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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

不安に耐えてこその回復

2011年08月11日 | 経済
 株安が止まらないね。昨日は連鎖安が一服で、ヤレヤレと思ったのだが、NYが震源では、枕を高くして寝られないよ。それにしても、みんなが政府を信用していたと思うと不思議な気がする。株安は、米国の財政に縛りがかかり、FRBの打つ手が限られることが原因であり、逆に言えば、財政が支えてくれると、今まで思っていたことになる。

 日本の経済運営を見ている筆者は、政府が度外れたことをするのに慣れているので、そんなものだろうと思ってしまうが、みんな素直なんだな。ちょっと政治経済学的なことを言うと、欧米のように、大型のバブルを経験した後は、回復まで長い時間がかかるものだが、政治や国民は、これを待ち切れない。これが問題なのだ。

 バブルが崩れた直後は、危機感があって、財政赤字の拡大も容認されやすいが、それが一段落すると、すぐに財政赤字が気になりだす。本当は、底入れしてから2年くらいは我慢が必要で、辛抱強く財政赤字を保ち、じわじわと景気が回復するのを待たねばならない。この赤字の継続と回復の鈍さの共存が、政治にとっては重荷になる。この場面で緊縮に走り、二番底をつけるのは、良くあることだ。

 古くは、大恐慌後の二番底であるルーズベルト不況を挙げても良いし、新しくは、1997年の日本のハシモトデフレも、その一つだろう。こういう失敗は、経済の体力が落ちているときなので、悲惨な結果を招きがちだ。ルーズベルト不況やハシモトデフレの後に何が起こったかを思えば、これからの展開は心配なものがある。

 しかるに、今日の日経の一面トップは、「公約・増税・エネ政策争点」である。一面の左側には、滝田洋一さんが「世界経済の機軸揺らぐ」と書いているのに、歳出削減や増税を議論している場合かね。こうした現実への鈍感さ、経済と財政が、頭の中で断ち切れた状態になっていることを、誰も変に思わない。これこそが悲劇の原因になる。

 日本の場合、大規模な復興対策がなされるから、緊縮財政にはならないと思われるかもしれないが、本コラムで度々指摘しているように、実態は空疎で、増税ばかりが具体的という、危ういものだ。今週のJMMで、北野一さんは、「資金使途不明の請求書だけを回されて、何故、我々はお金を払わねばならないのか」としているが、そのとおりである。

 昨日、宮城県の地方紙である河北新報に、「被災総額6.7兆円」という小さい記事が出ていた。宮城県による最新の被害集計である。これは意外に「少ない」。今回の震災の住宅被害で、宮城県は、その半分以上を占めるのに、政府の全体の被害推計の16.9兆円の半分にも行かないからである。増税の根拠は、この程度のものなのだ。

 他方、宮城県知事は、7/30のコラムで記したように、12.8兆円の復興費が必要だとしている。常識的に考えて、損害額の2倍の復興費がなぜ必要なのか疑問だろう。別に、知事がいい加減なことを言っているというのではなく、まだ復興事業の中身が詰まっておらず、どのくらいの執行がなされるのか、確たる状況にはないということなのだ。こんな有様で、復興需要に期待し、1年と待たずに増税をしたら、どうなるか。いつもの「政治経済学」が繰り返されるということである。

 今日の日経には、重大な記事が小さく載っていた。「財政フレームあす閣議決定、政策経費71兆円」である。これは、震災以外の歳出総額を前年度と同じにし、社会保障の自然増1兆円を他の経費の削減で賄おうとするものである。これは、経済の流れに逆行するだけでなく、新政権を非常に苦しめることになるだろう。

 こうして、日本の財政当局は、緊縮財政の罠を次々と仕掛けていく、震災増税のトリックの次の仕込みは始まっているのだ。経済は緩やかに回復するもので、忍耐が必要だとは、誰も思わない。目先の成果を求めて、経済に変調をもたらしてしまう。人間とは、不安と苦痛に耐えられず、自殺に走るような、そんな弱い存在なのだ。

(今日の日経)
 NY株、一時460ドル安、フランス国債格下げ懸念で金融株に売り。円続伸、一時76円台前半、史上最高値に迫る。社説・政策の手詰まり示す米。休み返上の増産相次ぐ。GPIF・満期近い国債売却せず。積立金の残高6兆円減少・昨年度、厚生・国民年金。株売却や特会の積立金を復興財源に。中国空母かさむ維持費。日本企業誘致タイがリード。米景気減速でも、動けぬオバマ政権。発電所停止・東北電の情報開示遅れる。経済教室・節電経済・山本勲。戦災復興・ケヤキ並木は育った。

※欧州は財政だけでなく、ECBも問題だ。※4.5兆円介入もわずか一週間か。※社会保障の財政検証もせんとね。※埋蔵金の焦土化作戦だな。※東北電の火力の復旧は時間がかかり過ぎる。政府が乗り出して応援すべし。※震災から5か月か。
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