・夢風。経済教室・個人主義近代に幕・隈研吾。

※建築家には文明論ではなく、5mの浸水にも耐える住宅のモデルプランを作って欲しいな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする