シングル・アクション・アーミーとは、アメリカのリボルバー拳銃である。略してSAAとも。
概要
一言でいうなら「西部劇で良く見る銃」である。
実際、西部開拓時代には多くのガンマンたちに愛用され、「アメリカを作った銃」と呼ばれることも。ただし、この銃が開発されたのは1870年代前半であり、初期の西部開拓時代には存在していなかった。にもかかわらず西部劇といえばお構いなしにこの銃が登場するあたり、人気の高さがうかがえる。
ジョン・ウェインもゲイリー・クーパーもリー・ヴァン・クリーフも、名だたる西部劇俳優のほぼすべてが、一度はこの銃を構えている。
おそらく、ウィンチェスター・ライフルと並んで、西部劇で最も有名な銃の一つである。
愛称はフロンティア、シックスガン、イクォライザー等あるが、もっとも有名なものは「ピースメーカー」だろう。実際、このタイトルで皆川亮二がガンアクション漫画を執筆している。新撰組?何言ってるんですか。直訳で「平和を作るもの」という意味になるが、この他にも「調停者」、「決着をつけるもの」という意味にもとれる。
ゲームでは、何と言ってもメタルギアシリーズのリボルバー・オセロットの愛銃として知られる(ちなみにオセロットのモデルは上述したリー・ヴァン・クリーフである)。
構造
装弾数は6発。リボルバーとしては標準的な数。だが、オートマチックから持ち替えた直後だと、装弾数の読み違いをしてしまうことも。
その名のとおり作動方式はシングルアクション。撃つ前にはハンマーを起こす必要がある。この際、親指でハンマーを起こせば「サミング」、もう片方の掌で起こせば「ファニング」と呼ばれる。
バレル長は主に4.75インチ(民間用)、5.5インチ(砲兵用)、7.5インチ(騎兵用)の3種類のバリエーションがある。
フレームは固定式のソリッド・フレーム。
現在よく知られるリボルバー拳銃のようなスイングアウト(弾倉が横にずれる方式)はせず、再装てんの際はフレーム後方にあるローディングゲートを開き、一発ずつ空薬きょうを取り出し、一発ずつ装てんする必要がある。
SAAが登場するシーンで「スピードローダー使えばいいじゃん」とか発言すると鼻で笑われるぞ!
このように再装てんに時間がかかるのが弱点だが、そのシンプルな構造ゆえ耐久性が高く、高威力の45ロングコルト弾を問題なく撃つことができた。
同時期に存在した他社の中折れ式リボルバー(銃身が中央部で折れて弾倉が露出するようになっている銃)ではフレーム強度の問題で、45ロングコルト弾より威力が劣る弾しか撃てなかった(スイングアウト式の銃はまだ登場していなかった)。そのためアメリカ陸軍ではSAAが正式採用されることとなる。
弟、クローンたち
- コルト社はその後、SAAの弟分とも言えるダブルアクション式リボルバー「ライトニング」を発売する。 ダブルアクションゆえ連射速度でSAAを大きく上回っていた。が、当時はまだダブルアクション機構はその複雑さから故障、作動不良が多く、SAAほど普及はしなかった。兄よりすぐれた弟なぞ存在しねぇ!!
- SAAの特許が切れたのち、スターム・ルガー社がスタームルガー・ブラックホークを発売。SAAと外見がよく似ているが、フレームの強化、照準器の改良、安全装置の追加などが行われている。
- SAAを原型に、オーストリアのPfeifer Waffen社が世界最強の拳銃パイファーツェリスカを発売。(重さ6kg、全長50cmを超える「馬鹿じゃないの?」というサイズなので、「拳銃」と呼ぶのが憚られるが)なぜSAAのソリッド・フレーム構造を取り入れたかというと、中折れ式はおろかスイングアウト方式でさえ、規格外弾丸の反動で故障してしまうから。
備考
- コルト社は現在でもSAAの製造を続けている。現在の拳銃と比べて決して性能がいいとは言えないこの銃の生産を経営難の中続けているのは、日本人が未だに日本刀を作り続けているのと同じく、単なる「武器」というだけの存在ではないからだろう。
- トリガーガードに指をかけてこの銃をクルクル回すアクションは「ガンスピン」、「ガンプレイ」。もともと、「いかにSAAを体の一部のように扱えるか」をアピールするために登場した。もちろん実戦では何の役にも立たない。ウエスタンショーなどでは華麗な魅せ技である。
- 綺麗な彫刻が施されたSAAも存在するが、それを実戦で使おうとすると、「その彫刻には何の戦術的優位もない。実用と観賞用は違う」と諭される。
- トップクラスの銃士は6発同時発射ができる。
- 世界でもっとも高貴な銃らしい。