遼寧とは、中国人民解放軍に所属しているいろんな意味で練習空母である。
ニコニコ動画のタグには「遼寧」と「遼寧(空母)」の二つがある。
建造から完成まで
元々は「リガ」という名前で、アドミラル・クズネツォフ級航空母艦2番艦として1985年にソ連(現在のウクライナ)で建造開始。1988年に進水し、1990年に「ヴァリャーグ(Варяг・Varyag)」という名前に改名される。
しかし改名の翌年にソ連が崩壊。ヴァリャーグはウクライナ所属と言うことになったが、経済の混乱で建造資金は無く港で放置された。この時点で完成度8割弱であった。ウクライナにとって莫大な資金を投じてまでこの空母を建造し運用する意義があろう筈が無く、結局1998年鉄くずとして売りに出すことになった。
それをマカオの会社が中国で海上カジノにするという名目で購入したが、この会社の社長は中国軍のOBであり、この会社の正体は人民解放軍のペーパーカンパニーであった。ヴァリャーグが中国に着くと同時にこの会社は雲散霧消した。ヴァリャーグはその後7年にわたり調査および改装を受け、実際に使える空母として再生される。
スペック
全長 | 304.5m |
全幅 | 70.5m |
排水量 | |
最大速力 | 19ノット or 29ノット (推定) |
乗員 | 1,960人 パイロット: 626人 参謀: 40人 |
兵装 | |
レーダー | 346型 多機能型 |
電子戦 | チャフ24連装投射機 x2 |
対抗手段 | 対魚雷デコイ16連装発射機 4基 |
搭載機 |
航空母艦としての能力
中国初の航空母艦として2012年に就役したが、正規戦力の航空母艦として本格的な運用はまだまだ問題が山積みであると考えられている。
遼寧は『練習空母』であり、中国が空母運用ノウハウを手に入れるために作った空母である。中国が空母のノウハウを完全に手に入れ(装備品の国産化など含む)、さらに空母護衛用艦艇の戦力も十分揃えるのにはまだ時間がかかると考えられている。
しかし、中国は遼寧と遼寧以前に手に入れたいろんな空母のデータを元として国産空母の建造をすでに始めており、現在はともかく将来においては、これらの国産空母が周辺諸国の脅威となると考えられている。
- ■アレスティング・ワイヤー
- 艦載機を引っかけて止めるアレスティング・ワイヤー……というよりワイヤーを『適度に』引っ張って航空機とパイロットを安全に着艦させる油圧装置はきわめて高度なシステムであり、実用に成功したのは現在アメリカとロシアしかない[1]。なおアメリカからの購入は絶対無理であり、比較的売ってくれそうに見えるロシアも中国が兵器を無断コピーして安く売りさばくため警戒しており、現在売る事も技術供与も拒否している。
- しかし現在では、スウェーデン経由で手に入れたアレスティング・ワイヤーを購入・運用している。また、ロシアから1セット、ウクライナから1セット購入したといわれており、現在搭載されているものはそれらではないかともいわれている。
- ■スキージャンプ方式発艦
- 多数の装備を搭載した艦載機を発艦させるにはカタパルトという装置を使い急加速させて発艦させるのが望ましい。だが航空機用蒸気カタパルトは現状ではアメリカしか実用化して製造していない。当然アメリカがカタパルトを中国に売却する筈がなく、現在スキージャンプ、つまり上り坂に飛行機を登らせて発艦させる方式で航空機を発艦させている。その為陸上発進時に比べると艦載機の搭載量が劣る。(ただしCTOL機運用空母であることは変わりなくVTOL空母よりも遥かに有力な戦力である。)
- しかし中国は、1985年にオーストラリアから英国製の正規空母メルボルン(当然カタパルト付き)を購入して解体した経験があり、調査もその時に行われている。また、現在は蒸気式カタパルトの次世代といわれる「電磁式カタパルト」を独自に開発しているらしい。開発はアメリカが先行しているが、F-35同様にアメリカ側のデータが中国に渡っている疑惑が出ているため、実用化される可能性はある。[2]
- ■船の機関
- 動力については、ワリャーグが中国に売却された際に、ウクライナは船のエンジンである蒸気タービンの重要な部品を取り外すなどして徹底的に使用不可能な状態して上で引き渡した(アメリカの政治的圧力があったと伝えられている)。
- そのため機関再生に際しては元の機関の本来の詳しい仕組みが分からない状態で試行錯誤を重ねつつ、足りない部品は独自に製作して調達しなければならなかった。このため、オリジナルの蒸気タービン機関本来の性能まで再生されたかは不明で、またメンテナンスには独自部品を使っている事などを考えると、手間と費用が余計にかかったと予想される。
- 現在は、かなりの困難を伴いながらも、長期間かけてなんとか使用可能な状態に再生させた事が明らかにされている。また一時期ディーゼルエンジン搭載という情報があったがこれは誤りであった。もともと中国はソヴレメンヌイ級でロシア製蒸気タービンの運用ノウハウがある。
- ■艦載機
- J-15艦上戦闘攻撃機を搭載。ただしこれはロシア・スホーイ社のSu-33試作型であるT-10Kのコピー品(!)と言われており、今のところ中国自慢の完全オリジナル戦闘機であるJ-10の艦載型を開発中である。
- だがJ-15には「J-11B」に準じた装備が成されているため、近代化改修の滞っている本家Su-33よりも高性能である可能性が高い。[3]
- ■パイロット
- 20世紀後半には陸上の空母訓練施設を設置していて訓練しまくっており、こちらは言うほど苦労はないと考えられている。 米英仏露以外では屈指の空母運用ノウハウを持つブラジル海軍の協力が大きいといわれている。