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自民党総裁戦への出馬を発表する小泉進次郎元環境相(9月6日、東京) REUTERS/Kim Kyung-Hoon <政治資金問題は何一つ解決していないにも関わらず、自民党総裁選への出馬ラッシュが始まってから、自民党の支持率は回復傾向にある。メディアで毎日主要候補のアピールが報道されるからだ。総選挙でも同じく裏金問題は「憲法改正」論議にかき消されるのではないか> 9月2日、自民党の憲法改正実現本部は、憲法改正に関して自衛隊の明記や「緊急政令」の制定などの論点整理を取りまとめた。既に退任が決まっている岸田総理は、同本部の会合で、次期総裁下での改正の実現に期待を寄せた。自民党総裁選レースが話題を集める中で、自民党はにわかに憲法改正に向けての動きを加速させている。自民党は、総裁選後に予定されている総選挙の争点を、憲法改正にしようとしている可能性が強まってきた。 8月7日、岸田首相は自民党の憲法改正
暇空茜氏は都知事選に立候補し、一度も公に姿を表さないまま11万票を集めた(7月6日、東京銀座) Damon Coulter / SOPA Images via Reuters Connect <訴えられて損害賠償を命じられてもペイするというビジネスモデルの背後にいるのは誰か> 一昨年から始まる「不正会計」デマをきっかけとして、貧困やDVなどの困難を抱えた10代女性を支援する団体Colaboが様々な誹謗中傷を受けている問題で、7月18日、誹謗中傷のきっかけをつくった「暇空茜」を名乗る人物に対して損害賠償を求めた裁判で、暇空氏に220万円の賠償と投稿の削除を命じる判決が出た。昨年3月に出た、Colaboの会計に不正はなしとした東京都の監査結果と合わせて、暇空氏のデマによって女性支援団体の活動が妨害されたという事実が、公的に認められたことになる。 しかしこれで問題が決着したわけではない。暇空氏と
6月19日、東京都知事選立候補予定者の共同記者会見に臨んだ蓮舫 Yuichi Yamazaki/Pool via REUTERS <選挙の有力候補者には、様々なバッシングが行われるのが常だ。その全てを防ぐことは難しいが、民族マイノリティに対して候補者の適格性を謂れなく問うことは差別であり、他の誹謗中傷とは次元が異なる> 5月27日、立憲民主党の蓮舫参議院議員が、7月に行われる都知事選への出馬表明を行った。現職の小池百合子都知事との対決が話題になっている。東京都の行政改革に期待を寄せる声もある一方、様々なバッシングも生じている。そのバッシングの一つで、小池知事を支援する現職区議なども含め、ネットを中心に蒸し返されているのが、2016年に発生した蓮舫氏の「二重国籍疑惑」だ。 およそ大きな選挙があるとき、その有力候補者に対しては様々なバッシングが行われる。中には誹謗中傷や根拠のないデマを元にした
首をすげ替えても自民党に後はない?(5月4日、ブラジルのサンパウロで記者会見をする岸田文雄首相) REUTERS/Jorge Silva <政治資金問題について野党の追及を受けると「自民党の力をそぐための政局的な話」を反論する自民党からは「被害者意識」しか感じられない> 自民党の裏金問題を機に、国会では政治資金改革の議論が活発に行われている。野党が企業団体献金や政治資金パーティーの禁止など踏み込んだ案を出す中、自民党の改革案が甘いといわれ、厳しく追求されている。 そのような状況下、自民党の政治刷新本部座長を務め同党の改革案をまとめる立場の鈴木馨祐議員が、5月12日、民放の政治番組に出た際に野党から厳しい政治資金改革を求められたことに対して「自民党の力を削ぎたいという政局的な話」と発言した。これは単なる失言ではなく、裏金問題について反省がなく、改革案すら積極的に「政局」に利用しようとする自民
<誹謗中傷で訴訟を起こされた被告が訴訟費用を上回るカンパを集め、さらに裁判過程をコンテンツ化して儲ける「ビジネス」が増えている> 4月18日、文学者の北村紗衣氏が、ネット上で「山内雁琳」を名乗る男性から受けた誹謗中傷を、名誉毀損だとして訴えた裁判の判決が東京地裁で下された。その内容は、雁琳氏は北村氏に対して慰謝料及び弁護士費用の合計220万円を支払うべしというものだった。同種の裁判と比べると、220万円という金額は重いとされている。 原告代理人が「被害者ではなく加害者がカンパを募る「誹謗中傷ビジネス」に対して、裁判所が歯止めをかけた重要な貴重な判決」と述べているように、この判決は、ネット上の誹謗中傷とその裁判がコンテンツとして収益化される風潮に一石を投じるかもしれない。 発端は別の誹謗中傷事件 事の発端は、文学者でフェミニスト批評を行っている北村紗衣氏が、歴史学者である呉座勇一氏のセミクロ
ノーラン監督が「原爆の父」オッペンハイマーの半生を描いた意味は? ©Universal Pictures. All Rights Reserved. <ヒロシマ・ナガサキの惨状が描かれていないなど批判もあったが、これは紛れもない反核映画だ>*若干のネタバレあり 今年のアカデミー賞で、作品賞など7賞を獲得したクリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』が今年3月にようやく日本公開された。「原爆の父」とも呼ばれるアメリカの物理学者オッペンハイマーの半生を描いたこの作品は、被爆国である日本では特に政治的な議論の対象になったこともあり、公開が大幅に遅れていた。 そのような事情から、この映画は原爆投下についてのアメリカ側の弁明にすぎないのではないかという先入観を持っていたが、鑑賞してみると、それとは異なる印象を抱くことになった。 【写真】ネットを賑わす『バービー』と『オッペンハイマー』コラージュ
<バリアフリーを要求する車椅子利用者を「わがまま」と非難する背景には、障害者を助けるのは「善意」からなので、それ以上を求めるべきではないという考え方がある。だが今は、その考え方にパラダイムシフトが求められている> 3月15日、「車椅子インフルエンサー」として活動している中嶋涼子氏が、イオンシネマで映画館スタッフの介助を得て映画を観たところ、観賞後、責任者に今後の利用を断られ、悔しかったことをSNSに投稿した。イオンシネマは翌日、従業員の不適切な対応についてホームページ上で謝罪した。ところがその後、SNSでは中嶋涼子氏に対するバッシングが巻き起こった。 近年、事業者のバリアフリー対応について公然と批判する障害者は、世間からの謂れのない攻撃に晒されている。4月からは障害者差別解消法に基づいて、障害者に対する「合理的配慮の提供」が義務化される。社会で進んでいくバリアフリー政策と、人々の意識のギャ
<これまで大きなトラブルもなく10年以上にわたってうまく共生してきた埼玉県蕨市のクルド人と日本人の関係に楔を打ち込む事F件があった。なぜ共生はうまくいかないのか> 2月18日、埼玉県の蕨市駅周辺で、右派系市民グループ「日本第一党」に所属していた人物が主催するデモが行われた。標的にされたのは、川口市や蕨市に住むクルド系の住民だ。 日本社会で暮らす外国人や外国にルーツを持つ人々の数は増えつつある。その一方で、右派系市民グループや右派系ジャーナリスト、またSNSなどで煽られた匿名のアカウントらが、地域社会に定着して暮らしている外国人の生活を脅かすという現象が生じている。 埼玉県南部のクルド人コミュニティへの差別の拡大 近年、川口市や蕨市など埼玉県南部地域では、クルド系住民の数が増えている。難民申請者もいれば正規ビザ取得者もおり、在留資格は様々だが、人口は約2000人と言われる。現地でクルド人と日
地震で破壊された石川県輪島市で生存者を探す消防士(1月1日) (Photo by James Matsumoto / SOPA Images/Sipa USA) <発災直後に被災地に入ったジャーナリストや政治家は個別の事情も顧みずSNSで苛烈なバッシングに遭った> 2024年1月1日に石川県能登地方を中心に発生した最大震度7の地震は大きな被害をもたらし、200人を超える死者と数万人の被災者を生み出した。この地震の発災直後から数週間、インターネット空間では様々な言説が乱れ飛んだ。その中で、この震災に関連する言説の特徴の一つだといえるのは、災害ボランティアに対して過剰に自粛を要請し、被災地入りしたジャーナリストや国会議員に対して苛烈なバッシングがあったことだ。今回のコラムでは、この現象について考えてみたい。 素人でもないのに 今回の能登半島地震では、半島という地形的な要因と地震によって道路が寸
<個の力をアピールして高揚させるが、しょせんは敗戦国の敗者復活戦に過ぎない> *若干のネタバレあり 11月3日から公開されている映画、山崎貴監督『ゴジラ-1.0』を鑑賞した。この作品のゴジラは、これまで観てきた「ゴジラ」シリーズの中でも屈指の恐ろしさで、第一作目の『ゴジラ』を彷彿とさせる。 <画像>生誕65周年、ゴジラの顔はこんなに変わってきた(写真15点) 一方でストーリーに関しては、筆者がかつて批判した「現場プロフェッショナルロマン主義」的な要素がある。それに基づいて戦後日本の歴史に新たなナショナリズムを与えようとするかのようなテーマになっていることには違和感を覚えた。 舞台は終戦直後の日本 今回のゴジラ映画は、戦中から終戦直後にかけての日本を舞台としている。1954年に公開され、同時代を舞台とした初代『ゴジラ』に年代設定は近い。ゴジラの描写も、原点回帰ともいえる、純粋に人々に恐怖を与
内閣支持率が最低を更新中の岸田文雄首相(7月11日、東京の自民党本部) Rodrigo Reyes Marin/REUTERS <杉田水脈衆院議員は、一連の差別発言について反省するどころか差別を煽るような投稿を繰り返している。SNSを中心に支持者によるヘイトスピーチの再生産も行われている> 7年前のブログの記述が民族差別に当たるとして9月と10月に札幌と大阪の法務局から「人権侵犯」認定された自民党の杉田水脈衆院議員の暴走が止まらない。これまで数々の差別発言が問題になってきた杉田議員だが、今回の件を受けてもなお、自身の言動が差別であったことを認めず、ヘイトスピーチを更に重ねている。 杉田議員が折れないことにより、SNS等ではそれを応援する者などによるヘイトスピーチがむしろ激しくなっている。こうした混乱については、杉田議員が所属する自民党にも責任がある。だが自民党はいまなお、杉田議員に対する処
イスラエル軍の空爆を受け、犠牲者を探すガザ地区の住民(11月23日) REUTERS/Mohammed Salem <3000年来続く宗教対立という「物語」に思考停止させられてはならない。少なくとも建国以来、イスラエルはパレスチナから一方的に奪い続けてきた> 2023年10月、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル領内に侵入し、民間人や外国人を含む人々を1000人以上殺害し、少なくとも200人を人質にしたことを、きっかけに、イスラエルによるパレスチナへの攻撃が激しさを増している。ガザ地区に住むおよそ200万人の人々が、封鎖の強化によって食料や水、電気の供給を断たれ、空爆によって死んでいく。市街戦も本格化しそうな勢いだ。 この紛争を解説する日本のニュースや新聞記事では、聖書の記述に基づく「民族対立」を、両者の対立の根源に置くものがみられる。イスラエルとパレスチナは3
<小学3年生以下の子供を一人にするのが何でも「ネグレクト」になるとすれば、子育て世代、とくに共働きやシングル家庭には大きな負担増になる> 10月6日、埼玉県議会で自民党県議団が提出した、埼玉県虐待禁止条例の一部改正案が委員会で可決された。この改正案では、小学3年生以下の子供を留守番させたり子供だけで登下校させたりすることなどは子供の「放置」であるとして、これらの行為を禁止している。 この改正案については、子育て世帯にとって大きな負担であるとして、同党国会議員を含む多くの政治家や市民たちから反対意見が寄せられ、10月10日、自民党県議団はこの条例案を取り下げることを発表した。しかし取り下げを発表した会見で、田村琢実自民党県議団団長は、この条例案は「内容は瑕疵がなかったが、説明が不十分だった」と述べたことから、時期を改めてまたこの案が議会に上程される可能性がある。この虐待禁止条例の改正問題につ
<歴史的事実として認められた事件でも、日本人の加害性を否定しようとする傾向に拍車がかかっている> 2023年の9月1日は、関東大震災からちょうど100周年の日になる。関東大震災は、地震や火災により10万人もの犠牲者を出した一方で、朝鮮人を中心とする、多数の人々に対する虐殺が行われた。その犠牲者は6000人ともいわれる。 しかしこの節目の年に至るまでの数年は、朝鮮人虐殺事件について意図的に風化させたり事実をねじ曲げようとしたりする動きが拡大した時期でもあった。また、朝鮮人虐殺だけでなく、公共の場から日本の負の記憶を排除するニュースが最近は相次いでいる。今こそ、元ドイツ大統領ヴァイツゼッカーの「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」という言葉を思い出すべき時だろう。 小池百合子都知事の追悼文見送り問題 2016年に就任した小池百合子都知事は、2017年以降、それまでの都知事が行ってきた9月1
30年かかるプロジェクト、何かあったとき東電は正直に情報を明らかにするのか(8月24日、東京・東電本社前の放出反対デモ) REUTERS/Kim Kyung-Hoon <福島第一原発から放出される処理水のトリチウム濃度は安全基準を満たしている─政府や国際機関は繰り返しそう保証するが、隠蔽を重ねてきた東電が今後数十年続く放出を誠実に行うとは思えない> 2023年8月24日、日本政府は、現在は敷地内のタンクに溜められている福島第一原子力発電所から出た汚染水を浄化した「ALPS処理水」の海洋放出を行った。この放出については周辺諸国から懸念が出ているだけでなく、地元の漁業関係者も反対しており、これは海洋放出には関係者の合意が必要とした2015年の約束に反している。筆者は以前も、海洋放出については国や東電は2015年の約束を守るべきだと主張してきた。 いわゆる「トリチウム水」の海洋放出は全世界で行わ
「第2自民党」を自認し、共産党はなくなっていいと言った日本維新の会・馬場伸幸代表から失われた「野党の矜持」 <議会制民主主義の下で、他党の存在を否定するのはもってのほかだが、第2自民党という主張にも国政の監視がおそろかになる危険性が垣間見える> 7月23日、日本維新の会の馬場伸幸代表がインターネット番組に出演し、日本維新の会は「第2自民党」ではないかという指摘を受けて、それを肯定し、第1、第2自民党が「改革合戦」を行ったらよいと述べた。またその際、日本共産党について「なくなったらいい政党。おっしゃっていることがこの世の中でありえない」と述べ、この発言が大きな問題となっている。 共産党について「なくなったらいい政党」と発言したことは、大きな波紋を呼んでいる。維新の会の馬場代表のこの発言に対し、共産党の小池書記局長は会見を開き、「民主主義を根本から否定する暴論だ」と厳しく抗議し、発言の撤回を求
<マイノリティではなく「マジョリティへの理解」を求める悪法がLGBTにとって意味する世界を描く> *若干のネタバレあり 是枝裕和監督の最新作『怪物』が現在、全国の映画館で上映されている。この映画はカンヌ国際映画祭に出品され、脚本賞とクィア・パルム賞の二冠を受賞した。6月16日に成立したLGBT理解増進法が、当初の内容を大きく後退させ、これでは反LGBT法だという当事者の声もあがる中、マジョリティの無知がもたらす残酷さを描いたこの作品は、我々にこれでよいのかというメッセージを突きつけている。 クィア映画としての『怪物』 『怪物』は、LGBTやクィアといった性的少数者を扱ったクィア・パルム賞を受賞しているにも拘らず、公式でクィア映画であることをはっきり打ち出していないことに批判がある。 確かにこの脚本のギミック上、公開前にクィアというキーワードを隠したかったのは理解できる。しかし少なくとも映画
<ただでさえ少ない難民認定をさらに減らそうとしているが、なぜそこまで目を背けるのか> 入管法改正案の採決について6月6日、立憲民主党と社会民主党は合同で斎藤法相への問責決議案を提出するなど、攻防が続いている。長期収容問題の解決策として難民申請の3ストライク制を盛り込むなど、ますます難民申請者の人権を尊重しない方向へと改正が進められているとして、野党や市民から批判を受けている同法案だが、ここにきて与党が主張する立法事実すら怪しくなっている。 難民審査は適切に行われているのか 入管法改正案の立法事実については、柳瀬房子難民審査参与員の「難民をほとんど見つけることができない」という発言が根拠となっていることは、出入国在留管理庁自身も認めている。 世界各国の難民認定率については調査機関ごとに幅があるが、G7の認定率は概ね10%~50%の認定率となっており、難民認定数は、イタリア以外は1年で5桁の人
<有志による「女性支援を守るメディア連絡会」の調査で、団体スタッフや利用者に対するストーカーまがいの嫌がらせが横行し、女性支援の活動が危機にさらされていることがわかった> 3月に書いたコラムで、女性支援団体Colaboが公金の不正使用の疑いで攻撃されていたが、住民監査の結果Colaboの会計に不正はなかったと認められたと紹介した。それにも関わらず、5月に至ってもなお、Colaboは叩かれ続けており、様々な嫌がらせによってその活動に制約を受けている。 そしてColaboと同じく「東京都若年被害女性等支援モデル事業」を受託した団体など、他の女性支援団体も、やはり酷い嫌がらせを受けていたことがわかった。このような異常な事態への対応を当事者だけに押し付けてはならない。行政やメディアが毅然とした対応を取らなければ、嫌がらせは終わることはないだろう。 オンライン上で多くの被害 女性支援の現場が危機に晒
あなたの声を代弁してくれる議員はこの中にいますか(2022年6月21日、参院選前の党首討論)David Mareuil/ REUTERS <議員定数削減を「維新の真骨頂」と誇る維新の下、大阪府の議員定数は10年前から30も減っている。これは本当にいいことなのか。有権者の復讐なのではないか> 先の統一地方選挙で大阪市議会の過半数を獲得した大阪維新の会が、公約にあった市議会の定数を81から10程度削減する条例を直ちに提出するという方針を打ち出している。大阪府・大阪市では維新の会が10年以上政治の主導権を握ってきており、議員定数は府議会、市議会で削減され続けてきた。今回の大阪府議選の定数は79で、10年前からは30も議席が削減されている。 国政政党としての日本維新の会も、国会議員の定数削減を「身を切る改革」の柱として掲げている。しかし、この議員定数削減という「改革」は正しいのだろうか。むしろ有権
<岸田首相に爆弾を投げつけた容疑者は、日本の選挙は「普通選挙」とは呼べず、政治家二世や裕福な人しか立候補できない「制限選挙」だと憤っていた> 4月15日、岸田首相が選挙演説中に爆発物を投げ込まれる事件が発生した。幸い岸田首相は無事だったものの、その場で現行犯逮捕された青年は、犯行の動機を黙秘し続けていると報じられている。事件の動機を解明することは犯人に同情を集めるので解明するべきではないという議論も巻き起こる一方、SNSではこの実行犯のものと思われるアカウントが発見されており、彼の政治思想が明らかになりつつある。 実行犯は「制限選挙撤廃」を主張するナショナリスト 報道によれば、実行犯は地元の自民党市議会議員の集会に出席しており、選挙供託金の撤廃や、被選挙権年齢の引き下げを主張していたという。彼のものとみられるSNSのアカウントでも、被選挙権を得る年齢の高さや供託金の高額さだけでなく、世襲政
<「サルがやること」という言い方に問題はあったとしても、毎週開くことの妥当性は実際の議論の内容から改めて検証されるべきだ> 立憲民主党の小西裕之参議院議員が、憲法審査会の毎週開催は「サルがやること」と述べたことで波紋を呼んでいる。言葉の妥当性に関心が向くばかりで、肝心の参議院の憲法審査会の毎週開催についてはほとんど議論がなされていない。そこで筆者は、参議院の憲法審査会に関して、昨年行われた第208回国会~第210国会までの議事録を全て読んでみた。結論としては、参議院の憲法審査会は毎週開催する必要がない、全く内容がない会議だった。 憲法審査会の議論 憲法審査会は、「(1)日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての広範かつ総合的な調査、(2)憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等の審査を行う機関」と位置づけられている。しかし、議事録からみられるのは
無防備に街に出てきてしまった少女を救う活動がバッシング対象に(写真はイメージです) MADSOLAR-shutterstock <女性支援団体Colaboに対するバッシングやハラスメントは社会が止めなくてはならない> 昨年末から、女性支援団体Colaboへの悪意ある攻撃が続いている。Colaboは主に性暴力やDV等で悩みを抱えているティーンエイジャーの女性たちに対して、「相談、食事提供、シェルターでの宿泊支援、シェアハウスの運営、10代の女性たちによる活動、講演・啓発活動」などを行っているが、そのColaboが「公金」を不正に着服している「貧困ビジネス」であるなどといった根拠のないデマを公然と流され、アウトリーチ活動も妨害されているのだ。 東京都の監査結果によれば、Colaboが公金を着服しているという主張は退けられた。しかし、Colaboの会計に不正があると考えている人は未だに多く、マス
<子どもたちにまで「老人が自動的にいなくなるシステム」が必要だと思わせる非道> 先月のコラムで、イエール大学アシスタントプロフェッサーである成田悠輔の「集団自決」発言の問題性について取り扱った。今月12日に『ニューヨーク・タイムズ』が同発言を記事にしたことによって、この発言は再び注目されるようになった。同記事では成田氏は自分の発言は世代交代を表すメタファーだったと弁明している。彼とともにYouTubeチャンネル「日経テレ東大学」の番組『Re:Hack』でパーソナリティをつとめているひろゆき氏もTwitterで、記事では成田氏のメタファーが恣意的に切り取られていると擁護している。彼のように、『ニューヨーク・タイムズ』の記事が出て以降も成田氏を擁護するメディア関係者やファンは多い。 しかし先月のコラムでも指摘したように、「集団自決」発言はそれ自体が扇動的なメッセージとなりうるのであり、メタファ
<所得制限の撤廃で「異次元」を装うが、仔細を見れば、「子育ての社会化」を嫌い責任を家族に押し付ける体質は変わっていない> 少子化対策を進める岸田政権が、児童手当の所得制限を撤廃し、対象年齢も18歳へと拡充しようとしている。これは民主党政権の政策だった「子ども手当て」のコンセプトに立ち戻るものだが、当時の自民党はこの政策を口汚く罵り、参議院で多数派を形成していたことを背景として民主党に所得制限等を呑ませたという経緯がある。 岸田首相は「反省すべきところは反省し」と述べているが、自民党は徹底的な反省を行わなければならない。そうでなければ、子育て政策を自民党に任せることはできない。 「スターリンの」子ども手当て 日本の少子高齢化は人口動態をみれば容易に予測可能であり、古くから問題が指摘され続けてきた。政治の対応は1989年に合計特殊出生率が1.57を切った時でさえ鈍かったが、90年代後半から自治
<日本人と日本のメディアは、憎悪扇動がどんな恐ろしい効果をもたらすか、理解しているのか> 2023年1月11日ごろから、イェール大学アシスタント・プロフェッサーの成田悠輔氏が高齢化社会の解決のため「高齢者は集団自決すれば良い」という発言をしていたことが動画等で拡散され、SNS等で議論になっている。主に拡散されているのは2021年12月の『ABEMA Prime』の動画だが、その他YouTube番組や講演会でも複数回にわたって同様の発言をしていたことが分かっている。 「メタファー」では済まされない 「集団自決」という言葉を使ってはいるが、とりあえず多くの場合、成田氏は「世代交代」の文脈で、この言葉を過激な「メタファー」として用いている。一方、「自決」という言葉のイメージ通り社会福祉カットの文脈でも彼はこの言葉を用いることもあり、その境界は未分化だ。何年にもわたって高齢者の「集団自決」あるいは
<権力闘争の犠牲となる13人を描いたこの物語のなかで、源義経や和田義盛らにはいったん悲劇を回避しうる可能性が示されるが、結局歴史は改変されることなく身を滅ぼしていく。脚本の三谷幸喜がそこに込めた警告とは> 2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が12月18日をもって大団円を迎えた北条義時を主人公とし、大河ドラマではマイナーな時代といえる鎌倉時代が舞台ということもあって視聴率はそこまで振るわなかったが、最新の歴史研究を踏まえつつ大胆な解釈を加える三谷幸喜脚本の完成度の高さもあって、熱狂的なファン層を生み出した。 義時、時政、実衣......「業」の連鎖 この大河はある意味では異色の作品といえる。なぜなら、主人公が悪人として死んでいくからだ。物語当初は生真面目な好青年だった北条義時は、鎌倉幕府勃興期の権力闘争を経験する中で次第に変貌していき、政敵をあらゆる手段で滅ぼしていく冷酷な権力者
「日本を守るために防衛力を強化する」と力説した岸田文雄首相(12月16日、首相官邸) David Mareuil/REUTERS <日本はウクライナ以上に単独で戦争を遂行する力がない国だ。反撃という名の予防攻撃や越境攻撃をしてしまえば、ウクライナのような世界世論の支持さえ得られなくなる> 既に防衛予算の大幅増を決めている自民党と公明党は12月2日、日本の領域の外にある他国の基地などを自衛目的で攻撃することを可能にする「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」について合意した。この決定は、専守防衛に徹するこれまでの安全保障政策を大きく転換するものであり、日本国憲法を反故にして、日本が積極的に戦争を行う国家となる道を開くことになるかもしれない。 「反撃能力」とは先制攻撃能力のこと 「反撃能力」という言葉を聞くと、日本が攻撃されたのちに反撃する対象に他国の基地も含めるかどうかという問題だと思ってしまう
社員の大量解雇・流出、企業の広告引き揚げで危機のツイッター本社 Carlos Barria-REUTERS <イーロン・マスクによる買収以降、大混乱に陥ったツイッター。一部の噂通りもしなくなったら、我々のメディア環境は劇的に変わる> 10月末、アメリカの実業家であるイーロン・マスクがTwitter 社の買収を完了したことに伴う大量解雇及び大量退職で、Twitter 社に混乱が起きている。関係者によれば、遠くはない将来にTwitter がなくなる可能性も出てきているという。しかしTwitterは既に、我々のメディア受容の中であるのが当然のものとして認識されている。我々はTwitter なき未来を想像できるのだろうか。 大量解雇・退職に伴う「Twitter 終了」の可能性 11月18日、日本のTwitterでは「Twitter 終了」というキーワードがトレンドに上がった。もちろん実際にTwit
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