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新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

神も見放した土地 住民総退去命令で無人地帯に・・・マテーラ②

2016-09-13 | マテーラー南イタリア

 イドリス教会のすぐ近くにカヴェオーゾ教会がある。この教会だけは、建物の前に広めの広場を持っている。

 塔も高く、付近の教会の中では一番目立っている。

 入り口の横にアーチ状の展望スペースがあった。映画スターのようなカップルがその風景にすっぽりはまって、とても絵になる瞬間があった。

 同じアーチの場所で、対岸のバッサーノ地区を眺める。

 崖下の方向に、岩とそれをくり抜いた穴があちこちに見られた。

 かつてはこうした洞窟に多くの住民が住み着いていた。

 この地域は柔らかい石灰岩で形成されており、6世紀に北からやってきたランゴバルド族がそこを占拠して要害化していった。
 しかし、徐々に都市化していくと、洞窟中心のサッシ地区は住みにくく、富裕になった住民たちは次第に隣接した平たんなピアーノ地区に移って行った。

 そんな中で取り残されたサッシの住民は極貧と非衛生な生活に追い込まれていく。

 そんな時、イタリアの作家カルロ・レーヴィが反ファシズム活動によって流刑となり、この地域にやってきた。そして直面したマテーラの貧困に驚愕し「キリストはエボリにとどまりぬ」という著書で、その窮状を克明に描写した。

 エボリとは、マテーラからナポリ側に約200キロ離れた町。キリストさえもこの悲惨なマテーラまでは来てくれず、救いの手は差し伸べられなかった・・・という隠喩を込めたタイトルだ。

 これがきっかけとなり、マテーラは「国の恥」とされ、国はサッシの住民の総立ち退きを命じ、サッシは無人の街=ゴーストタウンと化した。
 ようやく70年代になりマテーラのあり方を巡って論議がなされた結果、改めてこの地区は都市開発の歴史上独自、唯一の価値を持つと再評価された。これによって保護と活性化の努力が始まり、近年目に見えて復興の足取りが前進している。

 見上げると、なぜか日本の日の丸がイタリア国旗と一緒にはためいていた。

 急坂を上り下りしながら、サッシ地区一周を目指した。


 廃墟になっている昔の住居があった。少しのぞいてみよう。


 どこまでも穴が続いていて、真っ暗。ちょっと気味が悪くなって、途中で引き返した。
コメント
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