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ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2024年ぼくのベスト小説

今年ももう大晦日。去年の今日はトマム・スキー場にいたので、二年ぶりにわが家で第九を聴いている。 ベートーヴェン : 交響曲 第9番 「合唱」 (Beethoven : Symphony No.9 / Hans Schmidt-Isserstedt | NDR Sinfonieorchester Hamburg) [CD] [Live Recordin…

Rachel Kushner の “Creation Lake”(2)

長い、長すぎる。 400ページちょっとの本だから超大作ではないし、現代の作品ではむしろふつうの分量といえるけど、それでも長い。 そう感じるわけは、ひとえに、本書の主な舞台、南仏の田舎に居住するカルト集団的なコミューンの教祖、Bruno Lacombe の瞑想…

Samantha Harvey の “Orbital”(3)

本書で描かれる国際宇宙ステーションには、日本人宇宙飛行士 Chie も乗りこんでいる。 そのせいかステーションが日本上空を通過する場面もあり、ぼくたちはニヤリとさせられるはず。... Asia slides away to the starboard side. Shikoku and Kyushu pass be…

Samantha Harvey の “Orbital”(2)

えっ、いったいどうなっとんねん!? 本書が今年のブッカー賞を受賞と知ったときは、ほんとうに驚いた。 novella といってもいいほどの薄い本で、取りかかる前は楽勝と思ったものだけど、いざ読みはじめると、舞台の国際宇宙ステーションが地球を三周したあた…

Jayne Anne Phillips の “Night Watch”(1)

今年のピューリツァー賞受賞作、Jayne Anne Phillips の "Night Watch"(2023)を読了。Jayne Anne Phillips(1952 - )は1970年代後半から短編を書きはじめ、"Machine Dreams"(1984 未読)で長編デビュー。第四作 "Lark and Termite"(2009 ☆☆☆★★)は、200…

Anne Michaels の “Held”(3)

肉親の死、家族との別れ。それは文学史上、古典古代の昔から語り継がれてきた永遠のテーマのひとつであり、実人生でも、いつかはだれでも経験する万人共通のテーマである。 ゆえにこれを扱った作品なら必ず読者の共感を呼びそうなものだが、やはり出来不出来…

Anne Michaels の “Held”(2)

まず冒頭から。 We know life is finite. Why should we believe death lasts forever? * The shadow of a bird moved across the hill; he could not see the bird. * Certain thoughts comforted him:/ Desire permeates everything; nothing human can be…

Charlotte Wood の “Stone Yard Devotional”(4)

先日 "Creation Lake" をやっと読みおえ、毎年恒例のブッカー賞ランキングがほぼ完成。あとは総括のコメントを若干補足するだけとなった。これからしばらく、その下書きのような記事がつづきそうだ。 まずくりかえしになるが、ぼくの色眼鏡によると、今年は…

Rachel Kushner の “Creation Lake”(1)

数日前、今年のブッカー賞最終候補作、Rachel Kushner の "Creation Lake"(2024)を読了。これは今年の全米図書賞一次候補作でもあった。 Kushner(1968 - )がブッカー賞ショートリストにノミネートされたのは、"The Mars Room"(2018 ☆☆☆★)以来二度目。…