『EverQuest』 (エバークエスト) とは、1999年3月からアメリカでサービスインしたMMORPGである。略称はEQ。
概要
ゲーム情報 | |
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ジャンル | RPG |
開発元 | Darkpaw Games |
販売元 | Daybreak Game Company |
機種 | Windows |
発売日 | 2012年12月14日 |
価格 (税別) |
無料 |
対象年齢 | -- |
その他 | -- |
ゲームソフトテンプレート |
ソニーオンラインエンタテインメント(SOE)のPCゲームで、3Dによる初の本格的MMORPGとして多くのオンライン依存症(廃人)を生み出し本格的な社会問題ともなった。→通称:エバークラック
このスタイルは後のMMORPGに大きな影響を与え、EQクローンといった分類もある。
なお当時日本国内でも『DIABLO』や『ウルティマオンライン』のヒットによる海外オンラインゲームに対する下地と、PCゲーム系のWEBサイトやオンラインゲーム雑誌『PLAYONLINE(2001年4月休刊)』でテスター段階から大きく取り上げられた事で話題となり、すぐに遊びたいプレイヤーの多くはEBworldやOutPostなどの海外オンラインショップからの個人輸入に頼って入手した。
またスクウェア・エニックス(旧スクウェア)の『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親とも言える坂口博信氏もEverQuest好きで有名であり、『ファイナルファンタジーXI』制作のヒントにもなったと言われ、制作にあたってチームの何人かは実際に一度はプレイしているとの事。
2009年現在もサービス継続中。かつては日本語版も存在してたが、既にサービスを終了しており、SoE本家の英語版FeninROサーバーへと統合された。
システム
ラグ軽減などの理由でターゲットした相手へのオートアタックの間に魔法などを打つようなシンプルな戦闘ながら、主要システムは後のMMORPG群に大きな影響を与えた。
基本戦闘デザインは低DPSでの殴り合いと要所でのスキルでの大火力や支援系能力。敵の再出現タイマーが平均20分であり、比較的長く掛かる戦闘でHPを賭けて綱引きをしながら道を切り開いていくという公式の話も何となく分かってもらえると思う。
・3Dを生かした空間デザイン
移動はWASD形式で、柵や段差をジャンプで実際に飛び越える事ができる。落下ダメージあり、高さのみならず全アイテム重量や移動速度で補正あり。大金を降ろした時は銀行前で転げ落ちて即死した人もちらほら。
魔法で浮遊して敵の布陣を通り抜けたり、水中を上下軸含めて泳いだりと自由移動が可能。水中戦は急な動きができないので大変。
エレベーターや船も実際にリアルタイムで空間を移動しているので、タイミングが合えば2つの足場が近づいた瞬間に飛び移ったり、海面を魔法で走って船に乗り込んだりといった事が可能だった。
これらのように戦闘のテンポに反し、どこかアクションゲームめいた欲張ったゲーム性をもっている。この点に関しては技術が許す限りの仮想空間的なアプローチとなっている。
・戦闘の回避
NPCは視界を持っているため、視界に入らないように相手が移動した隙に物陰を動けばある程度の戦闘は回避可能。
対象の認識力に合った不可視化の幅。普通の生物は透明になれば抜けれるが、アンデッドは生者の気配を認識するのでオーラを隠蔽するなどの別の魔法を使う事で回避する必要がある。 また技能としての不可視(ローグのステルス)は最終的に神すら欺くレベル。
他には変身や変装で姿を敵軍のものに変えて突破する、事前に評判を上げて警戒を解除させ堂々と抜ける、弱いチャームの一種を掛けて味方と誤認させる等。
・ヘイトシステム
これはヘイトという数値で敵NPCのターゲットする相手が決定されるもの。
決定する要素は、誰が遭遇を起こしたのか、敵とのレベル、距離、手数、与ダメージ、回復、支援魔法をかける、無防備な姿勢を晒していないか、HPの残量がどうなっているか等、多岐にわたり、状況に応じて刻々と変化する。
立ち位置に関しても通常攻撃の応酬で相互に押し合うというデザインは鯖負荷を上げたものの、距離へイトを変動させるエッセンスとしても機能している。アタッカーはフォーメーションを変化させないように攻撃位置や押しの強さを常に意識する必要があった。特にPet使いはAIの経路や攻撃の向きを使いこなして一人前と言われた。
また本作ではMana(MP)回復である瞑想は『無防備な状態』扱いなので、敵に一撃を入れて戦闘に突入しただけだと回復中の後衛まっしぐら。ワンターンキルも起こる。
敵が強い場所ではいかに早く弱体化を成功させるかも大切なことで、EQの戦闘とはヘイト管理に慣れていく事がプレイヤーのスキルの一つだった。
・リンク
敵同士が協力するリンクと呼ばれるシステム。その辺の何気ないNPCでも味方が襲われていると判断すると加勢してくる。ダンジョンや街で顕著。逆に反応しない時は上司がボコられていようが見てみない振りをする。
例えば……友好的な猫派なNPCお姉さんが居たとしよう。この人の目の前でアンデッドに追いかけられていたら助けて貰えるとする。
だが猫に引っ掻かれそれを目撃された途端、猫が先に手を出そうが、貴方が無抵抗で耐えていようが、彼女は猫に加勢して貴方が死ぬまで許さずぽかぽか殴り続ける。人々は彼女が戦っているのを見てこう叫んで拳を振りかざしながらこう叫ぶ訳だ、『ガード!市民が襲われている、彼女に加勢しなくては!!』。このように不注意な戦闘突入は次々に増援を呼び込み被害を甚大にしてしまう。恐ろしいことにド腐れビッチ動物愛護精神溢れるNPCは本作のみならず2にも登場するので見かけたら距離を取ろう。
リンクの発生する範囲は一定ではなく、向こうから近寄ってくる場合、こちらが踏み込んで素早く引いた場合、攻撃を当てた時などで変化し、敵も異常に広い範囲から近寄ってくるもの、警戒役として広い範囲に広げる敵もいるため、意外と大変。ただし構造や敵を理解する事でこれらを突破する方法に慣れてくると俄然面白さが増してくるのも事実である。
Everquestのまた一つの醍醐味はこのリンクをどうやって切り抜けるかという工夫である。
有利になるように敵を連れてくる役目をPullerといい、この呼称は後のゲームでも使われる。戦闘開始の段階で可能な限り有利になるように仲間と相談して立ち回るのもEQの楽しさである。
反面、狭い場所でも敵を倒しながら進む事が出来るように、完全にリンク範囲をでた後の加勢は基本発生しない。戦闘中の画面を見ると驚くほど敵近くで戦闘を行う例が見受けられる。目視や物音で敵が次々にきてしまうとEQのバランスでは生き残れない上システム負荷的にも現実的ではなかった。もちろん例外もあって一部ゾーンはこの範囲がとても広く作られており、一匹殴れば20匹が駆け寄ってくる場所もある。Plane of fearとそのリメイクエリアは有名。
またレベルやHpの減少度合いで不利を悟ると逃亡する敵が多いのも特徴。逃げ切られると奥の敵に助けを求めに走り、大リンクがTrain(敵が連なって列車のように帰ってくる事から)ので素早くとどめを刺したり、足止めを掛けたりするのも必要となる。 実はWarriorも後の拡張で相手の退路に回りこみ死ぬまで殴りあうという男前な能力を獲得する、ロマン。(普通の逃走阻止は相手の足を遅くするがこちらは逃亡モードを一時オフにする)
・クラウドコントロール、混雑した状態(クラウド)をどう制するのか。
もともとEverquestのバランスは、プレイヤーに対して敵は非常にタフで攻撃力も高く設定されており、敵が複数来たからといって範囲攻撃で焼き払おうとしても普通はうまくいかない。
このため、リンクが当たり前に起こる中、一度に襲ってくる相手を少なく切り分けるPullと呼ばれる手法をとる事は前述したが、状況によってはそうも言っていられない。切り分ける時間がかかるなら戦闘を強行することも多い。
相手の近接が届かない場所で移動不能状態にする、あるいはMez(メズマライズ、催眠術)で行動不能に追い込むといったクラウドコントロールを駆使するようになるとEQの戦闘難易度や効率は一気に向上する。
・Faction、派閥とその評価
キャラごと派閥に累積した友好度をもっており、あまりに低ければ敵対する。クエストの発生条件となることも多い。
これらは種族、出自、職業や信仰によってNPCの評価に大きな補正を受ける。
胡散臭い職種の人間(ローグ)などは目につかないようにしないと店も使えず、ダークエルフやオーガはたいていの人間の街や集落ではガードばかりか商人や農家にすら襲われると言った具合。リンクと合わせて見つかれば物語にあるように街ぐるみで私刑に掛けられるわけである。
逆の例として、普通は攻撃されてしまう巨人たちの街でも彼らの創造主にして信仰の対象、戦王RallosZekの信者であれば初期状態でも攻撃されない等の現象も起こる。
同じ街の中でも派閥同士が争っていることも多く、片方のクエストを完遂すれば他が下がる場合も多い。更に同じ組織のはずなのに内部的に3つに分かれていた等という例もある。
こうしたシンプルなシステムながら絡み合った派閥や評価の存在は、Everquestをプレイヤーの行動が反映される生きた世界として演出する事に成功している。
EverQuestの醍醐味「Raid」。
ドラゴンキラー、大物狩り、ファンタジーゲームならば誰もが夢見る挑戦。兵力を集めた急襲、悪い意味で言えば強盗。
普通の雑魚でもプレイヤー6人分、とはよく言われた話である。いわんや大物を。お祭り的に挑戦した例ではsleeper相手に数百人で挑んだ例もある。
当初は1グループで打ち倒すことができない敵に挑むため、単純に複数のグループが協力して行動するユーザー側の呼称に過ぎなかったのだが、後にシステムでもRaidが正式に採用された。
Raidが実装される前では、討伐に成功したとしても最大ダメージを出した1グループしかシステム上では所有権がなかったり、補助・回復などのグループ用魔法の管理が非常に負担が大きいという問題があった。
特に所有権は深刻で、所有権の消失を待って分配するはずが外部に持って行かれてしまうなどのトラブルも発生したが、RaidのLoot権実装をもってこれらの問題は過去となった
最大72人までシステムでサポート、ただし実装されたのは拡張Plane of Powerで開始から4年ほど経過している。
拡張『Plane of Power』は正にRaidを大々的に使った拡張で、主要なクエストを進めるには実際にRaid級の強さを持つ敵を破らねばならない。Raidインスタンス、複雑な仕掛け、マップにある仕掛けに相手をハメて削る等の仕掛けが大量に用いられるようになっていくのもこの時期からである。
熟練のRaidでも侵攻準備から討伐完了までに数時間を要する超難敵も出現し、眠れぬ夜を過ごす人を更に増やすことになった。(本人たちは幸せだろうが)
大人数長時間の問題はSoE側でも認識していたらしく、途中のRaidクエストを進めていなくても数人はゲスト参加可能でRaidのクリアで補助達成できる、過去のコンテンツは無条件で入れるようにするなどと改善され、後の拡張では専用ゾーンで拘束時間を短く、Raid想定人数も50人以下と比較的軽い方向にシフトしてく。最初期のゲームの変化は時代を映すようで興味深い。