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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済政策の基本中の基本

2009年10月18日 | 経済
 実際の経済と教科書の経済の最大の違いは、金利が設備投資を調整するかどうかである。価格には需要と供給を調整する強い力があるが、金利には設備投資と家計貯蓄を調整する力はほとんどない。では、経済政策の基本とは、どのようなものになるのか。

 まず、不況になった場合、これは適正な水準よりも設備投資が低く、ゆえに失業が発生している状態ということになるが、まずは金利を下げることになる。しかし、これで直ちに設備投資が出るかというと、そうではない。経営者は、いかに金利が低くとも、つまり、儲かる見通しがあっても、需要に不安があるだけで、設備投資をしないという不合理な行動を取る。

 これは、設備投資の期待値がプラスであったとしても、一度失敗すると、再チャレンジして取り戻すことはできないから、機会利益を捨てても、設備投資をしないという判断をするということである。企業人にとっては常識的だが、これは経済学の最大化行動の基本原理に反するものになる。これを受け入れられるかどうかが、実務家と学者の決定的な差になる。

 金利の引下げの効果は、まず、住宅投資に現れる。同じ実物投資なのに、金利が住宅投資に効いて、設備投資に効かないのは、住宅投資には、自分が住むという確実な需要が見込めるという違いがあるからだ。そして、住宅投資という需要に反応して、設備投資が回復してくる。設備投資には、需要があるという安全確認が必要なのだ。

 もう一つ、金利の引き下げには、円を安くする効果がある。むろん、外国金利との相対的な低下でなければならないが、そうなれば、輸出が伸びることで需要が拡大し、設備投資を促すことになる。

 他方、不況期には財政出動をするもの定石だ。公共事業が行われれば、それが直接の需要になるとともに、需要拡大の刺激によって、鉄鋼やセメントなど素材産業の設備投資も促されることになる。

 さて、ここまで基礎を確認して、日本のバブル崩壊後の情況を考えてみると、バブル期に住宅投資はやり過ぎになっていて、金利を下げたのに1994年まで低迷が続いたし、94年からは、円高で輸出が低迷することになった。いわば、金利引下げによる需要拡大のルートは、特殊事情があって切れていたのである。

 よく、財政出動が効かない根拠として、バブル崩壊後の事例が挙げられるが、実態はこうで、孤軍奮闘の情況にあり、効きが悪いのは当然であった。東谷暁さんの「エコノミストを格付けする」は読ませる内容の本だが、この点だけは指摘しておきたい。

(今日の日経)  
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